フランス東部に位置し、フランスワインの二大産地のひとつとして名高いブルゴーニュ。そのエレガントな味わいが世界中のワイン愛好家を魅了する一方、特有の格付けや収穫年による出来具合の繊細さで、難解なワインともいわれる。その魅力を最大限に理解し、ブルゴーニュワインをより楽しみたい。
2025.9.12
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圧倒的な香りと深みは、まさに“ワインの王”
「ワインラバーの多くは、最終的にブルゴーニュに辿り着くといわれます。とくにコート・ドール(“黄金の丘”と呼ばれる一帯)は愛好家にとって憧れの地。有名な『ロマネ・コンティ』もこのエリアで造られています」。こう話すのは「Wine Bar NOAM」のオーナーソムリエ・長屋 聡氏。
ブルゴーニュワインの多くは、赤はピノ・ノワール、白はシャルドネという単一のブドウ品種で醸造される。1品種のみを使用することで、ブドウを栽培する畑による個性の違いが出やすく、さらに造り手によっても味わいが大きく異なる。畑は厳格に区分され、特級畑(グラン・クリュ)、1級畑(プルミエ・クリュ)、村名格(ヴィラージュ)と、それ以外に格付けされている。

左は赤ワイン「ジュヴレ・シャンベルタン 2020 ジョルジュ・リニエ」(750ミリリットル・19,800円、グラス・2,860円)。中央は白ワイン「ブルゴーニュ オート・コート・ド・ニュイ・ブラン クロ・サン・フィリベール 2022 メオ・カミュゼ」(750ミリリットル・22,000円、グラス・3,300円)。右は赤ワイン「ニュイ・サン・ジョルジュ プルミエ・クリュ レ・ペリエール 2019 ロベール・シュヴィヨン」(750ミリリットル・39,600円)。グラスワインの容量は100ミリリットル。
「“エレガントで官能的”と表現されることが多いブルゴーニュの赤ワインは、繊細で深い味わいと華やかな香りが最大の特徴。料理とあわせる場合は、その繊細な味わいを邪魔しないように、味が濃い料理や刺激の強いものは避けましょう」
ラベルの表示が複雑なうえに、同じ畑でも生産者によって味わいが異なるなど、ブルゴーニュワインは「難解」というイメージがあり、価格の高騰化も進んでいる。
「当店には稀少なもの、スター生産者のものもありますが、まだ知名度は低いけれど、いいワインを造る生産者のものも多く置いています。ブルゴーニュワインの個性である多彩な味わいを楽しみ、宝探しにも似た感覚で好みのワインを見つけてください」
ベストマッチな3品
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鴨肉のロースト 赤ワインソース
うまみのある鴨肉のローストに、赤ワインを煮詰めたソースを添えながらも、やさしい味に仕上げたひと品(2,530円)。あわせたいのは赤ワイン「ニュイ・サン・ジョルジュ プルミエ・クリュ レ・ペリエール 2019 ロベール・シュヴィヨン」。鴨のうまみに負けない力強さがありながら、繊細さも兼ね備えた一本。 -
ポルチーニ茸と地鶏のクリームソースパスタ
ソースにフランス東部・ジュラ地方で造られる黄色いワイン「ヴァン・ジョーヌ」を使用し、クリームソースにナッツのような香ばしい風味が生まれるパスタ(2,310円)。あわせたいのは、ふくよかで樽熟成の効いた白ワイン「ブルゴーニュ オート・コート・ド・ニュイ・ブラン クロ・サン・フィリベール 2022 メオ・カミュゼ」。 -
馬肉のタルタル
生の赤身の馬肉に刻んだ香味野菜や卵黄、スパイスなどを加えた「馬肉のタルタル」(1,980円)は、鉄分が豊富で、さっぱりとした味わい。あわせたいのは赤ワインの「ジュヴレ・シャンベルタン 2020ジョルジュ・リニエ」。澄んだ果実の味わいときれいな酸のなかに、ミネラル感や鉄っぽさが感じられ、馬肉のもつ鉄分と見事に寄り添う。
Wine Bar NOAM(ノーム) [大阪]

TEL 06-6226-7484
大阪市中央区東心斎橋1-17-27 日宝ニューコロンブスビル2階
5:00PM~翌2:00AM(日・祝 ~0:00AM(深夜))
不定休
※チャージ:660円
シックで落ち着いた雰囲気の店内。カウンターのほかにボックス席もある。
ブルゴーニュワインと合わせたい2品
繊細といわれるブルゴーニュワインを自宅で味わうときは、料理選びにもちょっと凝ってみたい。おすすめ料理の作り方とワインのマリアージュを、西麻布「ル・ブルギニオン」のオーナーシェフ・菊地美升氏とソムリエ・河畑隆行氏に教えてもらった。
「ブルゴーニュは華のあるワインです。せっかく開けるなら、あわせる料理も旬の素材を使い、盛り付けにこだわるなど、いつもよりドレスアップしてみてはいかがでしょう。『秋鮭のフレークと茄子のマリネ』は、鮭のうまみとコクに、ブルゴーニュらしいシャルドネの酸味が寄り添うイメージです。」と菊地シェフ。あわせた「ブルゴーニュ・ブラン 2021 バンジャマン ルルー」(店内価格・ボトル14,520円)は、凝縮された果実とハーブのようなニュアンスがあり、秋鮭とあわせたディルとのハーモニーで互いの味を引き立てる。
「フランス料理では、鶏肉には白ワインをあわせるのが一般的ですが、ソースを赤ワインにしてプラム(プルーン)の酸味と甘みを加えることで、赤ワインと一緒に楽しむことができます」。あわせた「サヴィニー・レ・ボーヌ オー・グラン・リアール 2019 シモン・ビーズ」(店内価格・ボトル22,627円)は、豊かな果実味とともに大地の香りが感じられる赤ワイン。プラムを加えたソースの果実味と、付け合わせのキノコやゴボウの土の風味がマリアージュする。
ブルゴーニュワインは、ブドウの収穫年によって、味わいが大きく異なるのが特徴のひとつ。「例えば、2021年のピノ・ノワールは比較的薄く、それが魅力でもあります。2021年は前菜に、味わいの強い2020年はメインにあわせるなど、年代にこだわって料理とマリアージュさせるも楽しいかもしれません」。
秋鮭のフレークと茄子のマリネ
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ブルゴーニュ・ブラン 2021 バンジャマン ルルー

■材料(2名分)
- 鮭(生)…100グラム
- 塩…適量
- ナス…2本
- オリーブオイル…適量
- 白ワインビネガー…10㏄
- ㋐タマネギ(みじん切り)…大さじ1
ニンニク(みじん切り)…小さじ1
松の実…大さじ1
ケッパー(酢漬け)…大さじ1 - ディル(細かく刻む)…3枝分程
- ラディッシュ(細切り)…1個分
■作り方
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❶鮭は皮を削いで外し、骨付きなら骨を取り除く。ひと口大に切り、塩を振る。
❷ナスは約5ミリメートル厚の輪切りにする。
❸フライパンにオリーブオイルを多めに入れて②を中火で炒める。ナスがオリーブオイルを吸ってなくなったら、オリーブオイルを都度足しながら炒める。ナスに火が通り透明感が出てきたら、塩を振り、白ワインビネガーを加えて火を止める。 -
❹①の表面に出てきた水分をキッチンペーパーなどで拭き取る。フライパンにオリーブオイルを引き、ソテーする。表面に火が入ってきたら木べらなどでほぐしながら炒める。
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❺㋐を加えて炒めあわせる。オリーブオイルと塩を加えて味を調え、ディルを加えて、さっと混ぜあわせ火を止める。
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❻③と⑤を交互に重ねるように盛り付け、ラディッシュを散らせば完成。
鶏もも肉とキノコのソテー 赤ワインとプラムのソース
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サヴィニー・レ・ボーヌ オー・グラン・リアール 2019 シモン・ビーズ

■材料(2名分)
- ゴボウ…200グラム
- ㋐シメジ…60グラム
エリンギ…60グラム
マイタケ…60グラム - 鶏もも肉…1枚(300グラム)
- 塩・コショウ…適量
- 赤ワイン…150ミリリットル
- プルーン(細切り)…2個分
- ハチミツ…大さじ1
- オリーブオイル…適量
- ニンニク(すりおろし)…小さじ1
- パセリ(みじん切り)…適量
■作り方
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❶ゴボウはささがきにして、水に10分程さらして水切りする。
❷㋐のキノコは食べやすい大きさに、ほぐしたり切ったりしておく。
❸鶏もも肉は筋や軟骨を取り除き2等分に切り、両面に塩・コショウを振る。
❹鍋に赤ワイン、プルーンを入れて沸かし、弱火で煮詰める。途中でプルーンを軽く潰し、全体の分量が1/4~1/5くらいになるまで煮詰まったら、ハチミツを加えて火を止める。 -
❺フライパンにオリーブオイルを引き、ゴボウを入れて炒め、塩を振る。2分程炒めたら②を加え、さらに炒める。塩を振り、オリーブオイルを足し、やや強火にして、キノコが香ばしくなるまで炒める。最後にニンニクを加えてサッと炒めて火を止める。
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❻フライパンにオリーブオイルを多めに引き、③を皮目を下にして入れ、中火でじっくりソテーする。皮目がきつね色になるまで7~8割程ソテーし、ひっくり返して火を止め、余熱で火を入れる。金串などを刺して内部まで火が通っているか、金串にふれてみて確認する。
❼皿に⑤と⑥を盛り付け、④のソースを添え、パセリを散らせば完成。
ル・ブルギニオン [東京]

TEL 03-5772-6244
東京都港区西麻布3-3-1
11:30AM~2:30PM(0:30PM(L.O.))、6:00PM~10:00PM(7:30PM(L.O.))
水・第2火、年末年始休
※サービス料:10%

お店のおすすめメニュー
「人参のムース 雲丹(うに)とコンソメのジュレ添え」。ディナーコースでは追加メニュー(2,178円)で提供。あわせたいのは白ワイン「ブルゴーニュ コート・ドール ヴィエイユ・ヴィーニュ 2020 レミ・ジョヴァール」(750ミリリットル・15,730円)。
おすすめの3銘柄
ブルゴーニュ地方の細分化されたブドウ畑の区画を意味する「クリマ」を店名にしたブルゴーニュワイン専門店。インポーター直送の厳選ワインを自社セラーで徹底管理し、10万本規模の在庫から提供。稀少ワインや当たり年のワインも販売する。
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ブルゴーニュ コート・ドール シャルドネ 2018 フランソワ・ミクルスキ
当主のミクルスキ氏は、1991年に彗星(すいせい)のごとく現れた生産者。白ワインの銘醸地として名高い、ムルソー村名区画に程近い、異なる4区画の1986年と2005年に植樹したブドウを使用。オーク樽で10ヵ月熟成後、澱(おり)引きし、タンクで2ヵ月熟成させてから瓶詰め。熟した果実の凝縮感があり、生き生きとしてエレガントな白ワイン(9,900円)。
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マルサネ レ・ロンジュロワ 2018 シャルロパン・ティシェ
ブルゴーニュを代表する造り手フィリップ・シャルロパン氏の息子が2013年に立ちあげた注目のドメーヌ(醸造所)。ブドウは低温を維持したまま過度な抽出は避けて発酵させ、樽で18ヵ月間熟成。チェリーやフランボワーズなどの赤い果実のアロマに、きれいな酸、エレガントな余韻、果実感が生かされたピュアで滑らかな仕上がりが、シャルロパン・ティシェの特徴となっている(7,810円)。
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ショレイ・レ・ボーヌ ヴィエイユ・ヴィーニュ 2021 ドミニク・ローラン
比較的軽めのタイプの赤ワインが多いショレイ・レ・ボーヌにあって、ひと味異なる存在。透明感のあるルビー色で、バランスがよく、余韻もエレガント。当主のドミニク氏がハウスワインにしているほどのお気に入りだという。樹齢50年以上の古木にこだわり、すべて手摘み。オーク樽のなかでも最高級の、トロンセの森のオーク樽を使用している(5,720円)。
ブルゴーニュワイン専門店 クリマ
取材・文/土井ゆう子 写真/合田慎二、伏木 博
※価格は消費税・サービス料込。 L.O.=ラストオーダー
●取材時期:2025年5月下旬 ※価格など掲載内容は店舗の諸事情により変更となる場合があります。