基本となる“ステーキの焼き方”を押さえておこう
肉を食べる醍醐味がある肉汁あふれるステーキ。家庭でフライパンを使って上質な肉を焼くときに参考にしたい肉の焼き方の基本を、東京・麻布十番「ピアット スズキ」のオーナーシェフ、鈴木弥平氏に聞いた。
1.部位や肉質によって肉の焼き方は違ってくる
肉のなかに網目のように細かく脂(サシ)が入った和牛のヒレなどは、その脂を融解させるようなイメージで焼こう。赤身肉よりも内部まで火が通りやすいので、焼くのに失敗しにくい。また、焼き始める前のフライパンに油を引く必要はない。一方、赤身肉を焼く場合は、牛脂をフライパンに塗り付けてから焼き始める。オーブンなどを使わずに、フライパンで分厚い肉を焼きたい場合でも、厚さは2.5〜3センチメートルくらいまでが焼きやすい。
2.肉を常温に戻すか、戻さないか
冷蔵庫から出した肉は、常温に戻してから焼くというのが定説だが、サシの入った肉は、冷蔵庫から出したら、塩・コショウを振ってすぐに焼き始めていい。常温になるまで置いておくと、肉の上質な脂が溶けて、うまみを逃してしまうおそれがあるからだ。一方、赤身肉は火が通りにくいので、常温に戻してから焼き始めよう。
3.塩・コショウは端から端までまんべんなく
ステーキで上質な肉そのものの味を楽しむなら、味付けはシンプルに塩・コショウだけがいい。塩・コショウを振るタイミングは諸説あるが、焼き始める直前に、肉の両面にまんべんなく振るのがよい。中央部分は自然とかかるものなので、端を狙うように振るとうまく均一にかかる。塩を振って時間をおくと、肉の表面に水分が浮き出てきて香ばしく焼けなくなるので、その前に焼き始めたい。肉の表面が濡れていたら、キッチンペーパーで拭くとよい。
4.肉を休ませながら徐々に火を入れる
ステーキの焼き方は、肉を焼いては休ませるを繰り返し、徐々に内部まで火を入れるのが基本。1回目の焼きは、フライパンに肉を入れてから火を付け、強火で焼き始める。片面にしっかり焼き色が付いたら、ひっくり返して火を止める。油のパチパチ跳ねる音が静かになったら肉を取り出して、網の上などに置き、アルミホイルをかぶせて休ませる。肉を取り出すタイミングを計るには、耳を澄ませて、音をよく聞くことが大切。2回目の焼きは、1回目で焼きの浅い面を下にして焼き始める。こんがりと両面を焼いて取り出し、再びアルミホイルをかぶせて休ませる。

5.肉を休ませる時間の目安は
肉を休ませる時間は、焼くのにかかった時間と同じだけというのが目安。3分かけて焼いたとすれば、アルミホイルをかぶせて3分休ませる。肉の表面の熱をゆっくり内部に伝導させるイメージだ。サシの入った肉なら、なかの脂が融解し始めているので、表面をさわると肉が軟らかくなっているのがわかる。

6.赤身肉なら3、4回に分けて焼こう
ステーキは、肉を焼いて休ませる、焼いて休ませるを繰り返すことで、肉の内部の血が対流し、きれいなロゼ色に焼きあがる。和牛のヒレなどのサシが多く入った肉は、なかまで火が通りやいので、2回程で焼きあがる。赤身肉の場合は、火が通りにくいので、“焼いて休ませる”を3、4回繰り返すといいだろう。この場合、焦げてしまわないように、2回目以降は中火で焼くようにしたい。十分に休ませて、肉をカットしたときに肉汁が出てしまったり、血がにじんでしまったりしないように焼きあげたい。
7.思いどおりの焼き加減にするために
ステーキの焼き加減は、主にレア、ミディアムレア、ミディアム、ウェルダンの4種類。好みは分かれるところだが、“焼いて休ませる”の回数を調節することで、焼き加減も調整できる。肉の厚さにもよるが、ミディアムレアからミディアムにしたい場合、“焼いて休ませる”を、霜降りの肉なら2回、赤身肉なら3、4回繰り返すとよいだろう。レアが好みなら焼きの回数を減らすか、2回目の焼き時間を短くして調節する。よく火の通ったウェルダンが好みなら“焼いて休ませる”の回数を増やすか、休ませるときに肉を取り出さず、火を止めたフライパンの上で休ませ、余熱で熱を入れてもいい。

教えてくれたのは……

ピアット スズキ[東京]

店内はシンプルで洗練されたテーブル席と、躍動感あふれるキッチンが見えるカウンター席がある。
TEL03-5414-2116
東京都港区麻布十番1-7-7 はせべやビル4階
6:00PM~0:00AM(深夜)(10:00PM(L.O.))
日曜・祝日の月曜休
チャージ:1,100円
取材・文/土井ゆう子 写真/伏木 博
●取材時期:2024年12月中旬 ※価格は消費税込。 L.O.=ラストオーダー
※価格など掲載内容は時期や施設、店舗の諸事情により変更となる場合があります。