視線を向けた先のあちこちにおいしい、楽しい、新しいがちりばめられた香港では、レトロな街角のすぐそばで世界的に注目を浴びる話題のアートスポットが誕生。一方で、香港グルメもさらに洗練されている。エネルギッシュな魅力にあふれる、進化を続ける香港の街へ。
2025.11.14
“アートの街”としての香港
香港は2013年から毎年、世界最大級のコンテンポラリーアート・フェア「アートバーゼル」の開催地となっている。以来、アジア最大のアートハブとして発展し、世界中からアート関係者が集う街となった。さらに、20年以上の歳月をかけて準備が進められていた超大型文化プロジェクト「西九龍文化地区(West K)」により、2019年以降、世界規模の美術館やアートスポットが次々とオープン。その目玉として誕生したのが、いまや香港の新しい顔ともいえる、ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計した巨大な美術館「M+」だ。同施設は世界でも有数の視覚文化のミュージアムで、20世紀から現代に至る「デザイン&建築」「映像」「ビジュアルアート」などの領域でアジアのアートを俯瞰するコレクションを構築している。展示総面積はニューヨークのMoMAやロンドンのテートモダンに匹敵する水準を誇る。作品のジャンルも絵画、彫刻、インスタレーション、デザイン、建築、マルチメディアなど多岐にわたる。1日かけてゆっくりとアート空間に浸りたい。
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エントランスへのアプローチには、地元の市場のランプにインスピレーションを受けたという印象的な照明が規則的に並ぶ。
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日本からの移築で開館時に話題を呼んだ倉俣史朗氏のデザインによる『清友壽司吧』。
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ベトナム出身アーティスト、Danh Võ氏が、イサム・ノグチの照明“Akari”を用いて空間を再構築したインスタレーション。
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ファサードは大型スクリーンを備えた、記念碑のような外観。
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南ギャラリーにはアジアの視点から語られる戦後の国際的なビジュアルアート作品が並ぶ。
九龍半島の尖沙咀(チムサーチョイ)にある文化的商業施設「K11 MUSEA」は、ビクトリアハーバーのドックサイドに立つ巨大ラグジュアリーショッピングモールで、ハイエンドブランドの出店や飲食店に加えて、ラグジュアリーホテルや高級レジデンスも併設される複合施設内にある。有機的な曲線と直線を組み合わせたたたずまいで、その建築自体がもはやアート作品のようだ。天井が高く豪華絢爛な雰囲気の館内には、数々の世界レベルのアート作品が点在している。建設には100人以上のデザイナーや建築家が携わり、施設全体では150点以上のアート作品を展示。商業とアートが融合し、パブリックに開かれた独自のアートスペースになっている。
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上海を拠点とするアーティスト・張 恩利氏の作品『Parrots of Five Colours』。ドーム型の天井には空中庭園をイメージしたグリーンの色彩、床には渦巻きが描かれ、天界の海の中心にいるような幻想的な雰囲気を体感できる。頭上の5羽のオウムは中国哲学の五行を象徴し、世の中の相互関係と自然の複雑さを表現。
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吹き抜けには、巨大なゴールデンボールのオブジェが設置され、クリエイティブスペースとして利用される。
K11 MUSEA
TEL 3892-3890
Victoria Dockside, 18 Salisbury Road, Tsim Sha Tsui, Kowloon, Hong Kong
10:00AM~10:00PM
無休
M+
TEL 2200-0217
M+, West Kowloon Cultural District, 38 Museum Drive, Kowloon, Hong Kong
10:00AM~6:00PM(金~10:00PM)
月曜休
時流を映す 洗練の逸品を求めて
美食の街として世界でも名高い香港。高級食材を使った本格広東料理や、熟練の職人技が光る点心、英国統治時代から根付いたアフタヌーンティー……。街の進化にあわせて、香港を代表する料理の数々も、さらに洗練され、磨きあげられている。
世界中から美食家が集う名店、「MOTT 32」。名物料理は北京ダックとチャーシュー。リンゴの木を使ってローストしたダックは、皮のパリパリ感や肉質、脂のりのよいものを厳選。そこから8カットのみを切り出し、自家製バオにのせてキャビアとともにいただく。チャーシューはテーブルで香ばしいスモークを立たせる演出とともに提供される。
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左下から時計回りに、「イベリコ豚のチャーシュー」(HK$390)、「北京ダック」(HK$1,480)、「和牛ショートリブ」(HK$680)、「ウズラの卵入りトリュフ焼売」(HK$80)、「海鮮と卵白のかた焼きそば」(HK$280)、「ロブスターの麻婆豆腐」(HK$780)。
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店名の由来となったモット街32番地の雑貨店に因み、そろばんを模した照明や骨董品が飾られている。
リージェントホテルとともに22年ぶりに香港に復活した「麗晶軒」は、まさに広東料理の神髄にふれられるレストラン。ここで楽しみたいのは、美しく丹精込めて作られた点心。つねに新しい食材や調理法を模索し、最高峰の味と技術をフルに生かした最先端の品々で食通を唸らせる。挑戦的な試みはお茶にも反映されていて、香港で初めてティーソムリエを常駐させた同店は、新しいペアリングの可能性を提案してくれる。
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「ロブスターボール・黒トリュフ添え」、「蟹の爪、蟹卵・エビと豚肉のミンチ、アミガサダケの炒めもの」、「黒あわび、鰻、海藻のパイ包み焼き」の3つの点心を一度に楽しめる一品(手前・HK$218)。
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ティーソムリエが解説しながら中国茶を淹れてくれる。メニューには日本語の解説もある。
そして、アフタヌーンティーで外せないのが「ザ・ロビー」。格式高い空間でいただくアフタヌーンティーは、香港を訪れる人にとってまさに王道中の王道だ。使い込まれた銀食器の重みから、丁寧に作られたスコーンやサンドイッチの味わいまで、すべてが美しいハーモニー。日常を忘れて極上のひとときを過ごそう。
MOTT 32
JCB優待
TEL 2885-8688
B/F, Standard Chartered Bank Building,4-4A Des Voeux Road, Central, Hong Kong
11:30AM~2:30PM、5:30PM~11:00PM
無休
ドレスコード:スマートカジュアル
麗晶軒 Lai Ching Heen
TEL 2313-2313
B1, Regent Hong Kong, 18 Salisbury Road, Tsim Sha Tsui, Kowloon, Hong Kong
ランチ(飲茶) 正午~2:30PM(日・祝 11:30AM~)
ディナー 6:00PM~10:00PM
無休
ドレスコード:スマートカジュアル
https://hongkong.regenthotels.com/dining-destination/lai-ching-heen/
ザ・ロビー The Lobby
TEL 2920-2888(代表)、2696-6772(The Lobby)
G/F, The Peninsula Hong Kong, 19-21 Salisbury Road, Tsim Sha Tsui, Kowloon, Hong Kong
ブレックファスト 10:00AM~11:30AM(土・日 7:00AM~)※月~金はコーヒー/ティーのみ
ランチ 11:30AM~2:00PM
ティー 2:00PM~5:30PM(アフタヌーンティー~5:30PM(L.O.))
ディナー 6:30PM~10:00PM(金・土~10:30PM)
※ランチ、ティー、ディナーは1名当たりミニマムチャージHK$350
無休
ドレスコード:スマートカジュアル
https://www.peninsula.com/en/hong-kong/hotel-fine-dining/thelobby-afternoon-tea/
取材・文/大塚悠介(COMPASS COMMUNICATIONS) 写真/WONG KIN FUNG
●取材時期:2025年5月下旬
※掲載内容は時期や天候、施設の諸事情により変更となる場合があります。
※L.O.=ラストオーダー
※サービスチャージ:10%別