韓国・仁川  現代アート最前線の代表イメージ

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韓国・仁川 現代アート最前線

「パラダイスシティ」のエントランスを飾る、イギリス出身の現代美術家ダミアン・ハースト氏の『Golden Legend』。

現代アートで注目される韓国のなかでも、多くのアート作品が彩る「仁川国際空港」「パラダイスシティ」を擁する仁川は、アートを楽しめる都市として存在感を高めている。アートスポットや食を通じて、韓国のいまをより深く知る旅へ。

2025.8.25

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豪奢なリゾートで“アートテインメント”な一日

 仁川(インチョン)国際空港から車で約5分の「パラダイスシティ」。約33万平方メートルの広大な敷地に、ラグジュアリーホテルやカジノ、コンベンション施設、約3000人を収容できるパーティースペースなどを備えた統合型リゾート(IR)施設だ。アートとエンターテインメントを融合させた“アートテインメント”をコンセプトとしており、施設内には草間彌生(くさまやよい)氏をはじめとする世界的に著名なアーティストの作品約3000点を展示。絢爛豪華な空間に配されたアート作品は、美しい照明によりいっそう際立ち、気分を高揚させる。作品はアーティストの代表作や人気シリーズに名を連ねるものが多く、いずれも見応えがあり、強い存在感を放っている。エントランスやラウンジ、通路など、館内に点在しているので、宝探し感覚で散策してみるのも楽しいだろう。アートの多くは宿泊しなくても鑑賞できるが、作品数が膨大なので、宿泊してゆっくり堪能したい。ホテルは2タイプあり、リゾートステイに特化した客室数711室を誇る「パラダイスホテル&リゾート」と、アートとデザインにこだわった58室すべてがスイート仕様の「アートパラディソ」。両客室ともアートが随所に配されている。

  • 草間彌生氏の『Great Gigantic Pumpkin』。奥の『MOVING GATE』は韓国のアートユニットMIOONによる作品。

  • ビデオアートの先駆者、韓国出身のナム・ジュン・パイク氏による『HITCHCOCKED』。

  • アレッサンドロ・メンディーニ氏の『PARADISE PROUST』。氏の一連作『PROUST Chair』のひとつで、高さ約4.5メートルもある。

  • 瞑想する少女を表現したジャウメ・プレンサ氏の『ANNA B. IN BLUE』。

  • 「パラダイスホテル&リゾート」内の最高級客室のひとつ「グランドデラックスプールヴィラ」。

 “アートテインメント”を体感できる施設はほかにも。“夜の遊園地”をコンセプトにした「ワンダーボックス」は、アトラクションとパフォーマンスが楽しめる幻想的な空間。ヨーロッパの感性と韓国固有のチムジル(温熱療法)文化を融合させた「シメール」は、贅を極めたリラクセーション施設。洗練されたアクアスパなどで過ごせば、心身ともにリフレッシュできるだろう。

  • 観覧車やメリーゴーラウンドなどもある屋内パーク。

  • アクアスパゾーンにある、ベネチアのサン・マルコ広場をモチーフに造られたウォータープラザ。

パラダイスシティ PARADISE CITY

TEL 1833-8855
仁川市中区永宗海岸南路321番キル186

https://www.p-city.com/

ワンダーボックス WONDERBOX

11:00AM~7:00PM
無休
フリーパス:大人W28,000

https://www.p-city.com/front/wonderbox/overview/

シメール CIMER

10:00AM~7:00PM(土・日・祝 ~9:00PM)
無休
アクアスパ券:大人W60,000~

https://www.p-city.com/front/cimer/overview/

生まれ変わった空港のアート性

 2024年12月に拡張工事が完了し、年間1億人超の旅客が受け入れられる空港へと進化した仁川国際空港。顔認証システム(要アプリ事前登録)の導入により出国がスムーズになったほか、多くのアートが見られることでも話題だ。リニューアルの際、芸術的な体験を提供する「アートポート(アート+エアポート)」を目指したといい、主要な出入国の動線上には著名な作家のインスタレーションやメディアアート、彫刻などを設置。リニューアル後のクリーンな空間にはアートが美しく映え、旅の高揚感をさらに引き立てる。

  • 高さ16メートル超の巨大な『グレートモビール』。パリ在住のグザヴィエ・ヴェイヤン氏の作品だ。

  • ソウル生まれのソ・ドホ氏による『家の中の家』。ふたつの家の重なりで、次世代への継承を表現している。

  • 韓国伝統の五方色や吉祥を現代的に再解釈した『福、風のセクトン』は第2ターミナル東側の出発ロビーを彩る。韓国のチェ・ビョンロク氏による作品。

 韓国のメディアアートのいまを知るなら、空港内の「K‐カルチャーミュージアム」にも立ち寄りたい。若手を含む韓国のアーティストが手がけたメディアアートの常設展示施設で、館内には6ヵ所の展示・体験スペースが備わる。都心でのヒーリングと瞑想をテーマとした、インタラクティブアートをはじめとする没入型コンテンツは、旅の合間にいやしと新たな刺激をもたらすだろう。

  • 外壁には高さ約5メートルの大型メディアファサードを設置。くり返し流れる映像『ジェムストーン』が訪れる人々の視線を釘付けにする。

  • 鑑賞者が動くと壁面や床の映像が変化するデジタルアート『星座ユートピア』。

 仁川国際空港から仁川大橋を経由し、約30分で到着する松島(ソンド)は、デザイン性の高い建築物やパブリックアートが点在し、街全体が洗練された雰囲気に包まれている。その中心に広がる「松島セントラルパーク」は、東京ドーム約9個分の広さを誇る都市公園。海水を引き込んだ全長約1.8キロメートルの水路沿いには、散策コースや芝生広場、彫刻ゾーン、テラス庭園などが整備され、人々が思い思いにくつろいでいる。水辺の心地よさを味わいながら、近未来的な高層ビル群とアートが共存する風景を楽しもう。

  • ビル群を借景に悠々と泳ぐ2頭のクジラが印象的なオブジェ『Cruising Together』。

  • 世界120の国・地域を象徴する仮面で構成された『地球村の顔』。日本の仮面もふたつ含まれている。

  • 川の向こうの逆円すい形の建物は、トライボウルと呼ばれる公園のシンボル的建物。三連の形で空、海、大地が調和する仁川を表現。

仁川国際空港 Incheon International Airport

TEL 1577-2600
仁川市中区空港路272

https://www.airport.kr/sites/ap_ja/index.do

K-カルチャーミュージアム K-Culture Museum

TEL 032-741-1509
仁川国際空港第1ターミナル 第1交通センター地下1階東側
10:00AM~8:00PM
毎月最終水曜休
入場無料

https://kculturesquare.kocca.kr/jp/museum

松島セントラルパーク Songdo Central Park

TEL 032-456-2860
仁川市延寿区コンベンシア大路160
散策自由

https://www.insiseol.or.kr/park/songdo/

話題の新旧グルメを訪ねて

 仁川は韓国を代表する港町のひとつ。新鮮な魚介類を使ったグルメを提供する店が多く、海鮮好きにはたまらないエリアだ。海鮮料理が豊富に揃う「ヨルドゥパグニ松島店」の看板メニューは、生のワタリガニを特製しょうゆダレに3日間漬け込んだカンジャンケジャン。しっかりと味が染み込んでいながらも、素材のもち味を損なわない絶妙な仕上がりで、フレッシュな甘みと、カニ味噌のまろやかなコクが後を引くおいしさ。

  • 「カンジャンコッケジャン」(2名分・W70,000)。コッケ(ワタリガニ)のしょうゆ漬け以外にも多くのパンチャン(副菜)が付く。シメのカニビビンバは口福のひと品。

  • テーブル席の奥には座敷席も。

 「三代仁川ケジャン」は1962年創業の老舗。メニューを「カンジャンケジャン定食」と「ヤンニョムケジャン定食」の2種類に絞り、家族三代にわたって質の高い味を守っている。代々受け継がれる、低塩しょうゆがベースの秘伝のタレがカニの甘みを引き立て、まるで刺身のような繊細な味わいに。なお両店で使用しているワタリガニは、韓国国内でも高い評価を受ける仁川・延坪島(ヨンピョンド)周辺の海域で水揚げされたもの。身は締まり、嚙むほどにあふれる甘みと濃厚なうまみが堪能できる。

  • 「カンジャンケジャン定食」(W29,000)。キムチ、チヂミ、焼き魚、テンジャンチゲなど12種類のパンチャンが付き、ボリューム満点だ。

  • クリーンな店内。三代目の写真が飾られている。

 仁川国際空港から車で約20分の「MADE林(メイドリム)」は、約120年の歴史をもつ教会をリノベーションしたベーカリー&ダイニング。2022年のオープン以来、フォトジェニックな空間と個性的なメニューで話題だ。店名が示すとおり店内は自然をテーマに設計され、地下1階から2階までを貫くシンボルツリーが、訪れる人々を迎える。店名には「May Dream(夢をかなえる)」というポジティブな意味も込められており、施設全体に自然の生命力と前向きなエネルギーが満ちている。連日多くの人でにぎわう、仁川の新たなランドマークだ。

  • 各フロアを繋ぐ階段の周りにはステンドグラスのような装飾も。元教会という歴史を踏まえ、装飾には聖書に登場するモチーフが配されている。

  • 草木がやすらぎを演出する2階の森のフロア。

  • 手前が「MADE林」のシグニチャーブレッド「石パン」(手前)と「土パン」(奥・各W6,300)。もっちりとした食感だ。

  • 1階のベーカリーにはフルーツデニッシュやサンドイッチなどさまざまなパンが並ぶ。

  • 別棟ではアートのインスタレーションも。店舗を利用すれば無料で鑑賞できる。

ヨルドゥパグニ松島店 Yeoldu Baguni Songdo

TEL 032-834-4433
仁川市延寿区新松路125番キル7-2階
10:00AM~8:00PM(L.O.)
日曜休

三代仁川ケジャン Samdae Incheon Gejang

TEL 032-766-0826
仁川市東区金谷路81番キル22
11:30AM~8:00PM(L.O.)
日曜休

MADE林 MADELIM

TEL 032-751-1904
仁川市中区龍遊西路479番キル42
10:00AM~7:30PM(L.O.)
無休

https://litt.ly/madelim/

取材・文/宮本喜代美 写真/松隈直樹 コーディネート/カン・ミンソク(MEDIX KOREA)

※L.O.=ラストオーダー
●取材時期:2025年3月中旬
※掲載内容は時期や天候、施設の諸事情により変更となる場合があります。

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