世界的なアートフェア「フリーズ」が2022年から4年連続でソウルで開催されるなど、国際的な注目を集める韓国の現代アートシーン。その中心であるソウルは、食の分野でも常に新しい流行を生み出している。公的な現代美術館と人気グルメスポットを訪ねてソウルのトレンドにふれてみよう。
2025.9.12
世界が注目する現代アートのいま
韓国発のK-POPや映画・ドラマがグローバルな人気を獲得しているのは知られるところだが、現代アートの分野でも注目を集めている。とくにソウルは世界的なアートフェアやギャラリーが進出するなど、アジア有数のアートハブとして急成長中だ。また、美術館が国際的なイベントを主催したり、良質な作品を常設で展示するなど、アートにふれられる環境が着実に整いつつある。ソウルの公的な現代美術館の、いま見られる常設展を中心に紹介しよう。
「国立現代美術館 ソウル」は、現代アートに特化した地上3階、地下1階の大規模な美術館。2026年5月まで開催されている「MMCAソウル常設展《韓国現代美術ハイライト》」では、所蔵品のなかから、1960年代から2010年代までの韓国の現代アートの代表作約90点を展示。いまや著名となったアーティストの貴重な初期作品は必見だ。
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「MMCAソウル常設展《韓国現代美術ハイライト》」(観覧料W2,000)で展示される、高さ約13メートルにも及ぶカン・イクジュン氏の『Sam-ra-man-sang』(2009年)。
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ベルリンとソウルを拠点に活動しているヤン・ヘギュ氏の一連作『Female Natives』(2010年)より。「MMCAソウル常設展《韓国現代美術ハイライト》」で展示されている。
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ナム・ジュン・パイク氏の『Junk Wall』(1995年)。「MMCAソウル常設展《韓国現代美術ハイライト》」で展示されている。
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図録や関連のアート本、ミュージアムグッズなどが揃うギャラリーショップ。ショップやカフェは入場無料ゾーンにあり、気軽に立ち寄れる。
ソウルの現代アートの拠点「ソウル市立美術館」では、韓国現代アートの発展に貢献した女性画家チョン・ギョンジャ氏の生誕100周年記念常設展「魂を響かせる風に向かって」を開催中(会期終了日未定)。また、メディアアートの国際的なイベントと位置づけられる「第13回ソウルメディアシティビエンナーレ」を8月26日から11月23日まで開催予定。ソウル市立美術館を中心に市内さまざまな場所で行われ、期間中は国内外から多くのアートファンが訪れるだろう。国際的な舞台でも確かな存在感を放つ韓国の現代アート。ソウルでその最前線にふれれば、韓国文化の奥深さと躍動感を実感できるはずだ。
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旧最高裁判所を改修し美術館として活用。吹き抜けで開放感のある館内は、有料の企画展以外は鑑賞自由だ。
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力強く鮮やかな色使いが美しい、チョン・ギョンジャ氏『Wicked Woman of Jamaica』(1989年)。チョン氏の常設展も観覧無料。
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一杯立てのコーヒーを提供するカフェも。アート鑑賞後ひと息つくのに最適。
国立現代美術館 ソウル National Museum of Modern and Contemporary Art, Seoul
TEL 02-3701-9500
ソウル市鍾路区三清路30
10:00AM~6:00PM(水・土 ~9:00PM)
※最終入館は閉館1時間前
1/1、旧正月・秋夕(チュソク)の当日休
企画展有料(企画展ごとに異なる)
ソウル市立美術館 Seoul Museum of Art
TEL 02-2124-8800
ソウル市中区徳寿宮キル61
10:00AM~8:00PM(土・日・祝 ~7:00PM(11~2月の土・日・祝 ~6:00PM))
※最終入館は閉館1時間前
月曜、1/1休
常設展無料
雰囲気が魅力的なソウル最旬グルメ
ヤンニョムチキンやソルビン(韓国式かき氷)など、日本にも影響を与えるトレンドを生んできた韓国グルメ。ソウルの人気飲食店で、次に注目したいグルメをいち早くキャッチしよう。
韓国のパンブームを牽引してきた「Cafe Onion(カフェ オニオン)」は、ソウルに4店舗を展開するベーカリーカフェ。店舗ごとにインテリアのコンセプトが異なるが、旅行で訪れるなら伝統的家屋・韓屋を現代によみがえらせた安国(アングク)店へ。店内の工房で焼きあげるパンは、クロワッサンや韓国風クリームパンなど、食事系からデザート系までバラエティー豊かに揃う。
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約150年前の朝鮮時代に建てられた韓屋を再生。
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広い中庭が開放的な雰囲気を醸す。
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一番人気は「パンドーロ」(W6,500・手前中央)。ブリオッシュのような甘めのパンに粉砂糖がたっぷりかかる。オリジナルブレンドのコーヒー「アメリカーノ」(W5,500・右奥)はキレがよく、甘いパンとの相性は抜群だ。
キムチがおいしく発酵するとされる温度、6.5度を店名に冠したワインバー「オン6.5」。キムチと地元野菜をたっぷり使った創作料理はヘルシーな味わい。酒はワインをはじめ薬膳をベースとしたオリジナル酒も用意する。
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牛肉やキムチなどを白菜で包み、赤ワインで煮込んだ「白菜のサム」(奥・W23,000)。テーブルごとに1本以上の酒類オーダーが必須で、ワインはボトルW68,000~。
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洗練された店内。著名人の利用も多い。
鶏料理、タッカンマリを提供する「無垢屋(ムグオク)」は、一度に100羽もの鶏肉を煮込んで作る、とろりと濃厚な鶏スープが秀逸。薬味のニンニクや高麗人参培養根を好みで混ぜながら、滋味深いスープを最後の1滴まで堪能しよう。
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スープと鶏肉を別々の器で提供するスタイルが特徴のタッカンマリ(W18,000)。スープや鶏肉を個々で味わうもよし、スープに鶏肉やご飯を入れて味わうもよし。
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店舗は伝統的な韓屋をリノベーションして利用。オープンキッチンでは鶏肉を炊く湯気がつねに上がる。
ベーグルのもちもちとした食感がクセになる「ロンドンベーグルミュージアム 汝矣島(ヨイド)店」は、おしゃれな店内にベーグルがまるでアート作品のように並ぶカフェ。クリームチーズとの組み合わせも絶妙で、キュートなイラスト入りのオリジナルグッズは旅のみやげにもおすすめだ。
いずれの店舗も、味のよさはさることながら、インテリアや料理にアーティスティックな感性が光る。現代アートを巡る旅にふさわしいラインアップといえるだろう。
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トッピングとして楽しむ自家製クリームチーズとベーグルは常時各10種類以上並ぶ。
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「ポテトチーズベーグル」(W5,500)、「カフェラテ」(W6,000)、「マッシュルームスープ」(W12,800)、「メープルピーカンクリームチーズ」(W3,800)など。
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「タンブラー」(W34,000)のほかマグカップやエコバッグなどのグッズも販売。
Cafe Onion 安国店 Cafe Onion Anguk
TEL 070-7543-2123
ソウル市鍾路区桂洞キル5
7:00AM~9:30PM(L.O.)(土・日・祝 9:00 AM~)
※旧正月・秋夕(チュソク)は短縮営業あり
無休
オン6.5 on6.5
TEL 010-4278-2024
ソウル市鍾路区北村路1キル28
5:30PM~9:40PM(L.O.)(土・日・祝は3:00PM~、5:00PM~、7:00PM~、9:00PM~の2時間制)
無休
無垢屋 MUGUOK
TEL 0507-1431-1812
ソウル市鍾路区栗谷路1キル7
11:30AM~2:00PM(L.O.)、5:30PM~8:00PM(L.O.)
無休
ロンドンベーグルミュージアム汝矣島店 London Bagel Museum Yeouido
TEL 02-3277-0771
ソウル市永登浦区汝矣大路108ザ・現代ソウル地下1階
10:30AM~8:30PM ※完売次第閉店
不定休(月1回)、旧正月・秋夕(チュソク)の前日と当日休
取材・文/宮本喜代美 写真/松隈直樹 コーディネート/カン・ミンソク(MEDIX KOREA)
※L.O.=ラストオーダー
●取材時期:2025年3月中旬
※掲載内容は時期や天候、施設の諸事情により変更となる場合があります。