泡盛は、米を主な原料として、沖縄県で造られている伝統的な蒸留酒。独特の風味が特徴だが、華やかな香りや軽快な飲み口のものも多くバラエティー豊か。泡盛の原料や造り方を知り、さらにその魅力を探る。
2025.3.17
黒麹由来の独特な風味と味わいを堪能したい
「泡盛は主な原料にタイ米(インディカ米)を使用し、黒麹菌を用いて造る蒸留酒で焼酎の一種です。アルコール度数は15度くらいのものから43度程のものまでが一般的ですが、60度の『花酒(はなざけ)』と呼ばれる、スピリッツに分類されるものもあります」。こう教えてくれるのは、100種の泡盛を揃える「沖縄料理専門店 う〜みや」の長倉裕之氏。
泡盛造りの手法は、14〜15世紀ごろにシャム(現在のタイ)から伝わったというのが定説だ。タイ米は日本の米と比べて粘性が低く、スムーズに糖化して、麹を造りやすいのが特徴。黒麹菌は高温多湿に強く、雑菌の繁殖を抑えるクエン酸を多く含み、もろみを腐敗させない働きをする。そしてこの黒麹菌が、泡盛に濃厚で独特な風味をもたらす。

左は、沖縄本島の北にある離島、伊平屋島・伊平屋酒造所の「照島」(30度)。まろやかでバランスのよい味わいが特徴(530円)。中央は、沖縄本島、那覇市・宮里酒造所の「カリー春雨」(30度)。カリー(嘉例)とは沖縄の言葉でめでたいことを指し、祝いの席で飲まれることが多い。なめらかな口当たりが特徴(640円)。右は、沖縄本島、金武町・崎山酒造廠の「赤の松藤」(30度)。甘みがあり飲みやすい(650円)(すべて60ミリリットルの価格)。
泡盛は原料のタイ米のすべてを米麹にして、一度の仕込み(一次仕込み)で蒸留する「全麹仕込み」が大きな特徴。その米麹で造るもろみを蒸留する方法には、伝統的な「常圧蒸留」と、釜のなかを減圧状態にして低い温度で蒸留する「減圧蒸留」がある。前者は多種多様な香気成分やうまみ成分が含まれる個性的な味わいになり、後者は香りが柔らかで淡麗な味わいになる傾向がある。このように、蒸留法によってバラエティーに富んだ味わいが生まれる。
「甕(かめ)や瓶で熟成させて、おいしく育てることができるのも泡盛の魅力です。3年以上寝かせたものは古酒(クース)と表記されます。寝かせた泡盛ほど香りも味も芳醇になり、まろやかになります」と長倉氏。
糖質ゼロでカロリーも少ない酒としても昨今注目される泡盛は、水割り、ロック、ソーダ割り、お茶割りなど、飲み方もさまざま。料理と合わせて楽しみたい。
ベストマッチな3品
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島らっきょう
「島らっきょう」(748円)。島らっきょうは沖縄独自のラッキョウの品種で、小型で香味が強く、シャキシャキとした食感が特徴。合わせたい泡盛は「赤の松藤」(30度)。サトウキビ由来の黒糖酵母を使用した甘みのある味わいが、島らっきょうの辛味をやわらげてくれる。さわやかなソーダ割りで飲むのがおすすめ。 -
ゴーヤーチャンプルー
ゴーヤー(ニガウリ)の苦味、まろやかな島豆腐と卵、スパムのうまみと塩味が混ぜ合わさった沖縄料理の定番(968円)。合わせたい泡盛は「カリー春雨」(30度)の水割り。ふくよかでバニラのような香り、バランスのとれたやわらかな味わいが、ゴーヤーのもつ独特の苦味をマイルドに感じさせてくれる。 -
ラフテー
豚の三枚肉(バラ肉)を下ゆで2時間、黒糖と泡盛を加えた煮汁で煮込むこと4時間。余分な脂が抜けて箸で切れるほど軟らかになった、コラーゲンたっぷりの「ラフテー」(1,045円)。合わせたい泡盛は「照島」(30度)。米の豊かな香りと芳醇な味わいが、ラフテーの濃厚なうまみに負けず、相乗効果でおいしくなる。ロックがおすすめ。
沖縄料理専門店 う〜みや 渋谷道玄坂店

TEL 03-6712-7873
東京都渋谷区道玄坂2-28-1 椎津ビル地下1階
4:00PM~0:00AM(深夜)(料理 ~11:00PM(L.O.)、ドリンク ~11:20PM(L.O.))
不定休
お通し:429円
泡盛と合わせたい2品
沖縄旅行の際や沖縄料理店で飲むことが多い泡盛だが、自宅で楽しむときには、どんな料理と合わせればいいか。
沖縄料理専門店「はりくやまく 西大島店」の平得永弥氏に、おすすめ料理とその作り方を教えてもらった。
「泡盛には、やはり沖縄の料理がマッチします。あっさりとした料理には、すっきりと飲みやすい泡盛を。濃厚な味付けの料理には喉から胸のあたりにかけてゆっくり落ちていくような芳醇な泡盛が合います」と平得永弥(ひらええいや)氏。
沖縄の家庭料理のひとつ「にんじんシリシリ」は、千切りにしたニンジンを溶き卵と炒めるやさしい味わいの料理。「ニンジンを炒めるときに、塩を一緒に入れて水分を出し、ニンジンの甘みを引き出すのがポイントです。よく合う泡盛は『島唄25度』(店内価格グラス・638円)のロック。泡盛のなかでは度数が低い方で、フルーティーで飲みやすいのが特徴。吟醸香やお米の風味がふんわり香り、ニンジンの甘さを引き立てます」。
沖縄の伝統料理や家庭料理に欠かせない食材の豚肉を使ってもうひと品。豚のあばら骨と肉が付いた部位のことを沖縄では本ソーキと呼ぶが、「泡盛を使った本ソーキのカチャトーラ風」は、スペアリブを、ニンニクやハーブ、泡盛とともに軽く煮込んだ料理。沖縄風でもイタリア風でもあるこの料理に合わせたい泡盛は「忠孝よっかこうじ」(店内価格グラス・770円)のソーダ割り。
「アルコール度数は43度と高めですが、フルーティーで華やかな香りとコクがあり、後味はスッキリ。肉料理とよく合います」
沖縄料理は、カツオ出汁や昆布もよく使い、出汁のきいた料理にも泡盛はよく合う。味や香りがそれぞれ異なり、個性豊かな泡盛。好きな銘柄を探して、手作り料理で楽しむのも一興だ。
おばぁ直伝
にんじんシリシリ
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まさひろ酒造 島唄 25度

■材料(1~2名分)
- ニンジン…200グラム(中1本)
- ニラ…20グラム(2~3本)
- サラダ油…大さじ1
- 塩…ひとつまみ
- 顆粒出汁…小さじ2弱
- ツナ缶…30グラム
- 溶き卵…1個分
- しょうゆ…少々
■作り方
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❶ニンジンを、シリシリ器(千切りスライサー)を使って千切りにする。シリシリ器がない場合は、包丁で千切りにする。
❷ニラは4~5センチメートルの長さに切る。 -
❸フライパンにサラダ油を入れて熱し、①と塩を入れて中火で炒め、ニンジンがしんなりしてきたら顆粒出汁とツナ缶を加え、炒め合わせる。味見をして、塩(分量記載外)で味を調える。
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❹②を入れ、溶き卵を流し入れ、中火でサッと炒める。鍋肌からしょうゆを回し入れ、香りが立ったら完成。
泡盛を使った本ソーキの
カチャトーラ風
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忠孝酒造 忠孝よっかこうじ

■材料(1名分)
- スペアリブ…3本(250~300グラム)
- 塩…ひとつまみ
- コショウ…ひとつまみ
- ニンニク(皮をむく)…1片
- ケッパー…5グラム
- ローズマリー…2本
- サラダ油…60ミリリットル
- 泡盛…80ミリリットル
- 酢…10ミリリットル
- 水…180ミリリットル
- ㋐インゲン…2~3本
サツマイモ(薄切り)…2~3枚
赤パプリカ(くし切り)…2~3切れ
ゴボウ(斜め切り)…2~3切れ - バルサミコ酢…適量
- レモン(くし切り)…1片
■作り方
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❶スペアリブに塩・コショウをする。
❷ニンニク、ケッパー、ローズマリー1本を、すべてみじん切りにする。
❸フライパンにサラダ油を入れて熱したら①を入れ、中火でしっかりと焼き色を付けてから②を加える。 -
❹ニンニクが焦げる前に泡盛を加え、フライパンの上で火をつけてアルコール分を飛ばす。※火をつけるのが危険な場合は、そのままでもよい。
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❺酢、水を加え、蓋をして中火で4~5分煮る。
❻鍋に揚げ油(分量記載外)を用意し、㋐の野菜を素揚げする。
❼皿に⑤と⑥を盛り、バルサミコ酢を周りにかける。レモンを添え、ローズマリー1本を飾れば完成。

はりくやまく 西大島店
TEL 03-5875-2725
東京都江東区大島3-1-17
5:00PM~0:00AM(深夜)(~11:30PM(L.O.))(土・祝前日 正午~、日・祝 正午~10:00PM(料理 ~9:00PM(L.O.)、ドリンク ~9:30PM(L.O.))
火曜、12/31~1/3休
お通し:330円

お店のおすすめメニュー
5等級の肉を使用した「石垣牛のあぶり焼き」(2,530円)。脂が多すぎず、甘みのある風味豊かな味わいが楽しめる。合わせたい泡盛は左から、まさひろ酒造「泡盛 まさひろ」、神村酒造「暖流SHIP 30度」、池原酒造「白百合」(30度)。泡盛の価格はすべて90ミリリットル・600円。
おすすめの3銘柄
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長期熟成古酒
久遠宮古島の酒造所、多良川(たらがわ)の優れた長期熟成技術が生み出した「長期熟成古酒久遠(くおん)」(35度)。ふくよかな香りにほのかな甘さが含まれていて、口に含むと上品な辛口が広がり、後味はさわやかで飲みやすいのが特徴。ゆったりとした気分で楽しみたい逸品。飲み方はストレートやロックがおすすめ(375ミリリットル・2,118円、720ミリリットル・4,485円)。
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請福ビンテージ
100% 3年古酒石垣島で1949(昭和24)年に創業した請福(せいふく)酒造の「請福ビンテージ 100% 3年古酒」(43度)。長期熟成に耐えうる“力のある原酒”を造るため原料米、仕込み水、熟成環境を考え抜いて製造。タンクでじっくり熟成されたノンブレンドのどっしりとした味わい。まずはストレートで。ロックにすると華やかな香りがさらに広がり、異なる味わいが楽しめる(720ミリリットル・2,852円)。
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花酒 与那国
クバ巻き日本最西端の島、与那国島にある蔵元で、1927(昭和2)年に創業した崎元酒造所が土地の伝統的な製法で造り出す「花酒 与那国」(60度)。もろみを蒸留させたときの初留液で造る花酒は、アルコール度数が高いので、冷凍庫で冷やしてとろりとさせて飲むと、甘みと芳醇な香りが口のなかに広がる。クバ(ヤシ科の植物)で巻かれたボトルも味わい深い(600ミリリットル・3,960円)。
泡盛ストリート.net
取材・文/土井ゆう子 写真/伏木 博
※価格は消費税込。 L.O.=ラストオーダー
●取材時期:2024年10月上旬 価格など掲載内容は店舗の諸事情により変更となる場合があります。