散歩やトレッキング、ハイキングとともに、バードウォッチングを楽しむ人が増えている。気軽に始められるが実は奥が深いバードウォッチングの魅力を、まずはそのイロハから紹介する。
2024.12.24
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バードウォッチングをおすすめしたい7つの理由
1 四季を通じて楽しめる
野鳥には、スズメのように一年中日本で見られる「留鳥(りゅうちょう)」、ツバメのように春から夏にかけてやってくる「夏鳥(なつどり)」、白鳥のように秋から冬にかけて越冬のために日本に来る「冬鳥(ふゆどり)」、春や秋に日本に立ち寄る「旅鳥(たびどり)」などがいる。さらに迷ってやってくる「迷鳥(めいちょう)」もいて、季節を問わず、さまざまな鳥を見ることができる。なかでも冬季は、木々の葉が落ちて見つけやすくなるうえに、ふだん標高の高い場所にいる鳥が、平地に降りて近所の公園にやってきたり、水辺ではカモ類を多く見ることができたりと、身近に野鳥が増える。バードウォッチング初心者がトライするには最適な時期といえる。
2 場所を問わず楽しめる
野鳥は日本中どの地域にも生息し、バードウォッチングは場所を問わず、どこでも楽しめる趣味。里山や野原、高山、川や池・湖沼・海岸や干潟などの水辺、そして都会の真ん中にも、それぞれの環境に適応する野鳥が生息している。
ふだんの暮らしのなかで、野鳥を見つけるために必要なことは、まず「意識する」こと。全国的に身近で、初心者でも見つけやすい野鳥に、シジュウカラ、ジョウビタキ、ヒヨドリ、ムクドリなどがいて、意識しないと見つけにくい野鳥には、メジロ、モズ、ハクセキレイなどがいる。水辺では、サギやカワウ、カワセミなどを見ることができる。
3 散歩やハイキングとともに楽しめる
健康のために散歩やウォーキングを習慣としている人は多いだろう。散歩がてら、気軽にバードウォッチングを楽しむのもおすすめだ。決まった散歩コースでも、遭遇する鳥の種類の変化で、季節の移り変わりを感じたり、思わぬ鳥に出合ったりすることができる。バードウォッチングに最適な時間帯は、多くの野鳥の動きが活発になる早朝と夕方。散歩の時間にぴったりといえる。
豊かな自然のなかを歩くトレッキングやハイキングでは、バードウォッチングとともに、草花や野生動物の痕跡が楽しめる。森のなかで響く鳥たちの鳴き声を頼りに、その姿を探してみよう。
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シジュウカラ
庭にもやってくるおなじみの野鳥。
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ジョウビタキ
庭にもやってくる冬の人気者。
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ルリビタキ
冬の雑木林でおなじみ。
4 旅とからめてさらに楽しめる
日本にいる野鳥の種類は700種程といわれているなかで、ある一定の地域に生息する鳥がいる。例えば冬の北海道(主にオホーツク圏)で見られるオオワシ、沖縄本島北部でしか見ることができないヤンバルクイナなど。探鳥(たんちょう)と旅をからめて楽しむスタイルは、ひとつのトレンドといえる。旅先は日本にとどまらない。鮮やかな色と長い飾り羽をもつケツァールを見るために、コスタリカへ行くという愛好家も。また、ライフリスト(自分が生涯に見た鳥の種類を記録したもの)を充実させることを目的にした旅もある。
5 予算に合わせた楽しみ方がある
コストをかけずシンプルに、家の近所にやってくる野鳥を眺めて楽しむスタイルがある一方、双眼鏡やカメラに凝ったり、珍しい鳥を求めて旅に出かけたりと、予算のかけ方にかかわらず、それぞれのスタイルで楽しめる。
近ごろの傾向としては、個人でも写真をSNSにアップするなど、発表の場があることから、カメラに凝る人が多い。最新のカメラには、自動で鳥を検出して鳥の瞳にピントを合わせる、鳥認識オートフォーカス機能が搭載されているものがある。また、双眼鏡にカメラ機能が付いたものもある。
6 道具に凝らなくても楽しめる
道具に凝る人は多いが、基本的には図鑑を一冊くらい持っていればバードウォッチングは楽しめる。自宅の庭に草木を植えていたり、ベランダに鉢植えがあれば鳥はやってくるし、ミカンやリンゴを枝に刺して置いておくと、それを食べに野鳥がやってくる。トレーや皿に水を入れて、水場を作っておくのもおすすめ。自宅の庭なら双眼鏡がなくても、肉眼で鳥を見ることができる。
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メジロ
木の実を求めてやってくる。
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ミコアイサ
公園などで見られる。
7 鳴き声を聞く楽しみもある
バードウォッチングは鳥を見る趣味だが、鳴き声を聞く楽しみもある。スマートフォンなどで録音してBGMにしたり、着信音にしたりするのは、静かなブームだ。また、鳥の鳴き声を覚えることはバードウォッチングでは重要なこと。愛好家が鳥を探す行為は、目で探していると思われがちだが、実は声で探している。鳥の声がリサーチできるサイトや図鑑もあるので、参考にしてみてはいかがだろうか。
教えてくれたのは

石田光史氏
いしだこうじ
プロバードガイド、野鳥写真家
「イーグルアイ」と称されるずば抜けた動体視力を生かし、山野から外洋まで幅広く活動。とくに日本近海での海鳥観察のガイドに定評があり、ふだんなかなか行く機会がない海域でのガイドの経験も豊富。著書に『ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑』(ナツメ社・65ページ参照)、『旬の鳥、憧れの鳥の探し方』(文一総合出版)などがある。
ガイド付観察ツアーに参加してみた
はじめは鳥を見つけること自体に苦労しがちだが、ガイド付観察ツアーなら、ガイドがサポートして、その生態や魅力も解説してくれる。バードウォッチングへの興味が深まり、より楽しさが実感できる。

今回参加したのは、長野県の「軽井沢野鳥の森」で、野生動植物の専門家集団「ピッキオ」が年間を通して催行する自然観察ツアー「野鳥の森ネイチャーウォッチング」。木々の葉が落ちて鳥の姿が見やすくなる冬から、鳥たちにとって恋の季節となる春は、野鳥観察におすすめのシーズンだという。
集合は「ピッキオ野鳥の森ビジターセンター」。スノーブーツや双眼鏡はレンタルできるので、防寒にさえ気を付ければ気軽に参加できる。取材当日の午前10時からのツアーのガイドは、橋本奈央子氏ほか2名。双眼鏡の使い方のレクチャーの後、いよいよ出発だ。
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ガイドの橋本氏。上着のポケットから図鑑やタブレットPC、小鳥のぬいぐるみなど、いろいろなグッズを取り出して、自然のあれこれをわかりやすく解説してくれる。
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ツアーに持参したい3点セット。観察した生き物の種類や場所を記録するフィールドシート(参加者に無料配布)と野鳥図鑑、双眼鏡(レンタル料300円)。
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実物大で重さも忠実に再現しているシジュウカラのぬいぐるみ。森で見かけたときに、橋本氏がポケットから取り出し参加者に回し、実際の大きさや重さを体感させてくれる。
ケラ池の縁を歩くと雪を被(かぶ)った浅間山が見える。標高約1000メートルの森のなかの小径を静かに歩いていくと、「チュイーン」「ジュジュ」「フィッ」など、小さく呟くような鳥の鳴き声が聞こえる。初心者は鳥の声を聞いても、どこにいるのかわからないが、ガイドは鳴き声からその姿を見つけ、「あそこにいますよ」と教えてくれる。それでも、なかなか見つからず、ガイドに望遠鏡で捉えた姿を見せてもらうと「本当だ」となる。
「生き物たちはいま、冬越し大作戦を実行中です。極寒のシベリアから飛来して日本で越冬する渡り鳥。一年中いる留鳥は、種類に関係なく群れを作って行動するようになり、一度に多くの鳥が見られる確率が高まります」と橋本氏。
冬に観察が楽しめる野鳥たち
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ウソという名前の鳥。細くて高い口笛のような鳴き声で、オスは頬から喉にかけてきれいなピンク色。ぷっくりした姿が愛らしい。
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ほんのりとしたピンク色がきれいなオスのベニマシコ。明るく開けた場所を好む。
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青と黄色のコントラストがきれいなルリビタキ。シベリアから渡ってくるものと、高地から低地に下りてくるものの2タイプがいる。
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冬はほかの種類の鳥と群れを作って行動するシジュウカラ。白い頬と黒いネクタイがトレードマーク。
きれいな色のオスのルリビタキやベニマシコは、バードウォッチャーに人気の鳥。自分の双眼鏡で捉えることができるとうれしくなる。カラ類の混群に遭遇したときも、じっくり観察する。地面に落ちた枯れ葉をひっくり返して何かを食べているシジュウカラ、木の幹を忙しなく上り下りし、樹皮や枯れ枝の割れ目を突っついているゴジュウカラなど。
地面に動物の痕跡を見つけたときは、橋本氏がタブレットPCを取り出して、その動物が夜間に歩いている映像を見せてくれる。いまは冬眠中のクマだが、木の幹にくっきりと刻みつけられた爪痕も教えてくれた。
約2キロメートルのコースを、要所要所で立ち止まり、2時間程かけて歩くツアーは、新しい発見がいっぱい。バードウォッチングへの興味がますます湧いてくる。
野生動物の痕跡を辿るツアーもある
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森のなかの道なき道をゆく「けもの道ウォーキング」というツアーもあり、ニホンカモシカに出合うこともある。足跡などの痕跡なら「野鳥の森ネイチャーウォッチング」でも見ることができる。
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運がよければリスに出合えるかも。
ピッキオ

TEL 0267-45-7777
長野県北佐久郡軽井沢町星野
9:30AM~4:00PM(カフェ 10:00AM~3:30PM(L.O.))
※野鳥の森ネイチャーウォッチング(所要約2時間)
10:00AM~正午(3/16~11/30は1:30PM~3:30PMも開催)
2025年1/14~17、1/20~24、3/3・4休
ツアー料金:大人2,500円~(参加日によって異なる)
取材・文/土井ゆう子 写真/石田光史、伏木 博
●取材時期:2024年8月下旬 ※価格は消費税込。 ※価格など掲載内容は時期や施設、店舗の諸事情により変更となる場合があります。