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ニッポン発 おいしいもの探訪

福岡県

おいしいもの探訪【福岡県編】

日本のおいしいものを紹介する旅。
今回は福岡県から。
その町から生まれたおいしいものが、
地元で愛される味になるまでを紹介します。

2024.11.25

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独自の焼き技「こなし」と
秘伝のタレが味の秘訣

うなぎ蒲焼

「上うな重」(4,280円)。蒲焼とご飯は別々の重箱で提供され、タレも別皿。きも吸いが付く。鰻は静岡、宮崎、鹿児島で育てられたもののなかからさらに厳選したもののみを使用。

 「吉塚うなぎ屋」は、1873(明治6)年に福岡市吉塚で鰻料理専門店として創業。その後、中洲へと移り、約150年もの長きにわたり人気を博す名店だ。
 『串打ち三年、裂き八年、焼きは一生』といわれるほど、鰻職人には高い技術が求められるが、吉塚うなぎ屋では、焼きの段階でさらに「こなし」という独自の技を加えている。7代目の德安さやか氏曰く、「鰻を揉み叩くように丹念に焼きあげるのが『こなし』。それにより鰻の余分な脂がしっかり落ち、同時に鰻自身の脂で、表面は素揚げしたかのようにカリッと仕上がります。また『こなし』を行うことで身がふっくらし、当店の特徴である『外はカリッと、なかはふっくら』な蒲焼となるのです」という。味の決め手となる秘伝のタレは、創業以来、門外不出として伝わってきたもの。ほんのり甘く、後を引く味わいだ。
 鰻料理専門店だけに、うな重のほか、うな丼(2,150円〜)、やうまき(610円)、きも焼き(760円 ※数量限定)なども揃う。ここだけの味を堪能したい。

九州一の歓楽街・中洲。バーやスナックが軒を連ね、日本料理店や料亭などの老舗飲食店も点在。隣接する川端エリアには130年以上の歴史を誇る川端通商店街や、博多祇園(ぎおん)山笠が奉納される櫛田(くしだ)神社もあるなど、昔ながらの博多文化にふれられる。

鰻を揉み叩きながら焼く「こなし」。余分な脂や臭みが落ち、香ばしく焼きあがる。

吉塚うなぎ屋

TEL 092-271-0700
福岡市博多区中洲2-8-27
福岡高速道路環状線天神北出入口から約10分
福岡市地下鉄七隈線櫛田神社前駅から徒歩約2分
10:30AM~8:15PM(L.O.) ※受付開始 10:00AM
水曜、第2・4火曜、12/31~2025年1/3休(2024年10/21~24は店舗改修のため休み)

https://yoshizukaunagi.com/

本格的な水炊きを、
1名分から味わえる

水だき

「水だき小鉢定食」(2,500円)。水炊きの鶏肉は生後3ヵ月以内の九州産若鶏を使用。軟らかく身離れがよい。

 水炊き専門店として博多に店を構えて100年以上の老舗「新三浦」。新三浦 天神店は、1960(昭和35)年に福岡きっての繁華街・天神に開業した。
 こちらの水炊きの特徴はスープが白濁していること。鶏ガラのみを、丁寧にアクを取りながら長時間煮込んで作る白濁スープと、新鮮な鶏のぶつ切りを炊いた透明なスープを独自の配合でブレンド。鶏のうまみが十分に引き出された、濃厚かつあっさりとした滋味深いスープが水炊きのベースとなっている。スープが白濁しているため、水炊きではなく「水だき」と濁って表記されている。
 店舗が天神のビル内にあり、博多名物を味わいたい出張ビジネスパーソンが多いことから、「水だきコース」(4,400円〜)は1名分から注文できるようになっている(ただし予約の場合は2名〜)。また、1名分用の土鍋で提供する「水だき小鉢定食」は、さらに気軽に水炊きが楽しめると喜ばれ、評判だ。土鍋に残ったスープは、お茶漬け風にご飯にかけて食するのがおすすめ。白濁スープの滋養を余さず摂ることができる。

福岡市の中心市街地・天神。2015年から、福岡市が主導して実施している再開発促進事業・天神ビッグバンが進行しており、2021年には再開発ビルの第1号として、天神ビジネスセンターが完成。2026年末までに天神周辺の約70棟のビルが建て替えられる予定だ。

「照り焼き玉子丼」(1,200円)。とろとろ玉子の上に甘辛いタレを絡めた焼鳥がのったボリュームたっぷりの丼。スープ付。

新三浦 天神店

TEL 092-721-3272
福岡市中央区天神2-12-1 天神ビル地下1階
福岡高速道路環状線天神北出入口から約6分
福岡市地下鉄空港線天神駅中央改札口から徒歩約2分
11:15AM~2:15PM(L.O.)、5:00PM~8:15PM(L.O.)
火曜、月2回水曜休

熟練シェフが奏でる
九州食材を使った珠玉のひと皿

フランス料理

前菜「"唐津"足赤海老 ミキュイ ビーツ香り」はエビのコンソメのジュレをかけて完成。低温スチーム調理されたエビは甘みが濃厚。

 おいしいものを肩肘張らずに楽しんでもらいたいと、あえて店名に食堂と冠したフランス料理店「食堂セゾンドール」。メニューはお任せコースのみで、ランチ10皿前後、ディナーは12〜14皿程と圧巻の皿数で構成されている。食材は、その日仕入れた九州の魚介類や野菜が中心。シェフ直筆のメニュー表には「姫島(福岡県)地蛸、呼子(佐賀県)甲イカ、五島(長崎県)クエ」と食材名とともに産地が記され、当地ならではの料理であることが伝わってくる。
 シェフを務める前山 仁氏はこの道40年超のベテラン。「信頼する漁師さんや農家さんから仕入れる食材がすばらしいので、調理はナチュールを心がけています」と前山氏。熟練者だからこそできる引き算の美学で食材には手を加えすぎず、一方で低温スチーム調理法を取り入れるなど、食材のうまみを引き出す工夫や手間は惜しまない。コースに合わせてソムリエがセレクトする「ペアリング」(6,600円〜)は、ワインのほか、日本酒やクラフトジンを加えた約10種類を用意。料理とのマリアージュを楽しめると好評だ。

「食堂セゾンドール」の最寄り駅・西鉄平尾駅は、福岡の中心市街地・天神から西鉄天神大牟田線で2駅。天神から1駅の薬院駅の周辺を含めて通好みな飲食店が多く、実力派レストランや隠れ家的なバー、自家製天然酵母を使用するベーカリーなどが点在している。

前菜「"姫島"地蛸ベニエ レッドキャベツ トリュフ香り」。7,700円のランチコースの一例。

食堂セゾンドール

TEL 092-524-0432
福岡市南区高宮1-3-32
高宮第2オークマンション1階
福岡高速道路環状線天神北出入口から約15分
西鉄天神大牟田線西鉄平尾駅から徒歩約5分
正午~1:00PM(L.O.)、6:00PM~7:00PM(L.O.)
※昼夜とも要予約 月曜夜、火・水休

https://saisondor.jp/

取材・文/宮本喜代美 写真/松隈直樹

※価格は消費税込。 L.O.=ラストオーダー

●取材時期:2024年6月上旬 ※価格など掲載内容は施設や店舗の諸事情により変更となる場合があります。

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