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富山県

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おいしいもの探訪【富山県】

日本のおいしいものを紹介する旅。
今回は富山県から。
その町から生まれたおいしいものが、
地元で愛される味になるまでを紹介します。

2025.6.12

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にぎり鮨

熟成によって魚のよさを引き出す

メニューはおまかせ(22,000円)のみ。富山の地酒はもちろん、魚津のワイナリーの白ワインなどとともに楽しみたい。

 海岸から山岳地帯まで、直線距離で25キロメートル程の間に位置するのが、魚津の町だ。急峻な地形が影響して海中に豊かな環境をつくり出し、魚王国・富山でも有数の漁港を擁することで知られる。
 魚津駅前の「鮨 大門」は、鮮度自慢のこの地にありながら、ネタにひと手間を加える江戸前の技を生かした鮨を楽しめる店。酢や昆布で締めるほか、ネタのほとんどを熟成させている。「寝かせるためにはもとの素材のよさが重要」と大将の大門太郎氏は話す。白身魚やエビ、バイ貝など扱うネタの約8割は地元から、トロやウニは江戸前鮨の技術を学んだ北海道・札幌の業者から仕入れている。鯛は5日程、トロは魚体の大きさにより1〜2週間程寝かせることで、うまみが引き出されるだけでなく、身が落ち着き、鮨をにぎったときにシャリとの一体感が出るという。「にぎり一貫、おつまみひと皿が立派な料理。どの瞬間にもおいしく食べてもらえるよう手をかけています」と大門氏。大将の腕に魅了されて、遠路はるばる足を運ぶ常連客も多い。

装飾を抑えたシンプルな店内は、檜の一枚板を使った白木のカウンターや板張り天井の木目の美しさが際立つ。

鮨 大門(だいもん)

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TEL 0765-32-5868
富山県魚津市釈迦堂1-2-3
北陸自動車道魚津ICから約10分
あいの風とやま鉄道魚津駅から徒歩すぐ
5:00PM~8:00PM最終入店(10:00PM閉店)
月曜休(祝日の場合は翌日も休) ※要予約

1913(大正2)年に初代の建物が開館し、現在は3代目となる魚津水族館(入館料:大人1,000円、9:00AM~5:00PM ※最終入館は閉館30分前、12/1~3/15の月曜(祝日の場合は翌日)・年末年始休)は、日本に現存する最も歴史の古い水族館。

日本料理

しみじみと味わう上品で繊細な料理

コースは8,250円~(サービス料10パーセント別)。料理には剱岳(つるぎだけ)のふもとにある城山の湧き水を使用。硬度が低く食材からうまみが出やすいのだそう。

 富山市内随一の繁華街・総曲輪(そうがわ)から少し東に歩いた路地裏に、小さく「冨久屋」と看板を掲げた日本料理店がある。この店で味わえるのは、先付からはじまり、お吸物やお造り、煮物、焼物など10品程で構成されるコース料理。店主の大屋丈二氏は、「簡素なたたずまい」の料理を信条としているという。そこには、「料理が目の前に現れた瞬間よりも、ひと口目の味わいにいちばんの感動を覚えてほしい」という想いが表れている。
 「イワシのつみれ」は、富山湾のイワシを煮る直前にすり鉢であたり、昆布だけでとっただしで素早く煮て、塩で味を調える。「蕪の煮込み」は氷見産の新鮮な煮干しでとっただしでカブを煮て、同じく塩のみで味付け。見た目だけでなく、調理方法や味付けもシンプルで、火入れや塩味の加減に丁寧に心を配り、食材と向き合うことを大切にしている。「だしや味付けは足すものというより、食材のもち味を引き出したり、補ったりするもの。簡素なもののなかにある上品さを大切にしています」と語る大屋氏が、富山が誇る食材の本質を味わわせてくれる。

地酒は常時25種類程取り揃えており、富山の酒蔵のものが6割、県外が4割程。

冨久屋(ふくや)

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TEL 076-461-3589
富山市白銀町7-7 2階
北陸自動車道富山ICから約16分
富山地方鉄道市内電車電停中町から徒歩約4分
6:00PM~9:00PM(L.O.) 日曜、第3月曜休

https://fukuya.in/

車で10分程の、平屋造りの富山県水墨美術館(常設展観覧料:大人200円、9:30AM~6:00PM ※最終入室は閉館30分前、月曜(祝日の場合は翌日)・年末年始休)では、日本の水墨画とそれを鑑賞する空間や庭園を通して日本文化の美を再認識できる。

創作和食

アート作品に囲まれて五感で料理を堪能する

創造性を大切にしつつも、和食の基本技術はたしかな料理が「美コース」(11,000円~)で味わえる。大吟醸酒はリーデルの日本酒専用グラスで供される。

 富山城の外堀「曲輪(くるわ)」に由来する総曲輪のアーケード街・総曲輪通り商店街。立ち並ぶ店々のなかで、大きな一枚板のオブジェが目を引くのが「額 美和食」だ。
 器や店を美術作品の“額縁”に見立て、そのなかで作りあげる料理と空間を五感で楽しんでもらう「美術館で食事を」が店のコンセプト。オーダーメードの天然秋田杉のカウンターやケヤキのテーブルとイスのほか、和紙のランプや絵画などで飾られた店内は、ここでしか体験できない個性的な雰囲気が醸し出されている。
 料理には仕入れ先にもこだわった厳選食材を使用し、和食という“額縁”に収まりきらないほどの創造性を意識しているそう。骨董品としての価値のある和食器、銅やガラス製の前衛的な器などに盛り付けて、料理をアートそのものとして愛で、そして食べる楽しさを演出する。
 「おいしいのはもちろんのこと、美しい見た目も料理の大切な要素」と話す店長の安川秀嗣氏。唎酒師(ききさけし)の資格をもつおかみが選んだ地酒の品揃えにも注目してほしい。

作家との交流から生まれた作品や家具はほとんどがオリジナル。

額 美和食(がく びわしょく)

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TEL 076-492-0122
富山市総曲輪3-2-27
北陸自動車道富山ICから約12分
富山地方鉄道市内電車電停グランドプラザ前から徒歩約2分
11:00AM~1:30PM(L.O.)、5:30PM~9:00PM(L.O.) ※5:30PM~8:00PMは要予約
水曜、第3火曜休

https://biwasyoku-gaku.com/

薬瓶用のガラスを多く製造していたことから「ガラスの街」として知られる富山市。富山市ガラス美術館(常設展観覧料:大人200円、9:30AM~6:00PM(金・土 ~8:00PM) ※最終入館は閉館30分前、第1・3水曜・年末年始休)では多彩な作品を展示。

取材・文/山下あつこ 写真/シンヤシゲカズ

※価格は消費税込。 L.O.=ラストオーダー
●取材時期:2025年1月上旬 ※価格など掲載内容は施設や店舗の諸事情により変更となる場合があります。

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