定番のオムライスとスパゲッティーナポリタン。家庭料理でもあるが、ちょっとしたコツでおいしさはぐっとランクアップする。「目白 旬香亭」のシェフ、古賀達彦氏にポイントを教わった。さらに、東西の洋食の名店から厳選した4軒もご紹介。
2025.7.14
名店から学ぶ、おいしさのヒント
市販のケチャップを使ってもそこそこの味にはなるが、深みのある味にするにはどうしたらよいのだろうか。その秘密を聞いてみた。
「自家製のトマトソースを作っておけば、とびきりおいしいオムライスやナポリタンが手軽に作れます」と古賀シェフ。ブイヨンをとったり、デミグラスソースを一から作ったりとなるとハードルが高いが、トマトソースなら比較的簡単に作れる。「このトマトソースはあくまでもベースで、作る料理に合わせてケチャップやウスターソースなどを加えてアレンジし、味にコクやキレを出します。ベーコンや香味野菜を煮込んでから、今回はザルで濾して仕上げていますが、ミキサーですべて一緒に粉砕してから使ってもよいでしょう。その場合、日もちが悪くなるので、早く使い切るか、冷凍保存してください。このソースがあれば、オムライスもナポリタンも、あっという間においしく仕上げられますし、ほかの料理にも利用できます」。
オムライスを作るときは、ご飯に対してトマトソースをやや多めにからめて炒め、しっとりさせると、半熟卵との一体感が生まれる。フライパンから皿にひっくり返した後、キッチンペーパーを使って形を整えるのもポイント。見た目の美しさも大切だ。
また、ナポリタンに使うスパゲッティーは、軟らかな食感が合うので、ゆで時間を長めにするのがコツ。時間差で何人分も作るときは先にゆでておくとよい。「長時間置く場合は、表記されているゆで時間の半分であげ、オリーブオイルをからめて置いておけば、使うときにはちょうどよい硬さになっています」と古賀シェフ。
少しの手間とコツで、家庭の味を洋食の名店の味に近付けよう。
基本となるトマトソース作りから
■材料(作りやすい分量)
- サラダ油…少量
- ベーコン(短冊切り)…15グラム
- ニンニク(皮をむいて半分に切る)…1片分
- ㋐タマネギ(薄切り)…50グラム
- ニンジン(薄切り)…15グラム
- セロリ(薄切り)…15グラム
- トマトピューレ…300ミリリットル
- ブイヨン(チキンコンソメの素を記載の分量よりやや薄めに溶かしたもの)…300ミリリットル
- ㋑ローリエ…1枚
- 塩…適量
- コショウ…適量
■作り方
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❶鍋にサラダ油を入れて熱し、中火でベーコンを1分~1分半炒める。ベーコンの色が変わり、油が浮かぶようになったらニンニクを加えて炒める。ニンニクの香りが立ってきたら㋐を加え、ややしんなりするまで3~4分炒める。
❷①にトマトピューレを加えて加熱する。トマトピューレが煮立ったら、かき混ぜながら1~2分、中弱火で加熱し、トマトの酸味を飛ばす。 -
❸②にブイヨンを加え、㋑も加えて沸騰させ、10分程中弱火で煮詰める。ときどき、鍋の周りに付いたソースをヘラでこそげとるようにして混ぜながら煮詰める。
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❹③をザルなどで漉す。ゴムベラなどで具材を押し、しっかりと漉す。
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❺トマトソースの完成。
トマトソースを活用した2皿
オムライス

■材料(1名分)
- バター…10グラム
- 鶏のささみ(1センチメートル角に切る)…1本分
- ㋐マッシュルーム(4等分に)…2個分
- タマネギ(粗みじん切り)…10グラム
- ご飯(炊き立てなら冷ましたもの)…130グラム
- トマトソース…100ミリリットル
- 卵液
- ㋑全卵…2個
- 生クリーム…大さじ1
- 塩…少々
- 白コショウ…少々
- ケチャップ(好みで)…適量
■作り方
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❶フライパンを弱火で温めてからバター5グラムを入れ、火から少し遠ざけてフライパンを回すようにして溶かす。
❷①に鶏のささみを入れて弱火で炒め、半分ほど火が通ったら㋐を加えてさらに炒めて火を通す。
❸ご飯を加え、切るように混ぜながら炒める。ご飯にバターが馴染んだら、トマトソースを加えて、中火で炒め合わせる。まんべんなく炒め、少しゆるめのトマトソースライスができあがったらボウルに移す。フライパンは洗っておく。 -
❹別のボウルに㋑を入れて混ぜ合わせ、卵液を作る。卵は白身が混ざり切らない程度に溶くのがポイント。
❺フライパンを弱火で熱し、バター5グラムを入れて、フライパンの鍋肌までバターを回して溶かす。バターがふつふつとしたら、④を流し入れて中火にする。 -
❻フライパンを揺すりながら卵液を箸でかき混ぜ、半熟状態(スクランブルエッグの手前)まで加熱する。
❼フライパンを火から下ろし、卵を楕円形にし、その中央に③のご飯をこんもりとのせる。 -
❽フライパンを傾けて卵を奥に寄せつつ、もう片方の手で皿を持つ。卵のヘリを皿に付け、一気にひっくり返してオムライスを皿にのせる。
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❾キッチンペーパーをかぶせ、卵の端をライスの下に押し込むようにして形を整えれば完成。好みでケチャップを添える。
スパゲッティーナポリタン

■材料(1名分)
- スパゲッティー(1.6ミリメートル~)…100グラム
- 塩…適量
- サラダ油…適量
- ウインナー(4等分に斜め切り)…50グラム
- タマネギ(細めのくし切り)…30グラム
- マッシュルーム(4つに薄切り)…2個分
- ピーマン(ヘタと種を取り、幅5ミリメートルの縦切り)…1個
- トマトソース…100ミリリットル
- ケチャップ…大さじ2
- ウスターソース…大さじ1
- 粉チーズ(好みで)…適量
■作り方
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❶鍋に湯(材料記載外)をたっぷり沸かし、湯の量の0.5~1パーセントの塩を加えてスパゲッティーをゆでる。袋に記載のゆで時間プラス1分ゆで、ザルにあげて湯を切る。
❷フライパンにサラダ油を熱し、中火でウインナーを炒める。
❸タマネギとマッシュルームを加えて炒める。 -
❹火が通ったらピーマンと①のスパゲッティーを加えて、弱火で全体に油をまとわせるように炒める。
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❺トマトソースとケチャップを加える。
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❻混ぜ合わせるように炒めてから、ウスターソースを加えてさらに炒める。鍋肌に焼き付いたソースを、こそげ落とすようにしながらよく炒めて、うまみを凝縮させるのがポイント。皿に盛り付け、粉チーズを添えれば完成。
目白 旬香亭[東京]

TEL 03-5927-1606
東京都豊島区目白2-39-1 トラッド目白2階
11:00AM~2:00PM(L.O.)、5:00PM~9:00PM(L.O.)
年末年始休

調理師専門学校で洋食を専攻し、卒業後フランス料理の世界へ入った古賀氏。軽やかかつ繊細な味わいの料理が人気。
東西からおすすめ洋食店を2軒ずつ
ハンバーグにロールキャベツ、カリッと香ばしいフライ……。親しみやすい食べ物でありながらぜいたく感もあり、心温まるひと品が味わえる洋食の名店を、東京・大阪・京都からご紹介。
フランス料理と洋食の技法を駆使した、モダンスタイルのビストロ洋食
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「上野洋食遠山特選デミグラスソースハンバーグ」(ディナーの単品・200グラム・2,500円)。
50グラム刻みでサイズを大きくできる。ランチセット(2,300円~)もある。 -
「ジャンボエビフライ 自家製タルタルソース添え」(ディナー・1,800円)。サクッとした香ばしさと、プリッとしたエビで幸福感が味わえるひと皿。
フランス料理店で研鑽を積み、京都の洋食店の名店で技を培った遠山忠芳氏が表現するビストロ感覚の洋食店。名物は1週間程かけて作るデミグラスソースをたっぷりかけたハンバーグと、オリジナルで配合したスパイスとフランス料理の技法で作ったソースが味わい深いガンジーカレー。ランチ、ディナーともに、メイン料理とサイドメニューが選べるセットメニューが好評だ。また、ディナーでは前菜からデザートまでコースで楽しめる「上野洋食遠山コース」(4,300円・2名~)もおすすめ。懐かしさのなかに新しい洋食の世界が広がる一軒といえる。
上野洋食 遠山 by SALT GROUP[東京]

TEL 03-5826-4755
東京都台東区上野公園1-54 上野の森さくらテラス2階
11:00AM~3:00PM(2:00PM(L.O.))、5:00PM~11:00PM(10:00PM(L.O.))
月曜(祝日の場合は翌平日)、1/1休
※チャージ:200円(ディナーのみ)
濃厚デミグラスソースたっぷりの、ロールキャベツが名物
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「デミグラスソースのロールキャベツ」(2,090円)。濃厚なうまみのソースとロールキャベツが、口のなかでとろける。
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「ホワイトソースのハンバーグステーキ」(1,760円)。粗挽き肉を使用し、しっかりとした肉の食感とうまみが感じられるハンバーグ。
「ローブン」の名前はロールキャベツ(Ro)をオーブン(Oven)で焼きあげることに由来する。人気のロールキャベツは箸でも切れるほど軟らかく、時間をかけて丁寧にとったフォンドヴォー(フランス料理で使われるだしの一種)から作られるデミグラスソースがたっぷりかかる。また、このロールキャベツとハンバーグには、デミグラスソースのほかに、トマトソースやホワイトソースのバリエーションもある。都内に3店舗を展開する「Bistro Roven」だが、芝公園店ならではのオリジナルの前菜メニューも豊富。厳選ワインとともに味わいたい。
Bistro Roven 芝公園[東京]

TEL 03-6275-1729
東京都港区芝2-5-1 コンフォルト芝公園1階
11:30AM~2:30PM(2:00PM(L.O.))、5:30PM~10:00PM(9:30PM(L.O.))(金 ~10:30PM(9:30PM(L.O.))
不定休
※チャージ:440円(ディナーのみ)
変わらぬ味で愛され続ける、大阪・下町の老舗洋食店
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「特製ロールキャベツ」(単品・1,600円、ライスとスープのセット・1,850円)。
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オムライス、コールスローサラダ、スパゲッティーに、シナモンクリームコロッケ、エビフライなど2種のトッピングが選べる「大人のお子様ランチ」(オムライスの大きさSサイズ(写真)・1,650円、Mサイズ・1,750円)。
1946(昭和21)年創業の「グリル マルヨシ」。看板メニューはデミグラスソースとカレーソースがあいがけになっている「特製ロールキャベツ」。フランス料理の修業経験をもつ2代目料理長が、フランスの郷土料理シューファルシ(キャベツの肉詰め)を、日本人向けにアレンジしたものだという。ロールキャベツ1個につき、キャベツ1/2個を使用し、長時間煮込むことで、キャベツと肉ダネが一体になりとろとろに。そのほか「自家製シナモンクリームコロッケ」「特製タンシチュー」「大人のお子様ランチ」などもおすすめ。おいしいものを気取らず楽しめる雰囲気で、3世代で通う常連客も多い。
グリル マルヨシ[大阪]

TEL 06-6649-3566
大阪市阿倍野区阿倍野筋1-6-1 ヴィアあべのウォーク130
11:00AM~2:30PM(L.O.)、5:00PM~9:30PM(L.O.)(土・日・祝 ~3:00PM(L.O.)、4:30PM~)
火、第2水(祝日の場合は翌平日)休
おなかも心も満たす割烹洋食がコンセプト
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「滋賀サカエヤ熟成牛ヒレビーフカツレツ 100グラム」(ディナー単品・5,930円)。
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2週間かけて仕込むデミグラスソースが惜しみなくかけられている「特製ハンバーグ 」(ディナー単品・100グラム・3,140円)。
滋賀の精肉店、静岡の鮮魚店、京都の農家から取り寄せる野菜など、それぞれの食材の目利きや、生産者と緒方博行シェフの密な繋がりによって得た厳選食材で作る洋食を、主にカウンターの割烹スタイルで提供する「洋食おがた」。火入れやソースには、フランス料理の経験が生かされている。熟成牛や熊本で放牧されている豚肉を使用するハンバーグ、ビーフカツ、ポークジンジャーは、ディナーの単品メニューはもちろん、サラダやスープなどが付いたランチセットでも提供する。また、ここでは魚料理も絶品で、その代表格がレアに揚げた「活アジフライ」。注目したいひと品だ。
洋食おがた[京都]

TEL 075-223-2230
京都市中京区柳馬場押小路上ル等持寺町32-1
11:30AM~2:30PM(1:30PM(L.O.))、5:30PM~10:00PM(9:00PM(L.O.))
火曜、12/31・1/1休(ほか月2回不定休、冬季休暇、夏季休暇あり)
※サービス料:10%
取材・文/土井ゆう子 写真/伏木 博 合田慎二
●取材時期:2025年2月中旬 ※価格は消費税込。 L.O.=ラストオーダー
※価格など掲載内容は時期や施設、店舗の諸事情により変更となる場合があります。