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岩手県

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おいしいもの探訪【岩手県】

日本のおいしいものを紹介する旅。
今回は岩手県から。
その町から生まれたおいしいものが、
地元で愛される味になるまでを紹介します。

2025.8.25

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会席料理

古きよき料亭で味わう繊細な日本料理

8品からなる会席料理はひとり10,560円~。好みの食材や料理の内容は、予約の際にリクエストすることもできる。

 盛岡市中心部を流れる中津川のほとりに料亭「駒龍」はある。創業は1955(昭和30)年、当時人気だった芸妓(げいぎ)・駒龍が自分の芸名で割烹を開いたのが始まりという。そのころの盛岡にはふたつの花街があり、華やかな芸者文化が残っていた。それから70年、時代の流れとともに芸者文化は衰退してしまったが、接待や家族の祝いごとなど、料亭は地元の人たちの大切な日に利用されてきた。
 「岩手は食材が豊富な場所。長年付き合いのある業者から、その時期だけのおいしい食材を仕入れています」と料理長は話す。「お客様のリクエストにできるだけ応えるのが店のポリシー。頻繁に利用してくださるお客様には、同じ料理は出しません。アレルギー対応はもちろん、ベジタリアン用や減塩など、同じグループでも個別に対応しています」。こうした細やかな対応が、長年愛され続ける理由なのだろう。
 近年では豪華列車の食事に採用されるなど、高い評価を得ている。老舗らしいおもてなしと繊細な料理を、ぜひ味わってみたい。

館内には個室が5部屋。テーブルや座卓など、希望に合わせて用意してくれる。

駒龍

サムネイル

TEL 019-624-5243
岩手県盛岡市本町通1-8-4
東北自動車道盛岡ICから約20分
JR東北・北海道新幹線盛岡駅から車で約10分
11:30AM~2:00PM、5:00PM~10:00PM
不定休

https://komaryu.jp/

「駒龍」がある盛岡市本町通は、その昔は本街(ほんがい)と呼ばれる花街だった。岩手県庁や盛岡市役所なども近く、接待などで大いににぎわったという。かつては5軒程の料亭が集まっていたが、現在は駒龍のみが昔ながらのたたずまいを残している。

いわて短角牛

一頭買いの稀少な国産牛 赤身の熟成肉を存分に味わう

鉄板ランチの人気は「短角牛づくし」(3,500円)。おまかせの部位のステーキに短角牛100パーセントのハンバーグとサルシッチャ(ソーセージ)、焼き野菜などがつく。

 盛岡城の遺構が残る岩手公園の程近くに立つ「和かな 盛岡本店」。盛岡を代表する老舗鉄板焼店として知られ、1976(昭和51)年の開店当時の姿を留めている。名前の由来は、和やかに食事を楽しんでほしいという創業者の想いから。いまもゲストの目の前で調理するスタイルを貫いている。
 霜降りの黒毛和牛や海鮮なども提供するが、店の自慢はいわて短角牛。東北生まれの和牛の品種で、稀少な国産赤身肉として知られている。「30日以上かけてドライエイジングすることで、身は軟らかくなり、うまみが増します。一頭買いしているので、稀少部位も安定的に手に入るのが強みです」と料理長の畠山勝浩氏は話す。調理の際には、低温に保たれた南部鉄器の鉄板で休ませながらじっくりと焼きあげる。そうすることで軟らかく仕上がり、霜降り肉とはまた違った、赤身肉ならではのうまみや食感を存分に味わえる。「派手なパフォーマンスはありませんが、シェフとの会話とともに鉄板焼を楽しんでいただければ。記念日のお客様には、サプライズ的なサービスもご用意しています」。

開店当時の姿を残す2階のカウンター席。店内は2フロアからなり、個室席もある。

和かな 盛岡本店

サムネイル

TEL 019-653-3333
岩手県盛岡市大沢川原1-3-33
東北自動車道盛岡ICから約30分
JR東北・北海道新幹線盛岡駅から車で約6分
11:30AM~2:00PM(L.O.)、5:00PM~8:30PM(L.O.)
火曜、第1水曜(祝日の場合は翌日)、年末年始休

https://wakanagroup.co.jp/honten/

JR盛岡駅から岩手公園へと続く大通り周辺一帯は、北東北随一の繁華街。さまざまなタイプの飲食店が連なり、岩手の老舗百貨店の本店などもある。岩手公園は盛岡城跡公園の愛称で親しまれる憩いの場。盛岡城の石垣が、往時の繁栄を伝えている。

わんこそば

楽しく豪快にそばを味わう岩手ならではのおもてなし料理

食べた分だけ空のお椀をテーブルに重ねる「わんこそば」は4,200円。15杯でかけそば約1杯分となり、100杯以上食べると手形をもらえる。

 「はい、じゃんじゃん。はい、どんどん」。店内に元気よく響くお給仕さんの声。お椀に蓋をするまで食べ続けられるのが、盛岡名物わんこそばの魅力だ。「諸説ありますが、食材が手に入りにくかった岩手の山村で、大量のそばで来賓をもてなしたのが起源といわれています」と話すのは、「東家 本店」の5代目店主・馬場曉彦氏。「大食いや早食いなどがクローズアップされていますが、精一杯のおもてなしというのが本来のわんこそば。この想いはいまも大切にしています」と続ける。実際、わんこそばを求めて盛岡を訪れる人も多く、わんこそばの体験が、旅の印象に直結するケースも多いという。「食事の間じゅうお給仕がつくため、盛岡観光の玄関口ともいえます。食事の合間に盛岡の魅力を伝えたり、観光案内をしたりすることもあります」。
 わんこそばには、味わいや喉ごし、数々の薬味など、より多く食べられるようさまざまな工夫が凝らされている。「岩手の名物料理であると同時に、おもてなしの文化であることを感じながら、自分のペースで楽しんでください」。

かけ声とともにお給仕さんがそばをお椀に入れてくれる。

東家(あずまや) 本店

サムネイル

TEL 0120-733-130(総合受付)
岩手県盛岡市中ノ橋通1-8-3
東北自動車道盛岡ICから約20分
JR東北・北海道新幹線盛岡駅から車で約10分
11:00AM~3:00PM、5:00PM~7:00PM(L.O.)
※わんこそばは~6:30PM(L.O.)
第1水曜休(ゴールデンウイーク、8月を除く)

http://wankosoba.jp/

「東家 本店」があるのは中津川の東側に広がる河南エリア。古くから商業の中心地として栄え、城下町の面影を残す歴史的な町並みが続く。岩手銀行赤レンガ館などの歴史的建築物や、再開発で生まれ変わった盛岡バスセンターなど、新旧の魅力が混在している。

取材・文・写真/日下智幸

※価格は消費税込。 L.O.=ラストオーダー
●取材時期:2025年3月中旬 ※価格など掲載内容は施設や店舗の諸事情により変更となる場合があります。

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