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趣味のある休日

オペラをもっと楽しむためのディスク、公演、ホール情報

Photo:Wiener Staatsoper / Michael Poehn

オペラの入口に立ったら、実際に何から聴いて、どの公演に足を運んだらよいかが気になってくるところ。おすすめのディスクと公演情報、全国各地からホールをピックアップして紹介する。

2025.8.20

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香原氏推薦・おすすめ名盤CD&DVD

 かつて時代を作った名歌手や、その名を後世に残す名演にふれると、オペラの魅力はよりいっそう身近なものになる。今回は、比較的入手しやすいCD、DVD、Blu-rayのディスクから、香原氏におすすめをうかがった。

CD

  • マリア・カラス『ザ・ベスト・オブ・マリア・カラス』

    オペラ界の絶対女王、マリア・カラスの歌声に浸る
    ドラマティックな声と高いテクニック、強固な精神力で声の芸術を高みに引き上げ、一時代を築いたプリマドンナ、マリア・カラス。オペラの魅力をあらためて世に知らしめた功績は大きい。“ディーヴァ・アッソルータ”(最高の歌姫)と呼ばれた。2025年、生誕102周年を迎える彼女の歌声が一枚に詰め込まれた珠玉のベスト・アルバム。
    発売元/東芝EMI

  • ルチアーノ・パヴァロッティ『パヴァロッティ~ザ・グレイテスト・ヒッツ50』

    “キング・オブ・ハイC”の美声を浴びる快感
    「三大テノール」のひとりとして幅広い人気を誇り、世界で最も売れたクラシック・ヴォーカリストであるパヴァロッティ。カラヤンが「神が声帯にキスをした」と評した魅力的な声は、今後二度と出合えないのではないかと思わせる。メジャー・オペラ・デビュー50周年を記念したこのCDでは、彼のさまざまな時期の歌声を聴くことができる。
    発売元/ユニバーサルミュージック

  • 『トゥーランドット! 24人のスーパーテノールによる「誰も寝てはならぬ」』

    お気に入りテノールを見つけよう
    「誰も寝てはならぬ」は、プッチーニのオペラ『トゥーランドット』の最終幕で、王子カラフが歌う名アリア。テノール歌手にとって技術と表現力が試される一曲でもある。ここでは、古今、24名の名テノール歌手が自身の個性を発揮し、思い思いに表現する。同じ曲でも歌手によってこんなに違ってくるということを聴き比べるのも楽しい。
    発売元/キングインターナショナル

  • フランコ・コレッリ『初期アリア集』

    多くのオペラファンを生んだコレッリの歌声
    20世紀後半を代表するテノール歌手、フランコ・コレッリが亡くなって10年。彼が30代のころの録音を中心に収録されており、もち前の力強く、ドラマティックな声を味わうことができる。オペラファンには、コレッリのアリアを聴いてオペラの魅力に目覚めたという熱狂的ファンがいまも多くいる。
    発売元/PREISER RECORDS

DVD/Blu-ray

  • ビゼー『カルメン』ガランチャ主演、ネゼ=セガン指揮、メトロポリタン歌劇場

    豪華キャストで魅せる超名作オペラ
    スペインを舞台に、自由奔放なカルメンと、彼女に翻弄される真面目な兵士ドン・ホセの破滅的な恋愛が描かれ、情熱と悲劇が交錯するこの作品は、魅惑的なメロディーとリズムに満ち、世界で非常に上演回数が多いオペラ作品。その名作を世界最高のメゾ・ソプラノのひとり、エリーナ・ガランチャがカルメン役として主演、ホセ役はみずみずしい声をもつロベルト・アラーニャが務める。オペラ入門編として、最初におすすめしたいDVDだ。
    発売元/ユニバーサルミュージック

  • モーツァルト『フィガロの結婚』ファッシ主演、パッパーノ指揮、コヴェントガーデン王立歌劇場

    不滅の人気作をオーソドックスな演出で
    スペインを舞台に、伯爵の使用人フィガロと、伯爵夫人の侍女スザンナの結婚を巡る一日を描いた喜劇。登場人物それぞれに魅力と深みがあり、オペラ界でとても人気の高い作品のひとつ。それだけに読み替えや現代的な演出なども多いが、まずはこの作品の楽しさがわかるオーソドックスな演出作を観ておきたい。主演のリッカルド・ファッシは、この10月のウィーン国立歌劇場来日公演の『フィガロの結婚』でも主演を務める。
    発売元/OPUS ARTE

  • ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』ネトレプコ主演、モランディ指揮、ヴェローナ野外劇場

    イタリア・オペラの豪華な世界に没入する
    イタリア・ヴェローナにある壮大な古代ローマ闘技場「アレーナ」で毎夏行われる野外オペラフェスティバル。そこで上演された『イル・トロヴァトーレ』は、映画監督でもあるフランコ・ゼッフィレッリの演出で、オペラの豪華さや非日常感をとことん堪能できる。主演のアンナ・ネトレプコは、いまたいへん人気のあるソプラノ歌手のひとり。テノールのユシフ・エイヴァゾフの声量豊かな“ハイC”には「こんな声が出せるんだ」と純粋に驚きを感じるだろう。
    発売元/キングインターナショナル

2025/26シーズン、注目したいオペラ公演

 秋からスタートするオペラの2025/26シーズンに、名演が期待される3つの公演を紹介する。

ウィーン国立歌劇場

 クラシック音楽ファン憧れのウィーン国立歌劇場が9年ぶりに来日。上演するのは人気の演出家、バリー・コスキーによるモーツァルト『フィガロの結婚』と、1911年の初演以来、ウィーンで1000回以上上演されているリヒャルト・シュトラウス『ばらの騎士』。ウィーン・オペラの魅力を堪能できる。東京文化会館の改修休館前最後のオペラ“引っ越し公演”となり、海外の歌劇場の大規模公演は2029年まで観られず、おそらく改修前最後のチャンスとなりそうだ。

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Photo:Wiener Staatsoper / Michael Poehn

『フィガロの結婚』全4幕
10月5日(日)2:00PM開演
10月7日(火)3:00PM開演
10月9日(木)6:00PM開演
10月11日(土)2:00PM開演
10月12日(日)2:00PM開演
指揮:ベルトラン・ド・ビリー
演奏・合唱:ウィーン国立歌劇場管弦楽団/ウィーン国立歌劇場合唱団
演出:バリー・コスキー

『ばらの騎士』全3幕
10月20日(月)3:00PM開演
10月22日(水)3:00PM開演
10月24日(金)3:00PM開演
10月26日(日)2:00PM開演
指揮:フィリップ・ジョルダン
演奏・合唱:ウィーン国立歌劇場管弦楽団/ウィーン国立歌劇場舞台上オーケストラ/ウィーン国立歌劇場合唱団
演出:オットー・シェンク

会場:東京文化会館
料金:26,000~82,000円
問い合わせ先:NBSチケットセンター
TEL 03-3791-8888(10:00AM~4:00PM 土・日・祝休)

一部の公演については、チケットJCBでも取り扱いがあります。詳しくは「チケットJCB」WEBサイト(https://t-jcb.com/)をご覧ください。

三井不動産 presents イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.5

 イタリア・オペラを知り尽くした指揮者、リッカルド・ムーティが、その真髄を伝えるべく、才能ある若手音楽家を指導し、オペラ上演までの全過程を公開指導する。ムーティによる作品解説や演奏会形式のオペラのほか、貴重なリハーサル現場も一般にも公開され、巨匠からオペラを“伝授”してもらえる貴重な機会だ。2025年の演目は、ヴェルディ『シモン・ボッカネグラ』。イルダール・アブドラザコフの歌声も聴ける。

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写真/東京・春・音楽祭実行委員会

リッカルド・ムーティ指揮
《シモン・ボッカネグラ》(演奏会形式)
9月13日(土)3:00PM開演
9月15日(月・祝)7:00PM開演
指揮:リッカルド・ムーティ
出演:ジョルジェ・ペテアン(バリトン)/イヴォナ・ソボトカ(ソプラノ)/イルダール・アブドラザコフ(バス・バリトン)/ピエロ・プレッティ(テノール)ほか
管弦楽:東京春祭オーケストラ
合唱:東京オペラシンガーズ
曲目:ヴェルディ 歌劇『シモン・ボッカネグラ』(イタリア語上演・日本語字幕付)
会場:東京音楽大学100周年記念ホール(池袋キャンパスA館)
料金:14,000~29,500円
問い合わせ・予約先:イタリア・オペラ・アカデミーin 東京 チケットデスク
TEL 050-3498-1053(月・水・金 10:00AM~2:00PM)

新国立劇場

 新国立劇場 オペラの2025/26シーズンは10月にスタートし、翌年7月まで新制作を含む10作品が上演される。『こうもり』は2025年に生誕200周年を迎えるワルツ王、ヨハン・シュトラウス2世のオペレッタの最高傑作。マスネのロマンティシズムあふれる音楽で描かれるフランス・オペラの名作『ウェルテル』には、脇園 彩がシャルロット役として出演する予定だ。こちらにもぜひ注目したい。

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新国立劇場『こうもり』より。写真/鹿摩隆司

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新国立劇場『ウェルテル』より。写真/寺司正彦

『こうもり』
2026年1月22日(木)6:00PM開演
2026年1月24日(土)2:00PM開演
2026年1月25日(日)2:00PM開演
2026年1月27日(火)2:00PM開演
2026年1月29日(木)2:00PM開演
指揮:ダニエル・コーエン
演出:ハインツ・ツェドニク
管弦楽:東京交響楽団
料金:7,700~29,700円

『ウェルテル』
2026年5月24日(日)2:00PM開演
2026年5月26日(火)2:00PM開演
2026年5月28日(木)6:00PM開演
2026年5月30日(土)2:00PM開演
指揮:アンドリー・ユルケヴィチ
演出:ニコラ・ジョエル
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
料金:6,600~26,400円

合唱:新国立劇場合唱団
会場:新国立劇場 オペラパレス
問い合わせ先:新国立劇場ボックスオフィス
TEL 03-5352-9999

オペラに浸れるホール5選

 オペラにとって、その舞台となる劇場も重要だ。音響、空間、プログラム、それぞれに個性ある5つのコンサートホールを紹介しよう。

東京文化会館

日本における舞台芸術の殿堂

舞台脇のオブジェが印象的な東京文化会館大ホール。写真/東京文化会館

 1961(昭和36)年、東京都開都500年記念事業としてオープンし、以来、日本を代表する舞台芸術の殿堂として歴史的名演が繰り広げられてきた。海外歌劇場公演は主に東京文化会館で行われ、音響のすばらしさにも定評がある。オペラに親しんでもらうための主催公演も設けられ、「オペラBOX」は東京音楽コンクール入賞者を起用。初めて観る人も気軽に楽しめる。2025年は9月21日(日)に小ホールで、児童文学の傑作『泣いた赤おに』が6年ぶりに再演される。「オペラをつくろう!」というワークショップも行われている。東京文化会館は2026年5月から約3年間、大規模改修で休館となる予定だ。

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2019年に上演されたオペラBOX 『泣いた赤おに』の一場面。写真/飯田耕治

東京文化会館[東京都]
TEL 03-3828-2111
東京都台東区上野公園5-45

https://www.t-bunka.jp/

新国立劇場 オペラパレス

日本を代表するオペラハウスで注目の歌声を

年間50公演以上のオペラが上演されるオペラパレス。非日常を味わえる空間だ。
写真提供/新国立劇場

 新国立劇場は、オペラ、舞踊(バレエ・ダンス)、演劇の3部門の芸術監督の下、オペラパレス(大劇場)、中劇場、小劇場の3つの劇場で年間約250ステージの主催公演を行っている。オペラ芸術監督は海外の名門歌劇場でも経験を積んできた指揮者・大野和士。レパートリー作品の上演以外に、意欲的に新作の制作にも挑んでいる。世界で活躍するアーティストを迎え、国内で世界の一流の歌声を堪能できる貴重な劇場となっている。東京オペラシティに隣接しており、日本でオペラの空気に浸れる貴重な場所だ。

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2023年に上演された『こうもり』の一場面。写真/鹿摩隆司

新国立劇場 オペラパレス[東京都]
TEL 03-5352-9999
東京都渋谷区本町1-1-1

https://www.nntt.jac.go.jp/

札幌文化芸術劇場 hitaru

札幌発のオペラやバレエを発信する

札幌文化芸術劇場hitaruの内観。さまざまな角度から舞台を観ることができる。

 3層バルコニー構造が特徴で、座席によって音の違いが楽しめる、北海道初の多面舞台を備えた劇場。国内のハイレベルのオペラ公演を招聘しているほか、地元芸術家と手を携えて独自のプロダクションによる「hitaruオペラプロジェクト」を実施。2025年はモーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』を上演した。公演開催と合わせ、稽古見学会、札幌出身の漫画家とのコラボ企画、地元大学の協力を得て作品のみどころ・聴きどころを解説するレクチャーイベントを開催するなど、オペラへのさまざまな“入口”が用意されている。

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2025年の『ドン・ジョヴァンニ』公演の一場面。写真提供/札幌文化芸術劇場 hitaru ©n-foto LLC

札幌文化芸術劇場 hitaru[北海道]
TEL 011-271-1950
北海道札幌市中央区北1条西1丁目

https://www.sapporo-community-plaza.jp/theater.html

ロームシアター京都

文化芸術都市・京都に生まれた舞台

約2000席と京都府で最大の席数をもつメインホール。写真/山地憲太

 戦後モダニズム建築の傑作と評価された「京都会館」を、“時代ごとの新しい価値を、これまで築いてきた価値の上に重ねていく”という想いで保存改修して誕生した。劇場コンセプトは「劇場文化をつくる」。10周年記念事業として2026年1月にドニゼッティ『愛の妙薬』が上演される。ロマンティックで明るい作品を、ベルカントオペラのスペシャリストとしても名高いセバスティアーノ・ロッリと、オペラ初演出の杉原邦生がどのように表現するか楽しみだ。「劇場のある空間」と日常を繋げるブック&カフェ、レストランもある。

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2024年度全国共同制作オペラ『ラ・ボエーム』の一場面。写真/Masatoshi UENAKA

ロームシアター京都[京都府]
TEL 075-771-6051
京都市左京区岡崎最勝寺町13

https://rohmtheatrekyoto.jp/

滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール

臨場感を追求した湖畔の芸術劇場

細部までこだわり抜いた音響設備にも定評がある大ホール。

 琵琶湖を目の前にした開放的なロケーションに立つ本格的なオペラ劇場。柱や壁には、イタリア産の白大理石がタイル状に貼られ、高級感たっぷり。国内有数の4面舞台をもつ大ホールでは、ヨーロッパ発祥の大がかりな舞台転換が楽しめる。毎年オリジナルのオペラ公演を行っており、2026年3月には阪 哲朗プロデュース第3弾として、粟國 淳による新演出のプッチーニ『トゥーランドット』が大ホールで上演される予定だ。オペラ講座やオペラセミナーも定期的に行われている。

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「オペラへの招待」というプログラムで上演された『フィガロの結婚』。写真/びわ湖ホール

滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール[滋賀県]
TEL 077-523-7133
滋賀県大津市打出浜15-1
火曜(休日の場合は翌日)休

https://www.biwako-hall.or.jp/

取材・文/山口あゆみ
●取材時期:2025年4月中旬 ※価格は消費税込。
※価格など、掲載内容は施設の諸事情により変更となる場合があります。

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