人や地球環境、社会、地域に配慮したエシカルな考えや取り組みを、世界の街で暮らす人たちが日々の目線を通してレポートします。
2025.10.24
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南太平洋に位置するフィジーは、2017年に米国・ギャラップ社の調査で「世界で一番幸せな国」に選ばれ、人々は笑顔にあふれている。透き通る海や色鮮やかなサンゴ礁、受け継がれる伝統文化、絶滅危惧種が生息する豊かな自然環境など、魅力が詰まった人気のリゾートには、年間およそ100万人の旅行者が訪れている。
そんなフィジーではいま、サステイナブルな体験ができる“タビナカ”プログラムが、旅の新たな定番として注目を集めている。フィジー政府観光局が展開する「ロロマ・アワー」がそれだ。「ロロマ」とは、フィジー語で「愛」「思いやり」「優しさ」を意味し、フィジーの人々が普段から大切にしている価値観のこと。この精神に基づき、ロロマ・アワーでは、旅行者が滞在中に「野生動物の保護」「地域社会への還元」「サンゴ礁の保護」「海岸線の保護」の4つの分野に沿って、自然や地域社会に貢献する1時間を過ごすことを提案。ロロマ・アワー参画リゾートやアクティビティー事業者が多様なプログラムを提供し、宿泊者が無理なく実践できる体験として好評だ。
サステイナブルな取り組みを観光局がサポート
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豊かな海を次世代に残すために参加する、サンゴの植え付け体験。(写真提供:フィジー政府観光局)
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フィジー政府観光局が展開する「ロロマ・アワー」。(写真提供:フィジー政府観光局)
例えば、「シックスセンシズ フィジー」では、リゾート内の「アースラボ」で宿泊客がサステイナブルな行動を学べるプログラムを提供している。ガーデンツアーでは、自家栽培の野菜やハーブを見学しながら持続可能な取り組みを紹介。また、非営利団体「コーラル・ガーデナーズ」と連携し、ガイド付シュノーケリングで海中の苗床を見学しながら、サンゴ礁の保護と再生について学べる。
「リクリク・ラグーン・リゾート」では、絶滅危惧種のフィジー・クレステッド・イグアナの保護活動やマングローブの植樹、サンゴ礁の保護など環境保全に積極的に取り組んでいる。2010年にマロロ島でイグアナが発見されたことを契機に、アメリカ地質調査所やサンディエゴ動物園、タロンガ動物園と連携して保護活動を進め、現在は野生下に約80匹、リゾート内で18匹のイグアナを守っている。宿泊客は活動についてのプレゼンテーションを通じて保護の意義を学び、飼育中のイグアナにふれる体験も可能だ。
「アウトリガー・フィジー・ビーチリゾート」では、宿泊客とともにビーチ清掃やマングローブの植樹、樹木の再生、環境教育などの地域貢献プログラムを実施し、海岸線の保護や海洋生態系を守るための支援に取り組んでいる。
一流ホテルが“タビナカ”プログラムに続々参加
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「シックスセンシズ フィジー」の敷地内にある、自家栽培の野菜やハーブを育てるガーデン。(写真提供:シックスセンシズ フィジー)
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「シャングリ・ラ ヤヌザ アイランド フィジー」で行う、多様な海洋生物の棲み家を設置するためのフィッシュハウス作り。
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「リクリク・ラグーン・リゾート」では、保護されているフィジー固有種のイグアナとふれ合う貴重な体験ができる。
また、「シャングリ・ラ ヤヌザアイランド フィジー」では、島内に「マリン・エデュケーション・センター」を設置し、フィッシュハウス作りやサンゴのペインティング体験など、宿泊客が楽しみながら自然保護に参加できるプログラムを提供している。
このロロマ・アワーは2025年4月に開始され、わずか1ヵ月で観光客によって613時間の活動が行われた。その結果、610本のサンゴ礁の移植、106本のマングローブの植樹、49.97キログラムのごみ回収といった成果を上げている。次の旅では、南の楽園を楽しみながら、この地に貢献できるプログラムに参加してみてはいかがだろうか。
取材・文・写真
宮本紗絵 Sae Miyamoto
PR・マーケティングコンサルタント。2021年に独立し、外資系PR会社で5年、ハワイ州観光局で約9年、2025年6月までフィジー政府観光局で広報を担当するなど、政府観光局をはじめ、さまざまな業種の広報・マーケティング活動に携わる。
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