あえて手間と時間をかけて楽しむアナログレコード。近年、その魅力が再注目されている。レコードを趣味にするにあたってチェックしておきたい、レコードならではの音質で聴きたい名盤と、さらに幅広くなりつつある昨今のオーディオ機器事情を紹介する。
2024.12.13
アナログでこそ聴きたい名盤たち
すぐそばで演奏したり、歌ったりしているような空気感が感じられるというアナログレコード。「HMV record shop 渋谷」で、比較的入手しやすく、アナログでこそ聴きたい名盤を4つのジャンルからセレクトしてもらった。
JAZZ(ジャズ)
PHAROAH SANDERS / KARMA
ファラオ・サンダース/ カーマ(カルマ)
サックス奏者ファラオ・サンダースによるスピリチュアル・ジャズ。咆哮(ほうこう)するサックスの音色と、独特のヴォーカルが交錯し、ゆったりとしたリズムのなかに、壮大なスケールを感じさせる(4,200円)。
Bill Evans Trio / Waltz for Debby
ビル・エヴァンス・トリオ / ワルツ・フォー・デビイ
ジャズピアニストのビル・エヴァンスが、ベーシストのスコット・ラファロ、ドラマーのポール・モチアンと1961年に行ったライブを収録。レコードに閉じ込められた時代の雰囲気に痺れる(5,759円)。
MILES DAVIS / ROUND ABOUT MIDNIGHT
マイルス・デイビス / ラウンド・アバウト・ミッドナイト
ジャズ界の帝王といわれるトランペッター、マイルス・デイビスの傑作。コロムビア移籍第一弾で、1950年代のジャズを代表する名盤。マイルスの奏でるミュート・トランペットの音色が、深く心に染み入る(2,488円)。
SOUL(ソウル)
FUNKADELIC / MAGGOT BRAIN
ファンカデリック / マゴット・ブレイン
哀愁漂うギターが聴きものの「マゴット・ブレイン」を筆頭に、ロック色を強めたファンカデリックの傑作アルバム。心揺さぶる突き刺さるようなサウンドは、音の範囲が広いレコードでぜひ(4,139円)。
Curtis Mayfield / CURTIS
カーティス・メイフィールド / カーティス
1970年発表のカーティス・メイフィールドのソロアルバム。独特のギターとファルセットボイス、シンセ・ベースやコンガが融合するサウンドは、ボリュームを上げたときに気持ちよく響くアナログで聴きたい(2,680円)。
jackson5 / ABC
ジャクソン ファイブ / エー・ビー・シー
1970年代を席巻した若さと躍動感あふれるポップなソウル。幼いマイケル・ジャクソンの潑剌(はつらつ)としたヴォーカル、抜群のコーラスワークを、アナログ特有の艶のある音で堪能したい(2,680円)。
ROCK(ロック)
PINK FLOYD / THE DARK SIDE OF THE MOON
ピンク・フロイド / ザ・ダークサイド・オブ・ザ・ムーン
ピンク・フロイドが1973年に発表した伝説的なアルバム。鼓動のようなドラム音、人の笑い声やレジスターの音などを入れたテクニカルなサウンドは、細やかな音まで奏でるレコードで楽しみたい(4,524円)。
JONI MITCHELL / BLUE
ジョニ・ミッチェル / ブルー
シンガーソングライター、ジョニ・ミッチェルが1971年に発表したブルー。透明感のある歌声は、すぐそこで歌ってくれているような臨場感。ギターやピアノ、ダルシマー(弦楽器の一種)の響きも印象深い(4,689円)。
THE BEATLES / Abbey Road
ザ・ビートルズ / アビイ・ロード
ザ・ビートルズの実質的ラストアルバム。有名な横断歩道を横切る写真のジャケットは、LPだからこそのサイズがインパクト大。すべてが名曲だが、A面、B面でガラリと変化するサウンドも魅力(5,646円)。
Japanese Music(邦楽)
金延幸子 / み空
かねのぶ さちこ / みそら
日本の女性シンガーソングライターの草分け的存在である金延幸子のアルバムを、発表から50年を経てアナログ化。透明感のある作風、澄んだ歌声とアコースティックギターの魅力があふれる一枚(4,070円)。
TAEKO OHNUKI / SUNSHOWER
おおぬき たえこ/サンシャワー
1977年発売。坂本龍一が全曲をアレンジし、ドラマーのクリストファー・パーカー、バックヴォーカルに山下達郎と、気鋭のミュージシャンが多数参加した大名盤。大貫妙子の伸びやかな歌声を堪能したい(4,400円)。
山下達郎 / FOR YOU
やました たつろう/フォー ユー
1976〜1982年にリリースした名曲の2023年リマスター&カッティング盤。温かく優しい、オリジナル盤に近い音と、ポップなイラストのジャケットは、レコードで持っておきたい1枚(4,400円)。
※価格は消費税込。 ※価格は8月下旬時点のものです。時期によって変更の可能性があります。
おすすめレコードショップ
[東京]HMV record shop 渋谷
“レコードの聖地”と呼ばれる渋谷区宇田川町にあるアナログレコードとCDの専門店。1960〜1990年代の作品を中心に、バイヤーが海外で買い付けたレア盤や名盤を豊富に揃えている。
TEL 03-5784-1390
東京都渋谷区宇田川町36-2 ノア渋谷1・2階
11:00AM〜9:00PM(年末年始は変更あり)
1/1休
HMV record shop ONLINE
[東京]Manhattan Records マンハッタン レコード
創業40年以上の歴史を誇るヒップホップ、R&Bなどのレコードを中心に販売する専門店。渋谷系ムーブメントや日本のヒップホップシーン興隆の一翼を担い、東京のレコードカルチャーを世界に向けて発信し続けている。
TEL 03-3477-7166
東京都渋谷区宇田川町10-1 木船ビル1階
正午〜8:00PM(年末年始は変更あり)
1/1休
[東京]Coco-isle Music Market ココアイル・ミュージック・マーケット
ジャマイカン・ミュージック全般を揃え、レゲエ・ミュージックに影響を与えたソウルやリズム&ブルース、カリプソのLPも充実。アナログ盤は「KAWAMOTO AUDIO」制作のサウンド・システムで試聴可能。
TEL 03-3770-1909
東京都渋谷区神南1-3-2 不二ビル4階
正午〜9:00PM
火曜、年末年始休
[大阪]FLAKE RECORDS フレイクレコーズ
世界中からセレクトした最新の音楽を紹介するレコード&CDショップ。とくに海外のインディーズバンドに強い。中古は取り扱いがなく、新譜のみを販売。商品すべてにコメントが付き、試聴機も豊富に用意している。
TEL 06-6534-7411
大阪市西区南堀江1-11-9 SONO四ツ橋ビル2階 201号
正午〜8:00PM(日 〜6:00PM)
年末年始休
いま、知りたいオーディオ機器事情
レコードを聴くとき、まず必要になるのがレコードプレーヤーだが、機種によって機能や性能の違いも多く、選ぶのが難しい。おすすめ機器について「アバック新宿」店長の明石昌洋氏に教えてもらった。
アナログレコード 基本のセット
レコードプレーヤー
レコードプレーヤーは、レコードをのせて回転させるターンテーブル、レコードに刻まれた音溝の振幅を拾うカートリッジ、カートリッジが付けられたトーンアームで構成されている。回転ムラが少ない「ベルトドライブ式」、回転と停止がなめらかな「ダイレクトドライブ式」があり、スピーカー内蔵モデル、Bluetooth®対応モデルなどもある。こういったタイプであれば、アンプがなくても、すぐにレコードを聴くことができる。
アンプ
アンプとは音の増幅装置のこと。プレーヤーが出力できる音の信号は小さく、アンプを利用することで、好みの音量や音質に調節できるようになる。最近では、ストリーミング再生やテレビのHDMI出力を入力できるものがトレンドで、そのほとんどはトランジスタ(半導体)を用いて増幅するアンプ。オーディオマニア憧れの真空管アンプもある。
スピーカー
アンプで増幅された電気信号を、空気の振動に変えて音に変える装置。スピーカーのなかにアンプを内蔵しているアクティブスピーカーと、外部にアンプを必要とするパッシブスピーカーがある。音楽を楽しむなら、左右にスピーカーを配置するステレオが基本。これに低音域を担当するウーファースピーカーを組み合わせた「2.1ch」などもある。
ヘッドホン・イヤホン
スピーカーを小型にして、耳元に取り付けたようなもの。ヘッドホンは耳を覆うようにして装着するタイプで、迫力のある重低音が体感できる密閉型と、軽快な装着感の開放型の2種類がある。イヤホンは耳にかけたり、耳の穴に装着したりするリスニング機器で、コンパクトで持ち運びやすいのが特徴。いずれも現在は、ワイヤレスが主流。
SET A 入門にぴったりのシンプルなセット
レコードプレーヤーにはスピーカーまで内蔵したオールインワンタイプのプレーヤーもあるが、拡張性を考慮すれば、スピーカーは別のものにしておきたい。入門編としてはBluetooth®接続可能なモデルからのスタートがおすすめ。ワイヤレススピーカー、ワイヤレスヘッドホンとの接続で、簡単にアナログレコードの音が体感できる。
Bluetooth®機能搭載ターンテーブル & ワイヤレスヘッドホン or ワイヤレススピーカー
SET B 迫力ある音を手軽に味わえるセット
カートリッジ付きで、フォノイコライザーを内蔵。フォノ入力をもたないアンプとも接続できるプレーヤーは、導入ハードルが低く、初心者からマニアにまで対応。アンプ内蔵のアクティブスピーカーとの接続で、シンプルなシステムを構築できる。
カートリッジ付属+フォノイコライザー内蔵ターンテーブル & アンプ内蔵スピーカー
SET C 音質を追求するこだわりのセット
アナログレコードの魅力を存分に楽しむなら、アンプに繋いで、スピーカーで聴くというスタイルがおすすめ。アンプとスピーカーの組み合わせは種類が多く、カートリッジ、リード線など、こだわりポイントは多数ある。専門店に相談しよう。
ターンテーブル+カートリッジ & アンプ & スピーカー
アバック新宿
オーディオ・ビジュアル、ホームシアター機器の専門店。店内には、2種類のシアタールームと、複数機材の比較試聴が可能なAVアンプ、スピーカー展示コーナーがあり、本格派向けの上位機種が多数。エントリーモデルは、ウェブショップで販売している。
TEL 03-5937-3150
東京都新宿区西新宿7-5-9 ファーストリアルタワー新宿3階
11:00AM〜7:00PM(要来店予約)
水曜、年末年始休 ※ほか夏季休業あり
アバック ウェブショップ
取材・文/土井ゆう子 写真/伏木 博
●取材時期:2024年5月中旬 ※価格は消費税込。 ※サイズのWは幅、Hは高さ、Dは奥行き。 ※価格など掲載内容は施設、店舗の事情により変更となる場合があります。