紹興酒の代表イメージ

銘酒のある食卓

週末を豊かに彩る 銘酒のある食卓

紹興酒

手前中央は「東湖(ドンフー)12年」(グラス90㎖・880円、ボトル500㎖・4,730円)。左は「女兒紅(ニューアルホン)」(グラス90㎖・693円、ボトル500㎖・3,630円)。

中国料理を楽しむときの一般的な酒のひとつが紹興酒。とはいえ、あまりその蘊蓄(うんちく)を傾ける場面は多くない。あらためて、紹興酒の基本的な知識と飲み方などを知るとともに、一緒に味わいたい料理を探ってみる。

2024.11.25

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奥深い味わいとうまみが料理の味を引き立たせる

 「中国では穀物を使って造る醸造酒のことを黄(ホワン)酒(チュウ)といいますが、紹興酒はそのなかの一種。上海の南西に位置する浙江(せっこう)省紹興市で造られる地酒です。紹興市は東洋のベニスともいわれる水源豊かな都市。もち米を原料とし、麦麹を使い、名水として知られる鑒(かん)湖(こ)の湧水を使って仕込むのが条件です」。こう教えてくれたのは、黄酒を多く扱う中国料理店「黒猫夜」のマネージャー・田代祐也氏。

お店のおすすめのお酒。右は「孔乙己(コンイージー)12年」(グラス90㎖・902円、ボトル500㎖・4,290円)。まろやかなうまみとやさしいキレのよさが特徴。中央「黄中皇(ファンジョンファン)10年」(グラス90㎖・880円、ボトル500㎖・4,730円)。爽快感のある心地よい味の広がりが感じられる。左「女兒紅(ニューアルホン)10年」(グラス90㎖・880円、ボトル500㎖・4,730円)。深いうまみとキレのよさを両立させた辛口タイプ。

 鑒湖の上質な水を使うことに加え、原料のもち米や麹に使う麦はGB(日本のJISに相当する中国の国家規格)で規定されている二等級以上のものを使用するなど、厳正な国家基準が定められているため、紹興酒を名乗ることができるものは、意外と少ないという。
 紹興酒は6つの味で構成されているといわれ、それが、甜(ティエン)(甘味)、酸(スワン)(酸味)、苦(クー)(苦味)、鮮(シエン)(うま味)、辣(ラー)(辛味)、渋(スー)(渋味)。この6味のバランスが生み出す、複雑で奥深い味わいが特徴だ。
 「飲み方は、常温のストレートが基本。薫香のある料理や甘さのある料理にはロック、前菜などにはソーダ割りといった飲み方もおすすめです。また、同じメーカーの紹興酒でも、熟成年数によって味わいが異なるので、熟成具合によって飲み方を変えてみるのもよいでしょう」と田代氏。
 紹興酒は中国料理をはじめ、油を使った料理によく合い、紹興酒に含まれるアミノ酸が、油をすっきりと流してくれる。また、発酵食品や発酵調味料との相性もよく、紹興酒のうまみと重なって、相乗効果が生まれる。
 料理と合わせて、紹興酒をじっくり楽しんでみよう。

ベストマッチな3品

  • 上海黒酢スブタ
    豚肉を大きな塊で揚げてからじっくり煮込み、黒酢を使ったソースをまとわせた、上海流の酢豚。具材は豚肉が主体で、野菜はイモが入っているのみ(2,090円)。酸味と甘味がしっかりと効いた濃厚ソースの酢豚に合わせる紹興酒は「女兒紅(ニューアルホン)10年」。辛口タイプの紹興酒が、口のなかをスッキリさせてくれる。

  • 百家風鴨舌の炒めもの
    「黒猫夜」の名物料理で、オイスターソースや香味野菜、スパイスで漬け込んだ鴨の舌を、表面をカリッと炒め揚げした料理(1,078円)。香辛料の風味と、ゼラチン質のプルプルとした食感がやみつきになる珍味。合わせる紹興酒は、初心者にも飲みやすく、うまみの深い「黄中皇(ファンジョンファン)10年」がおすすめ。

  • 季節の前菜盛り合わせ
    6種もの酒肴が味わえる前菜盛り合わせ(1名分・1,000円、写真は2名分、内容は季節によって変わる)。写真は牛と豚のモツの白湯スープ、鰻と鰻の肝の南香焼き、姫サザエのニンニクしょうゆ漬け、枝豆の紹興酒粕漬けなど。合わせる紹興酒は、多彩な料理とマッチする「孔乙己(コンイージー)12年」がおすすめ。

黒猫夜 赤坂店

TEL 03-3582-3536
東京都港区赤坂3-9-8 篠原ビル3階
11:30AM~2:00PM、6:00PM~10:30PM(L.O.)
(金 6:00PM~10:30PM(L.O.)、土 6:00PM~10:00PM(L.O.))
日・祝休
チャージ・サービス料:1,100円

https://kuronekoyoru.com/

紹興酒と合わせたい2品

 本格的な中国料理を自宅で作るのは少し難しそうだが、紹興酒を楽しむときに一緒に味わいたい家庭の料理を、「中華香彩 JASMINE 口福厨房」の料理長、中薗 忍氏に教えてもらった。四川風の辛いソースに、紹興酒が進む。

 「紹興酒は軽い酸味と甘味のあるお酒なので、唐辛子や山椒(さんしょう)などを使ったシャープな辛味の四川料理とよく合います。料理を食べた後に紹興酒を飲むと、辛味を洗い流してくれて、次に食べる料理の味がよくわかり、箸が進みます」と中薗氏。今回は、特別な香辛料を使わずに作れる料理を紹介。
 「葱まみれ鶏」の鶏肉は、骨付のもも肉を使用しているが、手に入らない場合は骨なしでも十分おいしくできる。合わせる「紹興酒塔牌 陳五年〈麗美〉Mild&Rich」(店内価格100ml・600円)は、熟成した5年貯蔵酒の上澄み部分だけを使用した、飲みやすく口当たりのよいタイプ。「軽い酸味が、辛味の強い青唐辛子ソースの味をすっきり感じさせてくれます。ソースは市販のサラダチキンにかけてもおいしいですよ」。
 一方、ゆでた豚バラ肉に合わせた四川ガーリックソースは、一味唐辛子やラー油の辛さと、すりおろしたニンニクの香りが刺激的。「永昌源 陳年紹興貴酒10年」(店内価格100 ml・700円)は、飲んだときにまず甘みを感じ、その後の香りも心地よく、辛味をリセットしてくれる。
 「紹興酒の熟成年数には5〜30年といろいろありますが、熟成期間が長いほど個性的な味になる傾向が。個人的には、食中酒として楽しむなら10年、15年あたりが合わせやすいと思います」と中薗氏。
 四川料理の辛いソースは、魚介や野菜料理など、ほかでも活用できそう。辛い料理と紹興酒のマリアージュを自宅でも試してみたい。

葱まみれ鶏 青唐辛子ソース
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紹興酒 塔牌陳 五年<麗美(リーメイ)>Mild&Rich

■材料(2名分)

  • 骨付鶏もも肉…2本

漬け汁

  • 水…500㎖
  • 塩…40g
  • 紹興酒…120㎖
    ローリエ…2枚
    山椒(粒)…ひとつまみ
  • 水…2ℓ
  • ショウガ(スライス)…1片分
  • ネギ(青い部分)…1本分

青唐辛子ソース

  • しょうゆ…120㎖
    砂糖 … 15g
    料理酒 … 30㎖
    生青唐辛子(スライス)…2本分
    ニンニク(つぶす)…1片分
    水…60㎖
  • サラダ油…30g
  • 長ネギ、ショウガ、パクチー…各適量

■作り方

  • ❶漬け汁を作る。鍋に水500㎖を沸かし、塩を入れて溶かして火を止め、粗熱が取れたら㋐を加え冷ましておく。
    ❷深鍋に水2ℓを沸かし、ショウガ、ネギ、骨付鶏もも肉を入れて加熱し、沸騰してきたら火を止めて蓋をし、40分間余熱で火を通す。

  • ❸②の骨付鶏もも肉を氷水に入れて冷まし、水気を拭いて①に漬け、冷蔵庫で丸1日寝かせる。

  • ❹㋑をボウルに入れて混ぜ、熱したサラダ油を注ぎ、香りを立たせれば青唐辛子ソースの完成。
    ❺長ネギ、ショウガは細切りにして、水にさらしてから水気を切っておく。
    ❻③の骨付鶏もも肉を取り出し、骨を外して食べやすい大きさに切り、皿に盛り付ける。上に⑤をのせ、④を好みの分量かけて、パクチーを飾る。

豚バラ肉の四川ガーリックソースかけ
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永昌源 陳年紹興貴酒10年

■材料(2名分)

  • 豚バラ肉(しゃぶしゃぶ用)…200g
  • 水… 1ℓ
  • キュウリ…1本

四川ガーリックソース

  • しょうゆ…125㎖
    砂糖…40g
    ゴマ油…20㎖
    一味唐辛子…5g
    ラー油…20㎖
    ニンニク(すりおろす)…20g

■作り方

  • ❶豚バラ肉は長さ10㎝程の食べやすい長さに切り、ボウルに入れる。
    ❷水を沸騰させ、①のボウルに注ぎ入れてよく混ぜ

  • 豚バラ肉に熱が通り色が変わったら、ザルなどにあげて水気を切る。
    ❸キュウリはピーラーで縦に薄くむき、水に浸けてパリッとさせ、水気を切る。

  • ❹四川ガーリックソースを作る。㋐をボウルに入れて、よく混ぜ、器に入れておく。
    ❺皿に③を敷いて②を盛り、④を好みの分量かけて食べる。

中華香彩 JASMINE 口福厨房

TEL 03-6265-1669
東京都中央区日本橋1-4-1 コレド日本橋地下1階
11:00AM~3:00PM(L.O.)、5:00PM~9:30PM(L.O.)
※休みはコレド日本橋に準ずる

https://nihonbashi.jasmine310.com/

お店のおすすめメニュー

「JASMINE」の看板料理「よだれ鶏」(850円)。15種類の香辛料を使って作る特製ラー油と、黒酢ベースの甘酢のタレが味のポイント。合わせたい紹興酒は「大越貴酒 陳醸15年」(グラス100㎖・1,300円、ボトル500㎖・8,000円)。深みのあるまろやかさが、香り高いよだれ鶏とマッチする。

おすすめの3銘柄

 「酒中旨仙」は中国各地で造られている黄酒の個性や面白さを、多くの人に知ってもらいたいと開設した中国酒専門ウェブショップ。「家中華に黄酒を」をコンセプトに、日本では珍しいものも販売している。

  • 女児紅(ニューアルホン)10年

    産地の東西で味わいが異なる紹興酒。西路紹興酒の濃厚甘口に対し、東路紹興酒はさっぱり辛口が特徴。女兒紅は東路における最大級の紹興酒酒蔵で、日本でも広く親しまれている紹興酒のひとつ。5年ものが多く流通しているが、10年ものはうまみが深く、それでいてキレのあるシャープな味わい。アルコール度数14度(500㎖・3,300円)。

  • 東湖(ドンフー)12年

    設立は1979年と、紹興酒製造の酒蔵のなかでは歴史が浅いものの、多数の受賞歴を誇る東路酒蔵「浙江東方紹興酒有限公司」の逸品。こだわりの手作り製法が生む味わいは、まろやかでやさしく、紹興酒初心者から上級者まで幅広く愛される。きれいな瑠璃色の丸い形状の陶器の瓶が特徴的。アルコール度数14度(500㎖・3,960円)

  • 黄中皇(ファンジョンファン)10年

    歴史ある伝統技術と近代技術を融合させた大手酒蔵「中粮酒業」が誇る紹興酒ブランド「黄中皇」。長期熟成の10年ものは、力強い味わいで芳醇。やや甘口にもかかわらず後味に爽快感を感じさせる。紹興酒の味を表す甘味、酸味、苦味、辛味、うま味、渋味がバランスよく、飲みやすい。アルコール度数14.5度(500㎖・3,300円)。

黄酒専門WEB 酒中旨仙

https://www.umasen.co.jp/

取材・文/土井ゆう子 写真/伏木 博

※価格は消費税込。 L.O.=ラストオーダー

●取材時期:2024年6月上旬 価格など掲載内容は店舗の諸事情により変更となる場合があります。

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