明治時代より、日本有数の高原リゾートとして知られてきた軽井沢。豊かな自然に囲まれた避暑地で訪ねたい話題のスポットを巡り、軽井沢の“いま”にふれながらその魅力をあらためて体感したい。
2025.2.25
磨かれゆく“アートの街”としての一面
明治時代に避暑地として著名人に知られるようになった軽井沢。美しい自然と景色に魅せられた芸術家がこの地を訪れ、創作活動に熱中したという。いまもその風土は受け継がれ、町には多彩なジャンルの美術館が点在。さまざまなアートとの出合いが期待できる。
まず向かったのは、南軽井沢にある「軽井沢千住博美術館」。国内外で活躍する日本画家・千住 博氏の作品を約50点展示している。滝や崖など自然をモチーフにした作品の魅力をよりいっそう引き立てているのが同館の建築だ。館内に設けられた全面ガラス張りの吹き抜け空間には木々が植栽され、陽光が差し込む造り。さらに既存の地形を生かし、フロア全体が緩やかに傾斜しているのだが、これは軽井沢の自然と自身の作品をどうしても調和させたかったという千住氏の想いからだという。「当館には決まった順路はありません。公園を散策するようにゆっくり作品をご覧ください」と事務長の井出嘉幸氏。ベンチも置かれていて、休憩をはさみながら作品の世界観に浸るのにちょうどいい。
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明るく開放感あふれる展示フロア。作品の一部は毎年入れ替えが行われている。
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第46回ベネチア・ビエンナーレの日本館で代表作品として発表された『The Fall』と映像のコラボレーション。9:40AM~4:40PMの毎時00分、20分、40分に自動上映(動画は年ごとに内容変更)。
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地球や宇宙に生かされている奇跡を表現したという『海と空(2017)』。
同じく南軽井沢にある「軽井沢絵本の森美術館」は、森のなかに3つの展示館と図書館などがあり、世界で最初の絵本といわれる『世界図絵』(第12版)など貴重な作品を鑑賞できる。
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ログハウス風の木造建築が特徴的な第1展示館。階段部分は人気の撮影スポットになっている。
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もともと生えていた植物を中心に、約150種類の植物が育つ、まるで絵本の世界のような「ピクチャレスク・ガーデン」。
「軽井沢ニューアートミュージアム」は、世界で活躍する国内外の作家の作品を鑑賞できる、現代アートの美術館。建築家・隈 研吾氏とフランスの現代美術作家・ジャン=ミシェル・オトニエル氏がコラボレーションした庭園空間が人気で、見学ツアーに参加すれば、その全容を知ることができる。
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「軽井沢ニューアートミュージアム」のチャペル。柱に白樺が使用されており、庭に植林された白樺の林と苔の庭との一体感が生まれるように演出されている。
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ふたつのハートが互いを支えるように立っているオブジェ『こころの門』は、オトニエル氏が手がけた作品で2014年に完成。翌年に奥に見える全面ガラス張りのチャペルが完成した。
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1階には美術や建築に関連する書籍や雑誌などが揃う書店のほか、ミュージアムショップやカフェなどもある。
軽井沢千住博美術館

TEL 0267-46-6565
長野県北佐久郡軽井沢町長倉815
9:30AM~5:00PM ※最終入館は閉館30分前
火曜、12/26~2月末日休 ※祝日、ゴールデンウイーク、7~9月の火曜は開館
入館料:大人1,500円
軽井沢絵本の森美術館

TEL 0267-48-3340
長野県北佐久郡軽井沢町長倉182(ムーゼの森)
3~4月・11~1月 10:00AM~4:00PM、5~10月 9:30AM~5:00PM ※最終入館は閉館30分前
火曜、1/14~3/7、展示入れ替え期間休 ※ゴールデンウイーク期間中および7~9月は無休
入館料:大人1,000円
軽井沢ニューアートミュージアム

TEL 0267-46-8691
長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1151-5
10:00AM~5:00PM(7月中旬~9月中旬 ~6:00PM) ※2階企画展の最終入場は閉館30分前
月曜(祝日の場合は翌平日)休 ※8月は無休
入館料:1階は無料、2階の企画展は大人2,000円(チャペル見学込)
話題の宿で軽井沢のいまにふれる
別荘地から国内有数のリゾートへと発展してきた軽井沢の旅は、優雅な雰囲気がただよう旧軽井沢のホテルを選びたい。
「万平ホテル」は1894(明治27)年に創業し、軽井沢とともに歩んできたクラシックホテル。江戸時代に中山道沿いにあった旅籠(はたご)が始まりだ。創業者の佐藤万平が、故郷で過ごすようにくつろいでほしいとの想いで、宣教師と大学教師のふたりをもてなしたことがホテル開業のきっかけになった。

約130年の歴史を誇る万平ホテルは約1年半の大改修・改築を終え、2024年10月に本格的に営業を再開。3つの宿泊棟のうち、ホテルの象徴である「アルプス館」は、登録有形文化財である外観のデザインはそのままに、耐震補強工事や改修が行われた。メインダイニングルームも改修されたが、ステンドグラスや格(ごう)天井は改修前の姿をとどめている。

「ゲストの皆様にとって印象深いのは、やはり改修工事前のアルプス館ですので、可能な限り、当館らしいしつらえや雰囲気を残しています。“きれいになっているけど、懐かしい”というお声をいただけると、やはりうれしいですね」と取締役支配人の西川眞司氏は語る。中庭が見えるカフェテラスに腰を下ろして、軽井沢に訪れた春を感じてみるのもいい。
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ブルーパープルがテーマカラーの「愛宕館」のグランドプレミアルーム。
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愛宕館は全室温泉風呂付。いつでも湯船でくつろげる。
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ショップではオリジナル商品を販売。トートバッグ(3,000円)、オリジナルブレンドの紅茶(1缶7袋入り・1,300円)、ホテルロゴがモチーフのミントタブレット(1缶・880円)、「伝統のフルーツケーキ」(2,800円)。
「LONGINGHOUSE(ロンギングハウス) 旧軽井沢・諏訪ノ森」は2023年7月に開業。保養所や別荘として利用されていた建物をリノベーションしている。全6グレードの客室は、家具や壁紙、ファブリックなどがすべて異なっているのが特徴。旧軽井沢の森にたたずみ、まるで別荘に滞在しているような居心地のよさに、自然と身も心もほぐれていくだろう。
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テラス付きの「エグゼクティブルーム」。ヨーロピアンテイストの家具が配され、壁紙やファブリックが優しい色あいの優雅な空間。沖縄・久米島沖の海洋深層水を使用したフェイスケアセットやロクシタンのアメニティーも充実。
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全13室の客室棟の1階ロビーはフリースペースで、コワーキングスペースとしても利用できる。
万平ホテル

TEL 0267-42-1234
長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢925
アルプス館 1泊63,250円~、愛宕館 1泊53,130円~、碓氷館 1泊35,420円~(室料・サービス料込・食事別) ※愛宕館宿泊の場合は入湯税150円別
メインダイニングルーム 朝食 7:00AM~9:30AM(L.O.)(冬期 7:30AM~)、ランチ 11:30AM~2:00PM(L.O.)(冬期 正午~)、ディナー 5:30PM~8:30PM(L.O.)
ショップ 8:00AM~8:00PM
無休
LONGINGHOUSE 旧軽井沢・諏訪ノ森

TEL 0267-42-6355
長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢878-2
おひとり様1泊朝食付15,000円~(サービス料込)
“いま”に繋がる、軽井沢彫と “避暑地・軽井沢”の歴史
1886(明治19)年、英国聖公会宣教師のアレキサンダー・クロフト・ショーが避暑のために訪れたのが軽井沢の避暑地としての始まりといわれる。別荘が増えると別荘用家具の需要も急増。欧米からの旅行者は木彫り細工の装飾が施された家具を好んだことから、日光彫の職人たちが軽井沢に招かれ、家具を製作。軽井沢彫の原型が誕生した。

1927(昭和2)年創業の「一彫堂」は軽井沢彫家具の老舗。釘を使用せず、伝統的な組手の技法で家具を組み立てている。「欧米の人たちが帰国の際、分解して持ち帰りやすいようにするためと聞いています」と話すのは、一彫堂の5代目・堀川真太郎氏。西洋文化を吸収しながら伝統工芸品として継承されてきた軽井沢彫を、旅の思い出としてみやげにするのもいいだろう。
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1階と2階に家具をはじめ、みやげにちょうどいい箸やスプーン、写真立てといった小物などが並ぶ。
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創業当時の看板。最初は「上田商店」の屋号で営業していたという。
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自作の彫刻刀を使い、全身を使って丁寧に彫り進めていく。
一彫堂 軽井沢彫家具工房

TEL 0267-42-2557
長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢775
10:00AM~5:00PM
夏期無休 ※冬期不定休
取材・文/粟屋千春 写真/宮地 工
●取材時期:2024年10月上旬 ※価格は消費税込。
※掲載内容は時期や天候、施設の諸事情により変更となる場合があります。