フランスのシャンパーニュ、イタリアのプロセッコと並んで世界三大スパークリングワインのひとつとされる、スペインの「カヴァ」。バルセロナの近郊に、カヴァのふるさととして知られる一大産地がある。歴史ある2軒の高級カヴァワイナリーを訪ね、一面に広がるブドウ畑の美しい景色とテイスティングを楽しもう。
2026.02.18
歴史あるワイナリーの伝統と革新
バルセロナは大都市だが、その郊外には豊かな緑が広がっている。遠くにモンセラートの山々を見晴らす、風光明媚なサン・サドゥルニ・ダノヤの町はワイナリーが集まるカヴァのふるさとだ。バルセロナ・サンツ駅から電車で1時間40分程。一日、都会を離れてサン・サドゥルニ・ダノヤへ。
カヴァは、シャンパーニュとブドウの品種は異なるが、同じトラディショナル・メソッドの瓶内二次発酵で造られるスパークリングワインで、世界各地で日々楽しまれている。そしてカヴァの約95パーセントがここサン・サドゥルニ・ダノヤで造られている。
まずはスペイン国内に約3000ヘクタールに及ぶブドウ畑をもち、スペインで初めて現在の製法でカヴァを造ったという「コドルニウ」を訪ねた。それまで栽培されていなかったブドウ品種を取り入れたり、大規模なオーガニックのブドウ畑を所有するなど、先駆的なワイナリーとしても知られる。花咲く庭にある、かつての醸棟で、カヴァの製法やコドルニウの歴史について聞く。カヴァに使われる主要なブドウ品種の香りを嗅ぐ体験が新鮮だ。
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堂々たる石造りのゲストセンターは、ガウディと並びモデルニスモ建築の巨匠のひとりとされる、プッチ・イ・カダファルクの設計による。ここで見学ツアーのチェックインを行う。ショップも併設している。
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20世紀初めのコドルニウの広告。ロゴやデザインはいま見てもおしゃれで、当時の華やぎが伝わってくるようだ。
この先にさらなる驚きが待っている。巨大な地下貯蔵庫の見学だ。階段を下りるごとに空気がひんやりする。この地下貯蔵庫はなんと、総延長約30キロメートルに及ぶ。そのため見学はトロッコ列車に乗って行う。瓶がずらりと並ぶなかを、トロッコ列車に揺られて進むのはちょっとした冒険気分だ。
「コドルニウ一族のホセ・ラベントスがフランス・シャンパーニュ地方で醸造技術を学び、1872年に初めてカヴァの製造に成功して以来、いまも自社の畑で育てたブドウだけを使ってカヴァを造る伝統は変わっていません。その味わいをぜひ試してください」と案内してくれたアンナ氏。
試飲したコドルニウのカヴァは、口当たりはやわらか、柑橘やベリーのようなアロマが口のなかに広がる。バルセロナの太陽の恵みが凝縮されたような味わいだ。
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475年にも及ぶコドルニウ社の歴史について話してくれたアンナ氏(左)。祖父の代からコドルニウで働いているという。
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アートが飾られた石造りの試飲室で、コドルニウを代表する5つの個性的なカヴァを試飲。それぞれに香りの違いが際立つ。
コドルニウ Codorníu
TEL 935-051-551
Avda. Jaume Codorníu, s/n, Sant Sadurní d’Anoia, Barcelona
9:00AM~5:00PM(土・日 ~3:00PM)
見学ツアー:大人€23~(要予約)
王室御用達ワイナリーが醸す繊細なカヴァ
カヴァは気軽に楽しめるスパークリングワインというイメージが強いが、「ジュべ・カンプス」はスペイン王室御用達であり、世界中の名レストランやバーから指名を受ける高級カヴァブランドだ。スペインワインの格付け制度における最高カテゴリーであるグラン・レセルバを中心に生産している。
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エレガントなワイナリーの外観。
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ギザギザの山容が特徴のモンセラート山を見晴らす場所に広がる「ジュベ・カンプス」。所有地約482ヘクタールのうちブドウ畑は約252ヘクタール。
1921年にジュべ家によって設立された家族経営のワイナリーで、現在は4代目のメリチェル・ジュべ氏が当主を務める。
「技術はもちろん進化しているのですが、精神は曽祖父の時代と何も変わっていません。それを守ることがジュべ・カンプスのカヴァであり続けることだと思っています。カヴァと認められるには、最低9ヵ月の瓶熟成が必要ですが、私たちは最低1年半の熟成期間を設けています。熟成というのは不思議なもので、洗練されたきめ細かい泡や口当たりのなめらかさ、美しい色を生み出してくれます」とメリチェル氏。
話をしてくれたのも熟成庫のなかだった。かたわらでは蔵人が1本1本、手で熟成棚の瓶をくるりと回していた。熟成期間中は数日に一度、澱(おり)を集めるために瓶を静かに回すという手間が必要なのだそうだ。長期熟成のほか、もうひとつの特徴が、通常ドサージュという工程で補糖をするところを、ジュべ・カンプスでは行わないこと。そのため、和食を含むさまざまな料理に合うのだという。
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CEOのジュべ氏。長期熟成したカヴァの価値を世界に広げていくのが夢だという。
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瓶が独特の棚に眠る貯蔵庫。なかには10年を超える熟成期間のカヴァもある。
訪問者にとってうれしいことに、ここならではのすばらしいツアーがある。それは畑の一角、緑の樹の下で試飲ができるというもの。それも生ハムやサラミ、チーズなどとともに。心地よい風を感じながら、丁寧に時間と手間をかけられたカヴァのグラスを傾ける。スムースな口当たり、上品な香りを楽しむ、ぜいたくで優雅な旅の時間だ。
芸術、食、自然。バルセロナには、人が豊かな暮らしに望むものが揃っていた。
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ブドウ畑が連なる丘の上の一角。テーブルセッティングやカヴァのサーブはスタッフが行ってくれる。
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カタルーニャ産の生ハムやサラミ、チーズと、グラン・レセルバの繊細な味わいはとてもよく合う。
ジュベ・カンプス Juvé y Camps
TEL 938-911-000
C/Sant Venat, 1, Sant Sadurní d'Anoia, Barcelona
8:00AM~2:00PM、3:00PM~6:00PM(金 8:00 AM~1:30PM、土・日 10:00AM~2:30PM)
テロワールツアー:€110(要予約)
取材・文/山口あゆみ 写真/入江啓祐 コーディネート/西井香織
●取材時期:2025年3月下旬
※掲載内容は時期や天候、施設の諸事情により変更となる場合があります。