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パリ

パリに息づく「美」の真髄

宝飾店が集まる「ヴァンドーム広場」周辺のクリスマスデコレーション。広場は18世紀に落成。中央の柱はナポレオンの戦勝記念として19世紀に建設。

白壁の建築、歴史を物語る石畳、夕暮れのセーヌ河……。日常に美が息づく街、パリ。19世紀末に生まれたアール・ヌーヴォー建築群から力強いストリートアート、古典的な名作やモダンアートを収める美術館、最新の没入型スポットまで、時代を超えた美を五感で体験できる。感性を刺激する旅へ、いざ出かけよう。

【ご案内】渡航にあたっては、外務省の海外安全ホームページ等で現地の最新情報をご確認ください。

2026.10.26

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歩けば出合える新旧さまざまな「美」のかたち

 パリの美を巡る旅は世紀末の華やぎを伝える、アール・ヌーヴォー建築群から始めよう。高級住宅街で知られる16区では、建築家・エクトール・ギマールが手がけた名作を観ることができる。
 1898年に完成した集合住宅「カステル・ベランジェ」はアール・ヌーヴォー建築の傑作で、完成同年、パリ市主催の第1回ファサード(外観)コンクールで優勝。当時31歳であったギマールは、この作品により時の人となった。

  • 「カステル・ベランジェ」。植物が絡み合うようなアシンメトリーの扉。それまでの常識であったシンメトリーのデザインに一石を投じた。

  • 砂岩、煉瓦、タイル、鉄などさまざまな素材で外壁を彩る、アール・ヌーヴォー建築の特徴を見ることができる。

 メトロ「ポルト・ドーフィヌ駅」はパリに2ヵ所のみ残る屋根付の駅エントランス。1900年のメトロ開業時、ギマール・スタイルは時代の最先端だった。鉄、鋳鉄、ガラス、そしてエナメル溶岩を組み合わせたアール・ヌーヴォー様式の入口、高い街灯、独特の書体で書かれた看板は人々を魅了したという。

「ポルト・ドーフィヌ駅」入口。「エディキュール」と呼ばれる屋根付エントランスが残る。当初は13基あったが、1904年から段階的に解体された。

 「オテル・ギマール」は1912年に完成した、ギマールの私邸。美しい曲線を描く外壁、植物の装飾を施した出窓が華やかさを添える。

  • 「オテル・ギマール」。1階は事務所、2・3階は夫妻の住居、4階には画家であった妻のアトリエがあった。

  • 入口上部に施された石の彫刻。

 現代アートの熱量を感じたいなら13区のストリートアート群を訪問しよう。区役所と地域のギャラリーが主導するプロジェクトで、メトロ6号線沿いの高層ビルの壁に、世界のトップクラスの作家たちが作品を描き、街全体を活性化している。代表的な作品はフランスの象徴、マリアンヌを描いた『自由、平等、博愛』、アメリカのヴィンテージ・コミックのタッチで描かれた『ターンコート(裏切り者)』、病院の壁面を飾るモザイクアート作品『ドクター・ハウス』など。
 通りに並ぶ高層ビルをキャンバスに見立てた、アートの競演。そのスケールの大きさに圧倒される。

  • シェパード・フェアリー作『自由、平等、博愛』。アメリカで著名なアーティストで、2015年11月13日に起こったパリ同時多発テロ犠牲者への支援と追悼の意を込めた。ヴァンサン・オリオル通り141番地。

  • 英国出身のD*Face作『ターンコート』。高さ約25メートルの大作。ヴァンサン・オリオル通り155番地。

  • インベーダー作『ドクター・ハウス』。病院の壁に人気ドラマの主人公をモザイクで表現。ヴァンサン・オリオル通り46番地。

モネの世界にふれられる名美術館

 2026年は印象派の巨匠クロード・モネの没後100周年。彼の代表作を所蔵する美術館を訪れてみよう。「オルセー美術館」は1848年から1914年の西洋美術を展示し、モネのほかにドガ、ルノワール、マネら印象派の画家の作品を鑑賞することができる。印象派の誕生の歴史的背景や、その変遷、当時のパリの文化的な盛りあがり、画家たちの交流についても掘り下げている。光の粒子が美しく躍るような『日傘をさす女』はモネの代表作のひとつ。

  • 1900年に落成した駅舎を利用した美術館。

  • 中央通路には1850~1880年の彫刻を展示。

  • 『日傘をさす女(左向き)』1886年の作品。右向きの絵も展示される。1875年に妻カミーユと息子のジャンを描いたものが第一作で(ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵)、こちらはカミーユの死後に再婚したアリスの娘、シュザンヌがモデル。
    ©GrandPalaisRmn(musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski/distributed by AMF

 セーヌ河に架かる橋を渡るとチュイルリー公園内にある「オランジュリー美術館」に到着。モネが晩年、情熱を捧げた連作『睡蓮』はジヴェルニーにあるモネの家の「水の庭」を描いたもの。展示室では四方に作品を設置。中央のベンチに座ると、まるで画家の庭を実際に訪れたような気分になる。天井から自然光が降り注ぐ空間で、静謐なひとときを過ごしたい。

  • 『柳のある朝』は1914~1926年に制作。2本の堂々とした木の幹が存在することによって水面の広がりが区切られる。水面に映る乳白色の空を表現しており、明るい印象を与える。
    ©Musée d'Orsay, Dist. GrandPalaisRmn / Patrice Schmidt / distributed by AMF

  • 1852年に建設された、チュイルリー公園のオランジュリー(オレンジの木を育てる温室)を、連作『睡蓮』を展示するために改装。1927年に美術館として開館した。

  • 地上階にあるふたつの展示室では、8枚の連作を鑑賞できる。モネは日の出から日没までの移りゆく光の表現に情熱を注いだ。美術館を開くに当たり、展示室に外光を入れることを条件としたモネは「穏やかに思索にふけられる場となるでしょう」と述べたという。

 美術館巡りはブローニュの森に近い閑静な住宅街にたたずむ「マルモッタン・モネ美術館」で締めくくろう。世界最大級のモネのコレクションを誇るこの美術館では、印象派という名称の由来であり、歴史の始まりを告げた記念碑的作品『印象・日の出』を間近で鑑賞できる。ル・アーヴル港の朝靄(あさもや)に包まれた赤い太陽を描いたこの作品はいまも色褪せることなく、鮮烈な印象を与えてくれる。重厚で優美な公爵邸の雰囲気を残す館内では、モネ自身の所蔵品であったドラクロワやルノワールらの作品や、中世の貴重な写本などもあわせて楽しむことができる。
 名作の息吹を感じる美術館巡り。モネが切り取った美の瞬間は、100年の時を超えてもなお、人人の心を惹きつけてやまない。

  • 『印象・日の出』は1872年の作品。ホテルの窓から見た、早朝の港の景色を数時間で描きあげたという。
    ©GrandPalaisRmn/image GrandPalaisRmn/distributed by AMF

  • 19世紀建築の公爵邸を所有したポール・マルモッタンがコレクションと邸宅を芸術アカデミーに寄贈。1934年に美術館となった。

Musée d’Orsay オルセー美術館

TEL 01-40-49-48-14
Esplanade Valéry Giscard d'Estaing 75007 Paris
9:30AM~6:00PM(木 ~9:45PM)
※最終入館は閉館60分前(木曜は閉館45分前)
月曜、5/1、12/25休
入館料:14ユーロ(木曜6:00PM以降の入館は10ユーロ。毎月第1日曜は無料、時間帯指定の無料チケットをウェブサイトより要予約)

https://www.musee-orsay.fr/

Musée de l’Orangerie オランジュリー美術館

TEL 01-44-50-43-00
Jardin des Tuileries Place de la Concorde 75001 Paris
9:00AM~6:00PM
※最終入館は閉館45分前(特別展開催中の金曜は閉館時間を延長)
火曜、5/1、7/14午前、12/25休
入館料:11ユーロ(毎月第1日曜は無料、時間帯指定の無料チケットをウェブサイトより要予約)

https://www.musee-orangerie.fr/

Musée Marmottan Monet マルモッタン・モネ美術館

TEL 01-44-96-50-33
2 Rue Louis-Boilly 75016 Paris
10:00AM~6:00PM(木 ~9:00PM)
※最終入館は閉館60分前
月曜、1/1、5/1、12/25休
入館料:14ユーロ

https://www.marmottan.fr

いま話題の新たなアートスポットへ

 パリでいま、訪れるべきアートスポットとして真っ先に名前が挙がるのが「カルティエ現代美術財団」である。
 昨年秋にパレ・ロワイヤル広場に面する歴史的建築へ移転した。その内部を手がけたのは名建築家・ジャン・ヌーヴェル氏。ラスパイユ大通りにあった以前の財団も彼が担当した。展示スペースは約6500平方メートル。高さを11段階に調整できる可動式プラットフォームを設置し、展覧会ごとに空間の面積を激変させる構造だ。
 展示スペースのほかに手作業の学びを提供する体験型スペース「ラ・マニュファクチュール」や、舞台や客席のレイアウトを変更できる、可変式の劇場「マリー=クロード・ボー・スタジオ」も設ける。

  • 新拠点のオープンを記念して、所蔵コレクションの骨格を成す作品や象徴的な作品を厳選した「エクスポジション・ジェネラル」を開催。

  • 潜水艦はベルギー出身のアーティスト・パナマレンコ氏の作品『パナマ、スピッツベルゲン、ノヴァゼムブラヤ』。

  • オスマン様式の建物は1855年建設。10月22日から2027年2月28日の期間、ガーナ出身のアーティスト、イブラヒム・マハマ氏と9人のアーティストが作品とインスタレーションを紹介。

  • ボリビア出身の建築家、フレディ・ママニ氏作『サロン・デ・エヴェントス』。カラフルで装飾的なネオ・アンデス建築様式を確立。着想源はアンデス地方の先住民族アイマラの文化。

 シャンゼリゼ通りに近い「シテ・イマージヴ・デ・ファーブル」は、ラ・フォンテーヌの古典寓話にデジタル技術とエンタメ要素をかけ合わせた没入型スポット。「装飾、ビジュアルの質の高さ、そして特殊効果を通じて、私たちは『魔法のような美しいひととき』を作り出しています」と共同創業者でありアートディレクターを務めるジャン・ヴェルジェ氏は語る。
 テレビ会議をするライオン、リアリティー番組に出演するカエルなど、現代のタッチを加えた意表をつく演出が満載で、子どもからティーンエイジャー、大人まで、世代を超えて楽しんでいる姿が印象的だ。
 古典寓話の魅力と先端技術が奇跡的な融合を果たした世界での没入体験。日常を忘れ、驚きと楽しみに満ちた世界を堪能したい。

  • 「17世紀の作家であり、当時の文化や粋な精神を象徴するラ・フォンテーヌについて、そして彼の寓話に通ずる教訓『汝自身を知れ』について学べる場所」とヴェルジェ氏。

  • 「カエルの部屋」。天井に睡蓮の葉を飾り、訪れた人が池のなかのカエルと同じ視点になれるよう演出。

  • 体験はラ・フォンテーヌの書斎からスタート。

Fondation Cartier pour l’art contemporain カルティエ現代美術財団

TEL 01-70-65-47-00
2 Place du Palais-Royal 75001 Paris
11:00AM~7:00PM(金 ~10:00PM、12/24・31 ~4:00PM)
※最終入館は閉館90分前
月曜、1/1、5/1、12/25休
入館料:15ユーロ

https://www.fondationcartier.com/

Cité Immersive des Fables シテ・イマージヴ・デ・ファーブル

5 Rue de Berri 75008 Paris
10:30AM~6:30PM(火 1:00PM~6:00PM、土・日 10:00AM~7:00PM)
※最終入館は閉館60分前
月曜休
事前のチケット購入がおすすめ
入館料:19.90ユーロ~(時期により変更あり)

https://fables.cites-immersives.fr/

取材・文/木戸美由紀 写真/武田正彦
●取材時期:2025年12月上旬
※掲載内容は時期や天候、施設の諸事情により変更となる場合があります。

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