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日本の紅葉を愛でる

もうひとつの紅葉を探して

北大路魯山人『雲錦鉢(うんきんばち)』 1941(昭和16)年ごろ。口径43センチメートル 足立美術館蔵。2027年2月初旬まで展示予定。

春の桜と同様、秋の紅葉は、私たちの心を豊かさで満たしてくれる。その存在は古今の芸術家にも愛され、絵画や工芸の分野で多くの作品が生み出された。行楽や芸術の季節でもある秋。実際の紅葉とは違った趣を求めて、美術館・博物館に出かけてみてはどうだろう。

2026.07.24

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日本画壇の巨匠、横山大観が描く秋

 名園と名画をともに鑑賞しながら館内を巡ることができる「足立美術館」は、横山大観をはじめとする近・現代日本画や北大路魯山人の陶芸作品など、総数約2000点を所蔵。そのなかから季節の移ろいに合わせて、順次展示公開している。
 近代日本画壇の巨匠として、明治・大正・昭和に活躍した横山大観のコレクションのなかでも、ひときわ豪華絢爛な趣をもつのが、『紅葉(こうよう)』。大部分を群青に彩り水の流れを表し、その上に白金泥(はっきんでい)の漣(さざなみ)を加えて、秋の清冽な自然を表している。左隻には、画面を埋め尽くすかのように真紅に燃える紅葉を配し、右隻は、飛び去るセキレイが一羽、人里離れた渓谷の風情を示している。一枚の絵として観ると樹木が右にやや傾いているように感じるが、実際の展示では六曲一双の屏風として立っているため、美しいバランスで鑑賞できる。
 同じく大観作の『晩秋(ばんしゅう)』は、葉がほとんど落ちた柿の木に、初冬のうすれ陽がもれている情景。大観は柿の葉の紅葉の美しさを好んで描いたが、本作では墨と淡彩を基調とし、画面の中心に大きく取られた余白が、晩秋のどこか寂しいような気分を表している。
 川端龍子(りゅうし)の『愛染(あいぜん)』は、仏教用語で男女の情愛を意味する「愛染」を、つがいの鴛鴦(おしどり)を用いて表現した作品。雄が大きく弧を描いて泳ぎ、雌がその求愛に応えている。赤いモミジで染まる水面が愛の高まりを表し、水の群青がそれを鎮めるかのごとく描かれている。
 陶芸家、美食家として有名な北大路魯山人は、華やかで、両手で抱えるほど大きく豪快な鉢を好んで制作した。『雲錦鉢』は、鉢の内外に桜と紅葉が配された雲錦模様の鉢。刷毛目(はけめ)で金彩を施すことによって、きらびやかな風情が生まれている。

  • 横山大観『紅葉』 1931(昭和6)年。六曲一双(各)縦163.3×横361センチメートル 足立美術館蔵。「秋の横山大観コレクション選」(秋季展併催)で展示(会期:2026年8月31日(月)~11月30日(月))。

  • 横山大観『紅葉』 紅葉は朱をそのまま使うだけでなく、黒ずませたり、緑青(ろくしょう)を混ぜたりと微妙に色調を変化させて表現。

  • 横山大観『晩秋』 1925(大正14)年。縦60.5×横83.9センチメートル 足立美術館蔵。展覧会および会期は『紅葉』と同じ。柿の葉の紅葉が印象的な一作。

  • 川端龍子『愛染』 1934(昭和9)年。168.2×168.5センチメートル 足立美術館蔵。「冬季特別展 縦と横くらべてわかる表現の違い」で展示(会期:2026年12月1日(火)~2027年2月28日(日))。

足立美術館

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TEL 0854-28-7111
島根県安来市古川町320
9:00AM~5:30PM(10~3月 ~5:00PM)
無休(新館のみ展示替えのための休館日あり)
入館料:大人2,500円

https://www.adachi-museum.or.jp/

圧倒的なコレクションを誇る国立博物館

 「東京国立博物館」は広大な敷地に本館、東洋館、平成館、法隆寺宝物館など6つの展示館が点在。日本を中心にシルクロードからエジプトまで、現在約12万件のコレクションを擁している。
 重要文化財の青木木米(もくべい)筆『兎道朝暾図(うじちょうとんず)』は、京都・宇治川の秋を描いたもの。橋の周辺には紅葉が色づき、画面右下に木々に囲まれた平等院が描かれている。
 『色絵紅葉賀図茶碗(いろえもみじがずちゃわん)』は17世紀中ごろ、仁和寺の門前で御室窯(おむろがま)を開いた野々村仁清(にんせい)の茶碗。『源氏物語』の紅葉賀の巻を、光源氏を描かずに表現。京焼を代表する御室窯らしい王朝の趣味を反映している。

  • 青木木米筆『兎道朝暾図』(重要文化財)。縦48.4×横59.3センチメートル 東京国立博物館蔵。本館18室、書画の展開で展示(会期:2026年10月20日(火)~11月29日(日))。

  • 野々村仁清『色絵紅葉賀図茶碗』 江戸時代。口径11.5~12×高10.3センチメートル 山本富子氏、山本賢二氏 寄贈 東京国立博物館蔵。本館18室、暮らしの調度で展示(会期:2026年9月8日(火)~11月29日(日))。

東京国立博物館

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TEL 050-5541-8600
東京都台東区上野公園13-9
9:30AM~5:00PM(金・土、翌月曜が祝・休日の場合の日曜 ~8:00PM)
※最終入館は閉館の30分前
月曜(祝・休日の場合は翌日)、年末年始休
入館料:大人1,000円

https://www.tnm.jp/

※最新の展示情報はウェブサイトで確認。

葛飾北斎が描く東西の紅葉

 江戸時代後期に活躍した絵師、葛飾北斎ゆかりの地にある「すみだ北斎美術館」。大判錦絵『百人一首宇破か縁説 貞信公(うばがえときていしんこう)』は、平安時代前期から中期にかけての公卿である藤原忠平が詠んだ和歌の世界を描いているもの。作品名の貞信公は忠平のことで、忠平が仕えた醍醐天皇と思われる若い高貴な男性と家臣が紅葉で有名な小倉山の山荘に行く様子を描いた雅な絵だ。『絵本 隅田川 両岸一覧(りょうがんいちらん)』は狂歌絵本で、隅田川沿いの景観を挿絵とし、四季の変化とともに展開させたシリーズ。『待乳山(まつちやま)の紅葉(もみじ)』は、隅田川西岸の丘の上にある待乳山聖天(本龍院)付近の紅葉を描いたものだ。

  • 葛飾北斎『百人一首宇破か縁説 貞信公』 1835(天保6)年ごろ。縦26.1×横37.1センチメートル すみだ北斎美術館蔵。開館10周年記念 特別展「ベスト オブ すみだ北斎美術館―隅田川両岸 景色図巻と名品―」で展示(会期:2026年9月15日(火)~11月23日(月・祝) ※前後期で一部展示替えを実施。 前期:9月15日(火)~10月18日(日)、後期:10月21日(水)~11月23日(月・祝))。 ※本作品は前期の展示。

  • 葛飾北斎『絵本 隅田川 両岸一覧 下 待乳山の紅葉』 年代未詳。縦27.1×横18.4センチメートル すみだ北斎美術館蔵。展示される展覧会と会期は『百人一首宇破か縁説 貞信公』と同じ。

すみだ北斎美術館

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TEL 03-6658-8936
東京都墨田区亀沢2-7-2
9:30AM~5:30PM
※最終入館は閉館の30分前
月曜(祝・休日の場合は翌日)、年末年始休
入館料:特別展大人1,500円

https://hokusai-museum.jp/

「一竹辻が花」の着物に紅葉の美を愛でる

 江戸時代に姿を消し“幻の染め”といわれた辻が花染めを独自の技法で現代に復興させた「一竹(いっちく)辻が花」で有名な染色家、久保田一竹の作品群を展示する美術館。2026年12月中旬までは、自然界の“四季”と、一竹の心の“宇宙”を連作で表現する『光響(こうきょう)』(80連作)のうち、秋を主題とした作品15点を展示。約2年3ヵ月ぶりの公開となる。『光響』は一竹が70歳になってから取り組んだ壮大なプロジェクト。何枚もの着物をキャンバス代わりに、秋からはじまる日本の風景を描いた連作で、山々が紅葉する様子が着物に表現されている。

  • 久保田一竹『光響 猩々桃(しょうじょうとう)』。

  • 久保田一竹『光響 瑠璃紺(るりこん)』。ともに1983(昭和58)年。いずれも久保田一竹美術館蔵。「奥入瀬の秋~真っ赤なもみじの中 雪がふる~」で展示(会期:2026年6月18日(木)~12月中旬ごろ)。(写真/©株式会社一竹辻が花)

久保田一竹美術館

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TEL 0555-76-8811
山梨県南都留郡富士河口湖町河口2255
10:00AM~5:00PM(12~3月 ~4:30PM)
※最終入館は閉館30分前
※休館日はウェブサイト参照
入館料:大人1,500円

https://www.itchiku-museum.com/

四季を愛した川合玉堂の心象風景

 川合玉堂(ぎょくどう)は、日本の山河をこよなく愛し、四季の自然や田園風景とそこに暮らす人々を情感豊かに描いた近代日本画家。玉堂が晩年に暮らした東京都青梅市にある、「玉堂美術館」では、15歳ごろの写生から84歳の絶筆まで約300点を所蔵。展示替えは年6回行われ、季節に見合った作品が展示される。「山粧(やまよそお)う展」では雨が降った後の晴れ渡った秋の山々をやさしい色調で描いた『秋山雨霽(しゅうざんうせい)』、渓流の上に大きく張り出した紅葉を描いた『渓橋紅葉(けいきょうこうよう)』が展示される。いずれも馬に乗って尾根を進む人や荷物を背負って歩く人など、人が描かれているのが玉堂らしい。

  • 川合玉堂『秋山雨霽』 1952(昭和27)年。縦43.5×横57.3センチメートル 玉堂美術館蔵。

  • 川合玉堂『渓橋紅葉』 1953(昭和28)年。縦58.5×横75.2センチメートル 個人蔵。いずれも「山粧う展」で展示(会期:2026年9月8日(火)~11月29日(日))。

玉堂美術館

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TEL 0428-78-8335
東京都青梅市御岳1-75
10:00AM~5:00PM(12~2月 ~4:30PM)
※最終入館は閉館の30分前
月曜(祝・休日の場合は翌日)、年末年始休
入館料:大人600円
※現金のみ

http://www.gyokudo.jp/

取材・文/土井ゆう子
●取材時期:2026年4月上旬
※価格は消費税込。
※価格など掲載内容は施設の諸事情により変更となる場合があります。

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