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連載 趣味のある休日

趣味のある休日

日帰り温泉旅の愉楽

千葉県の鴨川温泉「鴨川館」の大浴場「ときわの湯」は、男女入れ替え制で、日帰り温泉として利用できる。

日ごろの疲れをいやす温泉は、心と体の究極の和みの空間といっていい。週末や連休など、ゆっくり時間が取れるときにと考えると、なかなか出かける機会も限られてしまうが、最近では、日帰りプランが充実した宿が増えてきている。個室や食事付のプランもあり、思い立ったらすぐにぜいたくな一日を手に入れることができる。

2025.5.23

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片道2時間程度で出合える、とっておきの非日常

 日帰りでも十分にくつろげる温泉施設。その魅力と賢い使い方のコツを、温泉ライターの泉 よしか氏に教えてもらった。

「京都 湯の花温泉 すみや亀峰菴」の貸切露天風呂「山の隠れ湯」。木立に囲まれた散策路の先にあり、木漏れ日のなかで湯に浸かることができる。写真/泉 よしか

 ひと口に日帰り温泉といっても、入浴のみの簡素なものから、スーパー銭湯のような施設まで、いろいろなタイプがあります。せっかく出かけるのであれば、風情のある温泉宿の立ち寄り湯や、客室や快適な湯あがり処でゆったり過ごせたり、こだわりの食事が楽しめたりできるようなところを選んでみてはいかがでしょう。あるいは、ひとつの温泉地で何ヵ所もの湯巡りを楽しむという過ごし方もあります。いずれも日帰りなのに旅行気分や非日常感が味わえるのが醍醐味です。
 仕事が忙しくて宿泊する時間が取れない、家族の都合で泊まりでの外出は難しいといった方でも、日帰りならフットワークもぐっと軽くなるはず。また、ひとりでどこかに出かけたいときにも日帰り温泉はいいアイデアだと思います。泊まりは2名からという旅館でも、日帰りなら1名から受け入れてくれるところも多いようです。
 かつては温泉宿の浴室といえば大浴場が定番でしたが、コロナ禍前のインバウンドが増えてきたあたりから、おしゃれな貸切風呂や家族風呂を備えた宿がぐっと増えました。日帰りでもそうした浴室を利用できるところがあります。広い大浴場には開放感があり、のびのびできるよさがありますが、貸切風呂ならほかのお客様に気を使わずにゆったりと温泉を堪能できます。また、サウナや岩盤浴の設備を導入しているところも増えていて、昨今とても人気が高まっています。
 日帰り温泉を選ぶうえで気を付けたいことは、食事付プランや客室利用などは、予約が必要なところが多いということ。利用できる曜日が限られている場合もあるので、早めにチェックして予約しておきましょう。
 現地でゆっくり過ごしたいが、帰る時間が気になる場合は、行き先は自宅から片道1時間半程度、遠くても2時間くらいがベター。車なら片道100〜150キロメートル圏内で選びましょう。車の場合は最寄りのインターチェンジから近いか遠いかも選択する際の重要なポイントです。また、最近は最寄り駅でタクシーがなかなか拾えないところもあるので注意しましょう。公共交通機関を使ってアクセスする場合、場所によっては少し遠回りでもあえてロープウェイを使うなどすると、より旅気分が高まります。
 日帰り温泉は気軽に出かけられるのが大きな魅力のひとつです。タオルなどはレンタルまたは販売しているので、できるだけ身軽で出かけたいもの。ただ、髪の長い人は髪を束ねるゴムを、お化粧をしっかり落としたい人は、1回分のクレンジングを持っていくとよいでしょう。
 最近は入浴・食事・休憩・エステなどに加えて、散策路、地元の特産品を使ったお茶やスイーツ、ヨガや伝統工芸製作体験などの日帰りリトリートが楽しめるプランも増えてきています。行きつけにしたい日帰り温泉を見つけて、旅気分を満喫しましょう。

日帰り温泉のススメ3ヵ条

1.泊まる時間が取れなくても旅行気分が味わえる
2.貸切風呂や客室利用、食事を日帰りで楽しめる宿もある
3.一日に何ヵ所も湯巡りして温泉を楽しむこともできる

教えてくれたのは

プロフィール画像

泉 よしか氏

温泉ライターとして北海道から沖縄まで1600湯以上の情報をオンラインで公開。ラグジュアリークラスからB級まで温泉を幅広く紹介。温泉ソムリエマスター/温泉観光実践士/サウナ・スパ健康アドバイザー/温泉ビューティー&ダイエットソムリエ。

歴史ある保養地で日帰り温泉旅を満喫

修善寺「新井旅館」。2023年11月にリニューアルオープンした「あやめ風呂」。芥川龍之介お気に入りの池の鯉が眺められるガラス窓はそのままに、広く明るく、快適な風呂に生まれ変わった。あやめをかたどった風呂もある。

 修善寺「新井旅館」は、1872(明治5)年開業。日本画家の横山大観、作家の芥川龍之介など数多の文化人が滞在した老舗温泉宿だ。明治、大正、昭和とそれぞれの時代に増築した建物は、そのうちの15棟が国の有形文化財に登録されている。今回利用する「日帰り個室休憩プラン」のチェックインは11:30AMから。名刹・修禅寺のすぐ近くに位置し、趣深い木造3階建ての建物に迎えられる。
 このプランでは天平時代の建築を模して造られた「天平大浴堂」や「あやめ風呂」の大浴場、そして貸切風呂も利用できる。温泉はすべて源泉かけ流しで、泉質は“美肌の湯”といわれるアルカリ性単純泉。大浴場は時間によって男湯と女湯が入れ替え制になっているので、両方入りたい場合は、時間のチェックを忘れないようにしたい。

日帰りプランに付く「昼食会席御膳」。先付、お造り、焼物、煮物、揚げ物などで、季節の食材を目と舌で楽しめる。内容は季節によって異なる。

 昼食は旬の食材を味わう会席御膳。休憩には個室を利用することができ、タオルも浴衣も用意されている。チェックアウトは2:30PM(入浴は11:30AM~2:00PM)。おもてなしの充実ぶりに、時間が経つのもあっという間。また来ようという想いを胸に、風情ある町並みを散歩しながらみやげものを選んで帰路につこう。

泉さんCHECK!
登録有形文化財の建物や浴室に和む

  • 総檜造りで巨石が配された「天平大浴堂」。3代目館主と親交の深かった日本画家・安田靫彦(やすだゆきひこ)の設計によるもので、1934(昭和9)年に造られた。寺社を思わせる荘厳な雰囲気のなかで、温泉を満喫できる。

  • 貸切風呂「翡翠」。予約不要で、内鍵をかけて自由に利用できる。

  • 休憩室として利用できる個室の一例。純和風のたたずまいで、ゆったり過ごすことができる。

  • 庭や、鯉が泳ぐ池に面し、建物を繋ぐ「渡りの橋」は、1899(明治32)年に造られたもの。写真撮影でも人気のスポット。

新井旅館[静岡県]

サムネイル

古木が迎える風格ある玄関アプローチ。建物は木造3階建ての純和風建築。

TEL 0558-72-2007
静岡県伊豆市修善寺970
日帰り個室休憩プラン(昼食付)11:30AM~2:30PM 7,150円~(夕食付)4:00PM~8:30PM 15,400円~(いずれも2名1室利用時の1名料金。サービス料込・入湯税150円別)

https://arairyokan.net/

取材・文/土井ゆう子
●取材時期:2025年1月中旬 ※価格は消費税込。
※価格など掲載内容は時期や施設、施設の諸事情により変更となる場合があります。

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