日本のおいしいものを紹介する旅。
今回は岐阜県と滋賀県から。
その町から生まれたおいしいものが、
地元で愛される味になるまでを紹介します。
2024.12.24
肉料理
長良川に臨む和風別荘で
鉄板焼ステーキを味わう
岐阜市内を流れる一級河川、長良川。1300年以上の歴史をもつ「鵜飼」で知られ、夏のシーズンにはその伝統漁法を見物しに多くの観光客が訪れる。長良川中流に位置する鵜飼の漁場周辺には、川岸に鵜飼観賞を楽しむための宿が数軒立ち並び、そのなかに食事処の「お座敷肉料理 潜龍」がある。
鮎で有名な長良川沿いにありながら、和の伝統美にあふれたお座敷でステーキや網焼き、鍋などの肉料理が味わえる、一風変わった趣向がこの店の魅力。これまで、料理、空間、もてなしに一流を求める地元の人たちの間で長く親しまれてきた。「松阪地区をはじめとする三重県内の契約牧場で育てられた雌の黒毛和種の肉を、独自技術で熟成させた“潜龍牛®”を提供しています」と話す代表取締役の平野道弘氏は、この店で40年以上肉を焼いてきたトップシェフ。創業者の意思を深く理解した人たちによって、潜龍独自の空間と味が守り継がれている。
「お座敷肉料理 潜龍」から歩いてすぐの長良川沿いにある、長良川うかいミュージアム(9:00AM~7:00PM、無休(10/16~4/30 ~5:00PM、火曜、年末年始休))は、例年5月11日~10月15日に開催される長良川の鵜飼について季節を問わず学べる施設。
お座敷肉料理 潜龍(せんりゅう)
TEL 058-231-1151
岐阜市長良14
東海北陸自動車道岐阜各務原ICから約20分
JR東海道本線・高山本線岐阜駅から車で約15分
11:30AM~9:30PM(最終入店8:00PM)
月・火休(祝日の場合は営業)
料亭 和ぷりん
助六自慢のだしを使った
新しい味わいのプリン
城下町として栄えた大垣市街は、近代に紡績の街としてもにぎわい、大垣城周辺には芸者の置屋が並ぶ花街が広がっていたという。いまはその面影を見せる場所も少ないが、1950(昭和25)年より続く「粋料亭 助六」のなまこ壁がそのころの様子をわずかに感じさせる。
例年5月10日から8月10日の「鮎懐石」(8,800円〜)や11月の「飛騨牛懐石」(11,000円〜)など、岐阜の食材を使った季節の料理が評判の粋料亭 助六。この店の「料亭 和ぷりん」が「日本プリンアワード2023グランプリ」に選ばれ話題となった。料亭の命ともいえる“だし”をジュレにして豆乳仕立てのプリンにかけ、黒豆をあしらったもの。昆布とカツオの香りやうまみがしっかり感じられるのに、料理ではなく見事なスイーツに仕上がっている。「お客様が『助六のだしがおいしい』といってくださるので、丁寧に作り続けてきただしがこのようなかたちで親しまれるようになってうれしい」と話すおかみの中村智景氏。日本の伝統を大切にしつつ生み出されたスイーツが、大垣へ新たな人の流れを呼んでくれる。
「粋料亭 助六」から徒歩約3分の大垣城は、4層の天守をもつ大垣のシンボル。1945(昭和20)年に戦火で焼失したが、1959(昭和34)年に再建。現在、天守内部では関ヶ原合戦と大垣城についての資料などを展示するほか、最上階は展望室になっている。
粋料亭 助六
TEL 0584-81-1290
岐阜県大垣市高砂町1-20
名神高速道路大垣ICから約15分
JR東海道本線大垣駅から徒歩約5分
11:30AM~2:00PM(L.O.)、5:30PM~10:00PM(L.O.)
日・月休
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「料亭和ぷりん」(6個・4,150円)のほか、焼いた状態で真空パックされているので温めてすぐ食べられる「銀むつ西京焼き」(4切・5,400円)、岐阜産鮎の「鮎山椒煮」(6匹・5,400円)など料亭の味をご自宅で。
取材・文/山下あつこ
写真/シンヤシゲカズ
※価格は消費税込。 L.O.=ラストオーダー
フグ料理
絶品の炙りが堪能できる
3代目自慢の名物コース
大津市の瀬田川のほとりに鎮座する石山寺(いしやまでら)は、紫式部が参籠(さんろう)中に『源氏物語』を起筆したという逸話が伝わり、多くの文人が訪れる文学の寺としても知られている。
「当店は門前の茶店として創業。1908(明治41)年からは旅館を営んでいました」と話すのは、3代目当主の和田 博氏。「京都の老舗で修業後に戻り、1985(昭和60)年から日本料理店に。鮎や近江野菜といった湖国の旬の食材を用いる懐石料理でお客様をおもてなししています」と続ける。
年中味わえる四季折々の鍋料理も名物で、冬は和田氏自慢のフグ料理がおすすめだ。てっさ(フグ刺し)、てっちり(フグ鍋)といった料理が供されるコースのなかでも、タレにくぐらせた大ぶりの身を七輪で炙って食べる焼きフグは絶品。「部位は骨を取り除いた上身や、ゼラチン質をたっぷりと含んだ『とおとうみ』など。フグの味わいとともに、部位ごとの食感も楽しめます」と和田氏。多彩な品々で多くのリピーターに愛される同店のフグ料理は、毎年10月中旬から3月中旬に注文できる。
聖武天皇の勅願で良弁僧正が建立した石山寺は、観音霊場として信仰を集め、平安時代は貴族の石山詣が盛んに。県内最古の木造建築物とされる国宝の本堂に安置されている本尊・如意輪観世音菩薩は日本唯一の勅封の秘仏といわれる。
日本料理 新月
TEL 077-537-1436
滋賀県大津市石山寺1-3-3
名神高速道路瀬田東ICから約5分
京阪石山坂本線石山寺駅から徒歩約10分
11:30AM~3:00PM、5:00PM~9:30PM(完全予約制)
火曜休(祝日の場合は営業)
近江牛焼肉
“本物”の味をシンプルに
コースでは稀少な部位も
「近江牛」は滋賀県内で最も長く飼育されてきた黒毛和種のことで、当地を代表する食材のひとつとして知られている。JR草津駅の近くに店を構える「近江牛焼肉百々一」は、そんな近江牛のなかでもとくに品質が高い、認証近江牛のみを使用する焼肉店だ。
「数種類の肉や焼きしゃぶを中心に、前菜からデザートまで味わえるコースが基本です」と話すのは、代表の中嶋祐樹氏。肉はフィレやサーロインをはじめ、外モモのマクラ、後ろ脚のつけ根にあたるカメノコなど、一頭からわずかしか取れない赤身の部位も供される。「認証近江牛はどの部位の味わいも一級品。塩、ワサビ、タレを用意していますが、まずは塩でシンプルに味わっていただければ」と中嶋氏。認証近江牛のタンも流通量が極めて少ない部位で、「コースによってはタン元だけを使った厚切りタンを堪能していただけます」とおすすめしてくれた。
趣向を凝らした品々は地元の野菜や米、調味料などをふんだんに使っている。コースを通して、近江牛だけではない滋賀県の食材の豊かさも感じられるだろう。
関西のベッドタウンとして発展する草津市は江戸時代、東海道と中山道が分岐合流する草津宿として栄えた。大名などが休泊した本陣としては全国最大級の史跡・草津宿本陣(2025年3月まで耐震工事のため休館)や歴史資料館が当時の様子を伝えている。
近江牛焼肉 百々一(どどいつ)
TEL 077-598-6855
滋賀県草津市大路1-2-8
名神高速道路栗東ICから約12分
JR東海道本線(琵琶湖線)草津駅から徒歩約3分
5:30PM~11:00PM(土 5:00PM~10:00PM、日・祝 5:00PM~9:00PM)、ランチ 11:30AM~2:30PM(土・日・祝のみ) ※各最終入店は閉店1時間30分前、ラスト
オーダーは閉店1時間前
月曜(祝日の場合は翌日)休
取材・文/mado.lab 写真/合田慎二
※価格は消費税込。
●取材時期:2024年8月上旬 ※価格など掲載内容は施設や店舗の諸事情により変更となる場合があります。
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