秋の京都を彩る紅葉の名所と名品たちの代表イメージ

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秋の京都を彩る紅葉の名所と名品たち

京都・八瀬「無量寿山光明寺 京都本院 瑠璃光院」の書院2階で眺める紅葉。錦繍に染まる庭が漆黒の机に映り込む様子が美しい。

紅葉観賞は長い年月を経て多くの人たちを魅了してきた。秋の深まりとともに、緋色に染まる風景を恋しく想う心持ちは、古くは奈良時代の和歌に表され、平安時代には貴族の嗜みとして文化に昇華した。江戸時代になって大衆に広く普及し、現代に継承されているこの秋の風物詩。次の京都への旅は、洗練された庭の紅葉や紅葉に見立てた品などを探しに歩くことにしよう。

2024.11.25

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雅やかな緋色の世界観に浸る

 京都の人たちには、それぞれ“推し紅葉”があるという。それだけ京都には紅葉の名所が多い。

「糺の森」を抜けると、朱色が鮮やかな南口鳥居と楼門が見える。

 まず向かった先は、京都・八瀬。比叡山のふもと、高野川流域に位置し、普段は静寂に包まれた風光明媚(めいび)な地域だ。お目当ての「無量寿山光明寺 京都本院 瑠璃光院」の“リフレクション紅葉”は、書院2階の漆黒の机に瑠璃の庭のカエデが映り込む様子を指し、“机紅葉”とも呼ばれる。この光景に心奪われて毎年同じ日時に訪問する人によると、天気や気温によって色づき方が異なるため毎回新たな気持ちで楽しめるという。年3回の特別拝観のうち、最も来訪者が多い秋は予約制。長い年月を経た数寄屋造りの建物を未来に残すための工夫として、一度に入室できる人数や滞在時間に制限を設けている。目の前に広がる美しい秋の光景を、譲り合いながら楽しみたい。

無量寿山光明寺 京都本院 瑠璃光院

池のそばに配した大岩を龍の頭に見立てた「臥龍(がりょう)の庭」側から見える、“和敬静寂”の精神を表す「茶庵 喜鶴(きかく)亭」。なお、庭園の観賞は建物のなかからのみとなる。

 瑠璃光院からすぐの「ルイ・イカール美術館」では、約40 年かけて蒐集(しゅうしゅう)された作品が公開されている。展示室の窓の外にも紅葉が見られ、趣が異なる小さな秋を見つけて心を和ませたい。
 八瀬を後に電車で出町柳(でまちやなぎ)へ。八瀬で見た高野川は、出町柳で賀茂川と合流し、その先、鴨川と名を変える。この合流点のそば、「賀茂御祖(かもみおや)神社(下鴨神社)」の「糺(ただす)の森」で紅葉を観賞しよう。5月の葵祭の行列や流やぶさめ鏑馬神事で知られるが、紀元前3世紀ごろの原生林と同じ植生がいまに伝わり、神秘的な空気に包まれた森である。散りゆく紅葉が地面一帯を覆う様子を“敷き紅葉”と呼び、自然に敬意を払いながら惜しむように秋を楽しむ。これもまた風雅な時間だ。

  • 賀茂御祖神社(下鴨神社)

    広さ約12万4000㎡の史跡「糺の森」には、樹齢約200~600年の樹木が多数生い茂る。本殿を含む社殿とともに世界文化遺産に登録されている。

  • ルイ・イカール美術館

    メインギャラリーの様子。展示内容は時期により異なる。“ルイ・イカール作品のコレクターの私邸”というコンセプトのもと、趣向を凝らした展示室が5室設けられている。

賀茂御祖神社(下鴨神社)

TEL 075-781-0010
京都市左京区下鴨泉川町59
6:00AM~5:00PM(神事等により変更)
参拝無料

https://www.shimogamo-jinja.or.jp/

無量寿山光明寺 京都本院 瑠璃光院

TEL 075-781-4001(自動音声案内)
京都市左京区上高野東山55
10:00AM~4:30PM(受付終了)
秋の特別拝観(予約制)10/1~12/10
期間中は無休(特別拝観は年3回。4/15ごろ~ 6/15ごろ、7/1~8/16ごろ)
拝観料:大人2,000円 ※現金のみ

https://rurikoin.komyoji.com/

※拝観予約・問い合わせは、公式ウェブサイトの専用フォームから
※三脚使用の撮影不可
※拝観期間外は拝観不可

ルイ・イカール美術館

TEL 075-724-5235(開館中のみ)
京都市左京区上高野東山71-21
10:00AM~5:00PM(予約不要)
開館期間は瑠璃光院と同様期間中は無休
入館無料

https://icartmuseum.com/

紅葉にまつわる名品たち

 秋の京都は、紅葉をモチーフにした製品が多い。紅葉にまつわる品々を探しに町を歩いてみよう。

秋の干菓子「菊と紅葉」(大・1,600円)。初代から受け継ぐ木型を修理しながら大事に使用し続ける。

 「細辻伊兵衛(ほそつじいへえ)美術館」の1階で出合ったのは、型友禅の技法を用いた繊細な図案の手ぬぐいアート。木目の細かい木綿生地を独自開発して、美しい発色や複雑な色合いなど、多様な表現ができるようになり、アートとしての手ぬぐいの現在地を確立した。その木綿生地は店内の壁面にも使用されている。

細辻伊兵衛美術館

上から、手ぬぐい「紅葉と舞妓さん」「秋の町家」(各2,640円。縦360×横910㎜)。1階のミュージアムショップで購入できる。

 「caede(カエデ)・エリシア京都 富小路本店」では、イタリアのデザイナーが魅了された京都の紅葉をモチーフにしたバッグに出合える。
 発色の美しい赤色と、紅葉形のチャームが特徴。なかでもSDGs 未来都市・京都にちなんだペットボトル再利用の新素材は、軽量で手ざわりが滑らか。ショルダーストラップ付トートは、小物を入れるのにちょうどいいサイズで、赤色が旅行ファッションの挿し色になる。

caede|エリシア京都 富小路本店

「Recicli ZIMA Grato Barca(リチクリ ジーマ グラート バルカ) S(RED)」(39,600円。幅320×深さ190×マチ135㎜)。

 「御菓子司(おんかしつかさ) 亀屋則克(かめやのりかつ)」は、伝統的な和菓子店。茶事などの特別仕様から常用のものまで、季節を和菓子で表現する。「宿泊先で食べたいと、上生菓子をひとつ買っていかれる方もいます。SNSで写真をご覧になった方は、みやげに干菓子や琥珀(こはく)を気に入っていただいているようです」と話す、4代目の森田祥司(しょうじ)氏。3代目の邦夫氏とともに先代の味を守りながら、和菓子を未来に繋げていく。
 町歩きをたっぷり楽しんだ後は、「小川珈琲 堺町錦店」でひと休みしよう。紅葉にちなんでメープルシロップのメニューを注文。深みのある甘さと糀バターの塩気が絶妙なフレンチトーストは、濃くてマイルドなコーヒーとよく合う。

  • 御菓子司 亀屋則克

    「秋の上生菓子3種」(各450円)。手前から、こなしで形作った錦繍の紅葉を寒天で艷やかに仕上げた「紅葉」、細かくした緑の餡に橙や黄の餡を散らして色づき始めの野山に見立てた「秋の山」、わずかな塩で甘さを引き締めたこし餡を彩り豊かなきんとんで覆った「晩秋」。

  • 小川珈琲 堺町錦店

    小川珈琲の創業70周年となる2022年に、町家をリノベーションした店舗としてオープン。

細辻伊兵衛美術館

TEL 075-256-0077
京都市中京区室町通三条上る役行者町368
10:00AM~6:30PM(最終入館)
入館料:大人1,000円(手ぬぐいチケット付)
※ミュージアムショップは入館無料
不定休

https://hosotsuji-ihee-museum.com/

caede|エリシア京都 富小路本店

TEL 075-252-5711
京都市中京区富小路通錦上る高宮町584 caedeビル
10:00AM~6:00PM
1/1休

https://caede-kyoto.com/

御菓子司 亀屋則克

TEL 075-221-3969
京都市中京区堺町通三条上る大阪材木町702
9:00AM~5:00PM
日・祝、第3水曜、1/1~5休

https://www.kameyanorikatsu.com/

小川珈琲 堺町錦店

TEL 075-748-1699
京都市中京区堺町通錦小路上る菊屋町519-1
7:00AM~7:30PM(L.O.)
不定休

https://www.oc-ogawa.co.jp/nishiki/

取材・文/佐川深雪 写真/合田慎二

●取材時期:2024年5月下旬
※価格は消費税込。 L.O.=ラストオーダー
※掲載内容は時期や天候、施設の諸事情により変更となる場合があります。

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