ラグジュアリーの先にある上質なサステイナビリティーの代表イメージ

SDGs 世界の街からエシカル通信

モルディブ

ラグジュアリーの先にある上質なサステイナビリティー

美しいサンゴ礁の海に囲まれたリゾートアイランド「ソネバフシ」。モルディブにおいて環境問題はごく身近なものだ。(写真提供/Soneva Fushi)

人や地球環境、社会、地域に配慮したエシカルな考えや取り組みを、世界の街で暮らす人たちが日々の目線を通してレポートします。

2026.05.20

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 美しいサンゴ礁と真っ白なビーチの美景に包まれたモルディブ。ひとつの島を丸ごとリゾートにした“1島1リゾート”が人気の高級リゾートエリアで、世界各地から年間200万人以上の旅行者が訪れている。
 インドの南西約500キロメートルのインド洋上に位置するモルディブは、約1200もの小さな島々からなる島しょ国。どの島も標高は1メートルに満たず、気候変動による海面上昇はこの国の未来に直結する深刻な問題となっている。政府は国際社会にその危機を訴えると同時に、国内でもカーボンニュートラルを目指した持続可能な取り組みを進めている。
 こうした背景のもと、とくに高級リゾートホテルにおける環境への先進的な取り組みが注目されている。世界の富裕層を迎えるモルディブのリゾートにとって、サステイナビリティーは特別な付加価値ではなく、果たすべき責任のひとつ。海面上昇にとどまらず、ごみ問題や海洋汚染、小さな島における水や電力の供給、海洋生物の保護など、課題は多岐にわたる。

環境教育を通して根本的な問題を解決

  • 島内で出る生ごみをたい肥化し利用したソネバフシのオーガニック菜園。食材の輸送により排出される二酸化炭素量を減らし、新鮮な野菜を提供できるというメリットも。(写真提供/Soneva Fushi)

  • 近隣の島々の住民が自分ごととして取り組める環境教育も行っている。(写真提供/Soneva Fushi)

 数あるリゾートのなかから紹介したいのが、バアア環礁にある「ソネバフシ」だ。モルディブ有数の高級リゾートとして知られるソネバフシは、1995年の開業当初から、サステイナビリティーをリゾート運営の中心に据えてきた。もちろん、持続可能な取り組みというのは簡単なことではない。多くの物資を輸入に頼るモルディブでは、環境負荷の低い商品や二酸化炭素排出量の少ない輸送手段の選択など、ひとつひとつの取り組みがコスト増に繋がる。それでもソネバフシでは、ごみの削減からゼロウェイストの実現、島内で食料や水、エネルギーを循環させるシステムづくりまで、約30年にわたって地道に取り組んできた。
 やがて、環境に配慮するソネバフシの姿勢そのものが洗練された新しい価値観として受け入れられ、欧米の富裕層の間で高い評価を得ることとなった。サステイナブルであることは、単なる取り組みではなく、ごく自然なライフスタイルの一部として受け入れられた。さらに現在では、地元住民や子どもたちへの環境教育や雇用創出など、地域の未来を育む取り組みへと発展している。

リゾートホテルによる環境プログラム

  • 海洋学者が常駐し、サンゴの育成など海洋生物の保護活動が盛ん。(写真提供/Soneva Fushi)

  • 空き瓶をリサイクルして、オリジナルのガラス製品を制作するプログラムはゲストに人気。(写真提供/Soneva Fushi)

  • アルミ缶のリサイクルも島内で行う。フレーク状にしたアルミで思い思いのアート作品を制作する。(写真提供/Soneva Fushi)

 ソネバフシの徹底した取り組みと世界からの評価は、モルディブのほかのリゾートのサステイナビリティーへの意識を高めるきっかけにもなった。さらに、ひとつの小さな島でリゾート運営が完結するモルディブは、リゾートホテルが持続可能な未来を世界に示すショーケースとなる。ソネバフシが積み重ねてきた取り組みは、モルディブのみならず、世界のリゾートホテルの在り方にも静かな影響を与えている。
 「サステイナブル」と聞くと、どこか堅苦しく、不自由を強いられるという印象を抱く人もいるかもしれない。しかしモルディブでは、ラグジュアリーな滞在のなかで実に自然に、そしてスマートに環境への配慮を体験できる。自然と調和する心地よいサステイナビリティーを、モルディブで体感してみたい。

取材・文

荒沢 光 Hikaru Arasawa

リゾート誌の編集者として1996年よりモルディブにかかわる。独立後、モルディブの航空会社やホテルの日本における広報に携わったのち、編集プロダクション(株)アトール、(株)ファルを立ちあげ、モルディブに関する執筆、撮影、各メディアの取材コーディネートを手がける。

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