日本酒は同じ蔵の同一銘柄でも「純米大吟醸酒」や「純米酒」、「本醸造酒」、「特別本醸造酒」など、その種類はさまざま。今回は本醸造酒タイプに着目して、味わいの傾向や魅力を紹介する。
2025.1.22
淡麗でまろやか、料理のおいしさを引き立てる
日本酒は普通酒と特定名称酒に大きく分けられる。そして、特定名称酒には米と米麹(こめこうじ)と水で造られる純米酒タイプと、そのほかに少量の醸造アルコールを添加した本醸造酒タイプがある。かつて醸造アルコールが添加されたものは、「アル添酒」とも呼ばれ、ネガティブなイメージをもたれがちだったが、独自の味わいにファンも多く、さまざまな酒蔵が純米酒と本醸造酒、両方のタイプを造っている。
「本醸造酒タイプはすっきりと軽快な味わいで、食中酒に向いているものが多いのが特徴です。一方、純米酒タイプは米のうまみが生きていて、濃醇(のうじゅん)な味わい。しかし、最近は蔵元の創意工夫で、純米酒と同じくらい米のうまみが感じられる濃醇な本醸造酒が生まれていて、注目されています」。こう話すのは日本酒ダイニング「sakeba」の店長で、日本酒利酒師(ききさけし)の前田真吾氏。

添加できる醸造アルコールは、原料となる白米の総重量の10パーセント以下、酒造りの過程で、もろみ(米、米麹、酒母、仕込水を入れて発酵させたもの)を搾る前に添加することが定められているが、その分量やタイミングなどのノウハウは、酒蔵独自のもの。
「例えば『大山 別誂(べつあつらえ)本醸造 生貯蔵 辛口四段仕込み なまちょ』は、醸造アルコールを添加した後に、さらに米のエキスを加えて、米のうまみがより感じられる仕上がりにしています。さらに生の状態で熟成させることで、独自の味わいに仕上げています」
本醸造酒タイプには、精米歩合や製造方法によって、大吟醸酒、吟醸酒、特別本醸造酒、本醸造酒があり、バラエティー豊か。
「純米酒に比べて安価なものが多いのもうれしい点。いろいろ飲み比べてみてはいかがでしょう」
ベストマッチな3品
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真鯛と柴漬けのマリネ
真鯛の刺身に、酸味のある柴漬けと菊の花を散らし、オリーブオイルをかけた前菜(770円)。刺身と柴漬けの組み合わせという、意外性のある料理とペアリングしたいのは「楽器正宗 本醸造 中取り」。フルーティーな味わいが真鯛のほんのりとした甘みを引き立て、後に残る柴漬けの味をきれいに流してくれる。 -
スモーク合鴨とオレンジのサラダ
スモークした合鴨とオレンジ、さらにオレンジソースをかけたひと皿(1,280円)。合わせたいのは「大山 別誂本醸造 生貯蔵 辛口四段仕込み なまちょ」。円熟みとフルーティーで華やかな香りをあわせもち、オレンジソースとよく合う。キレのあるさわやかな後味は、鴨の脂身をすっきりと感じさせてくれる。 -
豚タンの出汁煮込み
豚タンと大根を、昆布とカツオの出汁で煮込んだ料理。ニンニクを漬け込んだ九州産の甘みのあるしょうゆを付けて味わう(990円)。合わせたいのは、米のやさしいうまみがしっかり感じられる「観音下」。コクがありながら重くなく、出汁と一緒に味わうとうまみの相乗効果が楽しめる。45度くらいのぬる燗(かん)で味わいたい。
sakeba
サケバ

TEL 03-6427-9142
東京都渋谷区渋谷3-15-2 F93 Shibuya Ⅱ 7階
5:00PM~11:00PM(料理 ~10:00PM(L.O.)、ドリンク ~10:30PM(L.O.))
年始休
※お通し840円
本醸造酒と合わせたいひと品
家で本醸造酒を楽しむときに合わせたい料理の作り方を、東京・中野「青二才はなれ」のシェフ、西岡蓮太郎氏に教えてもらった。旬の味覚、タラの白子を使った、割烹料理のようなひと品を紹介する。
今回ご紹介するのは、冬が旬のタラの白子を使い、冷めにくく、体が温まる餡(あん)かけにした料理。
「白子も餡もとろんと軟らかな食感なので、白子は衣を付けて揚げて、トロッ&サクッとした食感を楽しめるようにするのがポイントです。小麦粉は水で練るとグルテンが形成され、揚げたてはいいけれど、時間が経つとベチャッとなりがち。時間が経ってもサクッとした衣にするには、薄力粉をまずサラダ油で溶いてから、水で溶くのがコツ。先に油で溶くことで、グルテンが形成されにくくなる性質を利用します」と西岡氏。
今回は餡にライムを加えて、ほのかな酸味と苦味をプラスしているが、ワックス(鮮度保存被膜剤)がかかっていないものであればユズなど、ほかの柑橘類でもよい。
合わせたい本醸造酒は高知県・酔鯨酒造「特別本醸造 酔鯨」(店内価格・90ミリリットル・780円)。酒米を55パーセントまで磨いた雑味のないうまみ、程よい酸味、キレのよさが特徴。「出汁のうまみと柑橘の酸味によく合い、すっきり、さらりとした味わいが揚げ物と好相性です」。
白子とアスパラガスのフリット ライム風味の和風餡かけ
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特別本醸造 酔鯨

■材料(2名分)
- 昆布…10センチメートル角くらい
- 水…500ミリリットル
- 白子…100グラム
- 塩…適量
- 酒…適量
- アスパラガス…2本
- 薄力粉…50グラム
- サラダ油…約40ミリリットル
- 水…70ミリリットル
- ㋐カツオ節…15グラム
みりん…20グラム
酒…12グラム
薄口しょうゆ…10グラム - 塩…適量
- 水溶き片栗粉(片栗粉1:水1)…適量
- 薄力粉(打粉)…適量
- ライム(薄い半月切り)…4~5枚
■作り方
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❶鍋に昆布、水を入れ30分程置いておく。
❷白子の筋を取りひと口程の大きさにカットし、塩、酒を入れた湯(分量記載外)で表面に少し張りが出るくらいにさっとゆでる。湯切りし、冷蔵庫で冷ます。
❸アスパラガスを長さ4~5センチメートルに切る。
❹衣を作る。薄力粉にサラダ油を入れながら混ぜる。トロトロになってダマがなくなったら水を少しずつ加えて溶いておく。 -
❺①の鍋から昆布を取り出して沸かし、㋐を入れ、中弱火でゆっくり加熱する。沸いたら弱火にして1分程煮る。塩で味を調え、水溶き片栗粉でとろみをつける。
❻②の白子と③のアスパラガスに薄力粉をはたき、④の衣にくぐらせ、180~200度の油(分量記載外)でカリッとするまで揚げる。揚がったら軽く塩を振る。
❼⑤の餡を温め、ライムを入れて軽くなじませる。器に⑥を盛り付け、餡をかけたら完成。

青二才はなれ
TEL 03-6881-0886
東京都中野区中野3-35-5
5:00PM~翌1:00AM(料理 ~0:00AM(深夜)(L.O.)、ドリンク ~0:30AM(深夜)(L.O.))(土・日・祝 4:00PM~)
月・火休

お店のおすすめメニュー
「鮭のムニエル トマトクリームソース」(1,980円)。鮭の皮目をパリッと香ばしく焼き、なかは半生。キノコのソテーを添えたひと品。
おすすめの2銘柄
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農口尚彦研究所 本醸造 無濾過生原酒
伝説的造り手、農口尚彦氏率いる石川県・農口尚彦研究所による逸品。福井県産五百万石を60パーセント精米して醸し、1年半以上熟成。マスカットのような華やかなニュアンスで、キメが細かく滑らかな口当たり。凝縮感のあるうまみとドライな余韻が楽しめる。
度数19度(720ミリリットル・2,200円、1.8リットル・4,400円)。 -
新澤醸造店 愛宕の松 別仕込み本醸造
2019年、入社3年目の22歳で杜氏に抜擢された渡部七海氏を筆頭に、若き蔵人が集まる蔵元が醸す一本。バナナのように穏やかな含み香があり、口当たりは軽快。キレもよく、さっぱりとした後口で、料理の味わいを引き立てる。精米歩合60パーセント、度数15度。受賞歴多数でコスパのよい万能酒(1.8リットル・2,200円)。
酒専門店鍵や
取材・文/土井ゆう子 写真/伏木 博
※価格は消費税込。 L.O.=ラストオーダー
●取材時期:2024年8月下旬 価格など掲載内容は店舗の諸事情により変更となる場合があります。