1989年に運行を開始し、大阪と札幌を結んだ寝台特別急行列車「トワイライトエクスプレス」。一世を風靡したが、約26年間で歴史に幕を閉じ、その伝統は、特別な寝台列車「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」に引き継がれた。目的地を山陽・山陰地方に変え、ホテルのような上質な空間から車窓風景を眺めたり、沿線の食材を使った料理を味わったりしながら、特別な旅を堪能できる。
2024.11.25
ホテルのような上質空間で心休まる懐かしさに浸る
2015年までの約26年間、日本の豪華寝台特急の先駆けとして大阪〜札幌間を走ったトワイライトエクスプレス。その後継として2017年にデビューしたのが、特別な寝台列車の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風(トワイライト エクスプレス みずかぜ)」(以下「瑞風」)だ。
「瑞風」の車両は、洗練された上質さと、懐かしさを感じさせるノスタルジック・モダンを意識したデザインを採用。インテリアは、昭和初期にはやったアール・デコ調を基調とし、先頭車には丸目のヘッドライトや往年のボンネット型を彷彿(ほうふつ)とさせる運転室を配置。懐かしさを演出している。
「瑞風」は10両編成。両端の1号車と10号車が展望車、5号車がラウンジカー、6号車が食堂車、2〜4号車と7〜9号車に客室が配されている。客室は「ザ・スイート」、「ロイヤルツイン」、「ロイヤルシングル」の3ランク。ザ・スイートは7号車のみに設けられたぜいたくな空間だ。
乗車初日にはラウンジカーで「瑞風茶会」が行われ、季節の和菓子と薄茶を味わいながら、「瑞風」のおもてなしを体感できる。ラウンジカーは「サロン・ドゥ・ルゥエスト」と名付けられている。フランス語で「西のサロン」という意味。トワイライトエクスプレスのサロンカーにあった「サロンデュノール(北のサロン)」を、「瑞風」の運行区間に合わせた名称になっている。
食堂車の名はトワイライトエクスプレスと同じ「ダイナープレヤデス」。オープンキッチンから伝わる調理のライブ感を楽しみつつ、車窓風景を眺めながら、「瑞風」ならではの食を満喫できる。
TWILIGHT EXPRESS 瑞風

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展望車は1号車と10号車。窓が大きく開放的で空まで見渡せる。展望車には展望デッキが設けられ、最後尾は展望デッキに出ることができる。
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ラウンジカーで開催される「瑞風茶会」。2017年の運行開始時から続けられ、テーブルと椅子を使った立礼(りゅうれい)式だ。沿線ゆかりの道具を使った点前(てまえ)を通じて、「瑞風」のおもてなしの心を伝える。
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「ザ・スイート」(7号車)のリビング。ダイニングテーブルとソファが置かれ、床から天井まで広がるガラス面から車窓風景を楽しめる。
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食堂車での食事の一例。国際的に注目されているシェフ、米田 肇氏監修の西洋料理。
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車内で調理される料理は、フードコラムニスト・門上武司(かどかみたけし)氏プロデュースのもと、錚々(そうそう)たる料理人が監修する。沿線の食材がふんだんに使われるのも特徴のひとつ。
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両側に大きな窓が設けられた食堂車。
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木を多用した落ち着いた空間のラウンジカー。ブティックスペースも備えている。
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収納式のベッドを広げた、夜の「ロイヤルツイン」。
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昼のロイヤルツイン。広いリビングスペースでゆったり過ごせる。インテリアには沿線の伝統工芸品を使用。
車窓に広がる季節の色彩と、特別な体験
「瑞風」は京都〜下関・下関〜京都を、山陽本線や山陰本線などを経由して走るので、山陽・山陰地方の多彩な景観を眺められるのも醍醐味だ。コースによっては瀬戸内海や日本海の眺めが楽しめ、歴史的建造物や町並みを近くで見ることもできる。客室や食堂車などから車窓を眺めると、まるで額縁に入った絵画のような、季節の色に彩られた風景が移り変わっていく。朝日や夕日、夜空など、刻々と表情を変える車窓風景に酔いしれたい。
展望車からは、よりダイナミックな車窓風景を眺められる。車内は空まで見える開放的なつくりで、時季によっては、月や星空を愛でられる。最後尾の展望車はデッキに出ることができ、吹き抜ける風の強さに驚くだろう。デッキに立っているとまるで線路の上にいるかのような視点で景色を楽しめるという、特別な体験ができる。
車窓から見えるのは景色だけではない。停車駅や沿線から、「瑞風」に向かって手を振り、おもてなしの気持ちを伝えるスタッフたちの姿を見れば、心が温まるだろう。
いつまでも乗車していたい「瑞風」だが、途中駅で降車して、沿線の魅力を体感できるのも楽しみだ。停車駅を起点に、「瑞風」の乗客専用の「瑞風バス」による送迎で、「立ち寄り観光地」を巡ることができる。ガイドによる解説を聞きながら、各地の歴史や文化、美しい景色にふれられるのだ。
車窓から美しい景色の移り変わりを堪能し、立ち寄り観光地での滞在を満喫しながら、心躍る「瑞風」の旅は続いていく。

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山陰本線の浜坂駅~諸寄駅では、「瑞風」は民家の近くを走る。
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山陰コース(下り)では、世界遺産の「萩反射炉」が車窓から見える。
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「日本の夕陽百選」のひとつ、宍道湖(しんじこ)の夕景。山陽・山陰コース(周遊)では宍道湖沿いを走る。
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尾道市中心部に面する尾道水道。山陽コースと山陽・山陰コース(周遊)の車窓から眺められる。
TWILIGHT EXPRESS 瑞風
「美しい日本をホテルが走る」をコンセプトとした、特別な寝台列車。京都~下関の区間を山陽本線や山陰本線などを経由して走る1泊2日のコースと2泊3日で山陽・山陰を巡る周遊コースの計5種類ある。10両編成でありながら、定員はわずか30名。
取材・文/藪内成基 写真/合田慎二 写真協力/レイルマンフォトオフィス、JR西日本
●取材時期:2024年8月上旬
※掲載内容は時期や天候、施設の諸事情により変更となる場合があります。