香港 進化し続ける東洋の真珠の代表イメージ

旅行 海外特集

香港

香港 進化し続ける東洋の真珠

MTR啓徳駅の地上にあるカイタック・ステーション・スクエアからの景色。中央には大型複合施設「AIRSIDE」、右奥には「The Twins 雙子匯」。左端には、これから始まる高層レジデンスの建設準備の様子も見える。

多種多様な文化と人種が混ざり合う香港は、昔もいまも、いつだってパワフル。啓徳空港跡地の啓徳エリアは大規模な再開発が進み、一方で懐かしい姿を残すリノベスポットが続々と誕生。東京から約4時間半、最旬スポットの情報を携え、つねに進化し続ける香港の旅へ出かけよう。

2025.10.24

TAGS

啓徳エリアで街の進化を体感する

 かつて、啓徳(カイタック)空港は世界で最も危険な空港のひとつとして知られていた。過密なスケジュールに加え、住宅地に隣接しているという立地の特殊さから、低空で急旋回を強いられたためだ。民家をすり抜けるようなランディングを経験した人も多いだろう。
 閉鎖から15年を経て、啓徳は「空の玄関」から「海の玄関」となり、「カイタッククルーズターミナル」の開業とともに2013年から大規模な再開発がスタート。2020年には地下鉄の新路線が延び、アクセスが格段によくなった。2023年には商業施設とオフィスの大型複合施設「AIRSIDE」、翌年には同様の「The Twins雙子匯」が誕生。さらに今年、東京ドーム6個分の敷地面積を誇る複合スポーツ施設も開業し、新たなランドマークとなっている。

  • 啓徳空港の閉鎖25周年を機につくられた「AIRSIDE」。香港蘭のツボミを再解釈した有機的な外観だ。繊維産業で栄えた地域へのオマージュとして、内観はテキスタイルの特徴を連想させる意匠となっている。

  • 啓徳エリアでひと際目立つ外観のカイタック・スタジアム。最大収容人数5万人を誇る最新鋭の設備を備えた全天候型競技場で、世界的なアーティストのコンサートや7人制ラグビーの国際大会などに使われている。

そこに隣接するホテル「香港啟德帝盛酒店(ドーセットカイタックホンコン)」からは、変貌を遂げつつある啓徳エリアと、その反対に位置する土瓜灣、九龍城エリアを対比して望める。当時空港近郊ということで高さ制限のあった一帯は築50年以上の住宅建築が残り、昔懐かしい風景が広がる。さらなる開発によって風景が変わってしまう前に見ておきたい景色だ。

  • 「エグゼクティブ・バルコニー・スイート」からは啓徳エリアの近代的なビルと、遠くに土瓜灣エリアの昔ながらの街並みを望み、新旧の街のコントラストが楽しめる。

  • 西陽が差す夕暮れどきにはインフィニティプールとその先に広がる土瓜灣エリアが黄昏色に染まる。

  • 約24平方メートルで最も客室数が多い「プレミア・ハーバービュー」。夜にはスタジアムがライトアップされる。

同ホテルのスカイバー「Jin Bo Law」では、中国の伝統酒である白酒をアレンジしたオリジナルカクテルを提供。カクテルの名称には空港の3レターコードを採用するなど、この土地がかつて空港であったことを思い起こさせる仕掛けがなされている。
 進化の最中にある啓徳。街も建物も、単に古いものを新しくするのではなく、香港らしさを残しつつ進化を重ねている。

  • スタジアムやビクトリアハーバーを望む。

  • プレミアムな茅台(マオタイ)酒をアレンジしたカクテルがバーテンダーのおすすめ。

  • 左からジンベースの「HKG」(HK$128)、コーヒーと紅茶をミックスした香港オリジナルの「鴛鴦茶」のカクテル「YY」(HK$128)、芳醇な花の香りがする白酒を使った「HK SOUR」(HK$128)。

香港啟德帝盛酒店 DORSETT KAI TAK HONG KONG

TEL 3528-8288
43 Shing Kai Road, Kai Tak, Kowloon, Hong Kong

https://www.dorsetthotels.com/dorsett-kai-tak/

Jin Bo Law

TEL 3528-8208
15/F, Dorsett Kai Tak Hong Kong, 43 Shing Kai Road, Kai Tak, Kowloon, Hong Kong
5:00PM~0:00AM(深夜)
無休
ドレスコード:スマートカジュアル

https://www.dorsetthotels.com/dorsett-kai-tak/dining/jin-bo-law.html

古きよき面影を味わうリノベスポットへ

 世界有数の金融機関や高級ブランドの旗艦店が軒を連ねる香港島の中環(セントラル)地区。とくに「オールドタウン・セントラル」と呼ばれるエリアには東洋と西洋、レトロとモダンがミックスされ渾然一体となった、まさに香港らしい醍醐味があふれている。2018年にオープンした「大館(タイクン)」はその筆頭だ。180年以上の時を経た旧警察総本部で、いくつかある建物のうち、中央警察署、中央裁判所、ビクトリア刑務所は、1995年に法廷古墳に指定された。その歴史的建造物を再開発した大館は、香港の歴史と文化とアートの発信地として多くの人を集め、話題のレストランやバーにも事欠かない。コンテンポラリーアートを扱う美術館とホールの建物は新しく、東京・青山にあるプラダのブティックの設計でも知られる、ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計。19世紀の建築群と調和を保った、コントラストの妙も楽しめる。

  • 独房が並ぶ監獄に入るのは、なかなかできない体験。囚人に対する懲罰や囚人の更生、服役生活の様子を紹介。

  • 優雅なレンガ造りの建物には、かつて香港初の警察総本部が置かれていた。展示のほか、飲食店やショップも入る。

  • 美術館「JC Contemporary」内の、吸い込まれるような螺旋階段はアート作品の一部のよう。コンクリート打ちっぱなしの冷たくて硬そうなイメージに、木の踏面が温かみを与える。

  • 館内にはコンテンポラリーアートを展示。タイヤのホイールを再利用したという、アルミユニットの斬新なファサード。

 大館に隣接する、世界一長いとされる全長約800メートルのヒルサイドエスカレーターから降りると、「中環街市(セントラル・マーケット)」に行き着く。1842年に誕生し、生鮮食品を扱う市民の台所としては香港で最も古いマーケットだった場所。この地で幾度もその姿を変えながら、1939年建設の建物を最大限に生かすかたちで2021年に再開発多目的空間として生まれ変わった。当時のままの大階段と時計や、赤レンガの壁、エントランスに吊るされた香港のマーケットの象徴でもある赤いミニランプシェードなど、当時の面影を残す建物のなかに、香港ブランドの雑貨や地元産品を使った調味料や伝統菓子のショップ、飲食店などの、100を超える店舗が軒を連ねる新スポットだ。

  • エントランスの照明。いまでも香港の市場で見かける赤いミニランプシェードを500個以上使っている。

  • シンメトリーの大階段は当時流行したバウハウスやストリームライン・モダンの様式。

  • クイーンズロードセントラルに面した白壁が目を引くエントランス。

大館 Tai Kwun

TEL 3559-2600
10 Hollywood Road, Central, Hong Kong
8:00AM~11:00PM
JC Contemporary 11:00AM~7:00PM、月曜休
Heritage Exhibitions 11:00AM~7:00PM、無休

https://www.taikwun.hk/en/

中環街市 Central Market

TEL 3618-8668
93 Queen’s Road Central, Central, Hong Kong
10:00AM~10:00PM
無休

https://www.centralmarket.hk/en/

変わらない輝きを堪能する香港の夜

 香港は夜も楽しい。日暮れと同時に、街じゅうのビルがカラフルに輝き出し、路地ではネオンが灯る。香港がエネルギッシュな街として知られる背景には、昼間の喧騒だけでなく、刺激的な夜の時間がある。ついさっきまで慌ただしく働いていた人々がうれしそうに食事の前にバーへと繰り出す。香港のバーは華やかで、どこかエキセントリックな雰囲気があり、カクテルも変わり種が多い。日本のゆったりとした空間とは方向性が違うのは、バーに非日常を求めているから。それが香港ならではの大人のリラックス方法なのだ。

 そんな夜を体感すべく、おすすめしたい最旬のバーが「Cardinal Point」だ。会員制のバンカーズクラブだった場所、大人のための美食とアートの楽園「FORTY‐FIVE」の最上階に入る。エントランスや通路には無数の現代アートや巨大な絵画がちりばめられているが、フロア全体としてのムードは決して仰々しくなく、むしろ軽やかな趣さえある。さりげなく飾られた美術館級のコンテンポラリーアートを眺めながら、軽食を味わうもよし、バーテンダーがシェイクしたカクテルを片手に、自慢のサウンドシステムから流れてくる至上の音楽に身を委ねるもよし。テラスに出て風に当たるのも気持ちがいい。そこから望むビクトリアハーバーと、目の前に林立する超高層ビルは香港有数の絶景と名高い。

  • 「Cardinal Point」のテラスからは目前に迫る香港名物の超高層ビルの夜景とビクトリアハーバー、その先の九龍半島が楽しめる。

  • バーカウンターの壁にはマティアス・サンチェスの巨大壁画が飾られる。

  • 「ビーフショートリブ」(HK$360)と「ココナッツ・オールドファッション」(HK$160)。充実の軽食だけでなく、しっかりとした食事もとれる。

  • トロピカルなエッセンスを加えたオリジナルカクテルがメイン。

 また、香港を象徴する景色といえば、ビクトリアハーバーに煌めく摩天楼の夜景だろう。毎晩8時になると、両岸に立つ40ものスポットが光と音のショー「シンフォニー・オブ・ライツ」を夜空に繰り広げる。そのなかをたゆたうアイコニックな赤い帆のジャンク船で、「Aqua Luna」のナイトクルーズを楽しむのもまた一興。せっかく香港に来たからには刺激的な夜に思いきり身を任せて過ごしたい。

  • 尖沙咀プロムナードから望むビクトリアハーバーと対岸の香港島のスカイラインのパノラマビュー。

  • ナイトクルーズは、夕暮れどきから1時間おきに出航する「イブニングハーバークルーズ」、8:00PMの光と音のショーを楽しむ「シンフォニーオブライツクルーズ」などの種類がある。いずれもワンドリンク付。

Cardinal Point

TEL 3501-8560
FORTY-FIVE, 43-45/F, Gloucester Tower, LANDMARK ATRIUM,15 Queen’s Road Central, Central, Hong Kong
正午~翌1:00AM(日・祝 ~10:00PM)

https://www.cardinalpoint.com.hk/

尖沙咀プロムナード Tsim Sha Tsui Promenade

Tsim Sha Tsui, Kowloon, Hong Kong

Aqua Luna ナイトクルーズ Aqua Luna Night Cruise

TEL 2116-8821(予約)
無休
イブニングハーバークルーズ 大人HK$270、
シンフォニーオブライツクルーズ 大人HK$330
※いずれも45分・ワンドリンク付。
※尖沙咀埠頭、セントラル埠頭からの出発。運航スケジュールはプランにより異なる。

https://aqualuna.com.hk/

取材・文/大塚悠介(COMPASS COMMUNICATIONS) 写真/WONG KIN FUNG
●取材時期:2025年5月下旬
※掲載内容は時期や天候、施設の諸事情により変更となる場合があります。

ページトップへ戻る