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日本の紅葉を愛でる

知っておきたい「紅葉のイロハ」

イチョウは黄葉の名木で、街路樹に使われることが多い。東京で見ごろを迎えるのは例年11月下旬からで、イロハモミジの紅葉よりも1週間前後早い。写真は、東京・神宮外苑のいちょう並木。(写真/PIXTA)

眺めるだけでも十分に楽しい紅葉狩りだが、もう少しの知識があれば、その楽しみはさらに大きなものに。樹木図鑑作家で環境ジャーナリストの林 将之氏に、紅葉の基本を教えてもらった。

2026.07.24

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1 日本でよく見られる紅葉が美しい木は

 紅葉とは落葉の前に葉が色づくこと。狭義には、赤い色素ができ、赤や橙色になることを紅葉、赤い色素はできず黄色くなることを黄葉(おうよう・こうよう)と呼ぶ。都市部でよく見られるのは街路樹に多いイチョウやケヤキ、公園や庭木などに多いイロハモミジ、ドウダンツツジ、ハナミズキなど。野生の木ならヤマウルシなどがきれいに紅葉する。

2 紅葉のメカニズム

 樹木の葉には、光合成を行ううえで必要なクロロフィル(葉緑素)やカロテノイドという黄色の色素が多く含まれている。ふだんはクロロフィルの量が多いため、葉は緑色に見えているが、秋が深まり気温が下がると、光合成の効率が低下して葉を落とす準備をする。この過程で葉のクロロフィルが分解され緑色が薄まり、もとからあるカロテノイドが目立つようになり、葉が黄色く見える。一方、モミジなどはクロロフィルが完全に分解される前にアントシアニンという赤色の色素を生成し赤くなる。一般的に最低気温が摂氏8度以下になると紅葉が始まり、5~6度になると急速に進むといわれている。温度が下がり、昼によく晴れると赤色の色素の生成が、夜に冷え込むと葉緑素の分解が進み、黄色や赤色の色素がより鮮やかになる。

ふだん葉は緑色に見えるが、秋の深まりとともにクロロフィルが分解されて、黄色や橙色・赤色に変化する。その後、褐色の色素ができて茶色へと色あいを変えていく。(出典/林 将之『新 紅葉ハンドブック』)

3 見ごろは年々遅くなり予想が難しい

 紅葉の名所が数多くあることで知られている京都では、ひと昔前は11月後半が見ごろといわれていたが、現在は12月上旬前後の年が増えた。気象庁の実測によるカエデ紅葉日は、東京の場合、1953年は11月8日だったが、2024年は12月3日となっていて、年による差はあるが、約70年で25日も遅くなっている。また、猛暑や降水量の影響から、紅葉の時期やその色づき具合を予想することは年々難しくなっている。

4 おすすめの紅葉の観賞方法

 日光のいろは坂をはじめ、展望台のような場所から雄大な景色を眺める紅葉観賞もいいが、身近な自然公園や里山の遊歩道、低山のハイキングコースなどもおすすめだ。モミジが落葉して真紅のじゅうたんが敷かれたような情景や、雑木林のコナラやサクラの落ち葉が降り積もった道を踏みしめながら歩けるうえ、尾根と谷など環境によって紅葉の色や木の種類が異なることに気付くだろう。また、公園などの開けた場所にポツンと植えられ太陽の光をたっぷり浴びた木は、自然界の暗い林や森のなかよりもきれいに紅葉することが多い。

晩秋に落葉したモミジが真紅のじゅうたんを敷き詰めたように足もとを彩る。踏みしめて歩けば、その音や香りも味わえる。(写真/PIXTA)

5 香りも紅葉狩りの楽しみのひとつ

 紅葉した落ち葉には甘い香りを発するものがある。綿菓子のような香りを発するのがカツラ。マンゴーのような香りが特徴的なのはフウ。桜餅に使われるオオシマザクラの葉は、塩漬けにするとクマリンという香り成分を生成するが、サクラ類の落ち葉は同様の香りを漂わせることが多い。いずれも落葉してから香りを発するので、落ち葉を手に取って匂いを嗅いでみよう。

6 きれいだけど、ふれないで

 美しく紅葉した葉にふれたり、落ち葉を持ち帰ったりすることも多いが、なかにはさわるとかぶれる植物もある。とくにウルシ科の植物は、ウルシオールと呼ばれる成分を含み、強いかゆみや炎症を引き起こす。ツタウルシ、ヤマウルシ、ハゼノキ、ヌルデなどは要注意。

紅葉したツタウルシ。木や岩によじ登るつる性植物。その美しさに惹かれて3枚セットの葉をちぎり、乳白色の樹液が皮膚に付くとひどくかぶれる。(写真/林 将之)

7 カエデとモミジは同じもの?

 モミジは日本の紅葉を代表する樹木だが、モミジといったりカエデといったり、使い分けを意識することはあまり多くない。モミジという名称は日本独特のもので、秋に葉が赤や黄に変わることを意味する動詞「もみず」に由来し、とくに目立って色を変えるカエデの仲間の一部を「もみじ」と呼ぶようになった。カエデはカエルの手に似ていることから付いたともいわれ、ムクロジ科カエデ属に属する樹木はすべてカエデと呼ばれる。植物学上の和名でモミジの名が付くのは、葉の切れ込みが深いイロハモミジ、オオモミジ、ヤマモミジの主に3種類である。

  • 葉の切れ込みが浅く、3~5裂するウリハダカエデ。ムクロジ科カエデ属。(写真/林 将之)

  • イロハモミジと並ぶモミジの代表種であるオオモミジで、葉は7~9裂し、切れ込みが深い。ムクロジ科カエデ属。(写真/林 将之)

監修

林 将之氏

はやしまさゆき 樹木図鑑作家・環境ジャーナリスト。1976年山口県生まれ・在住。葉をスキャナで撮影する方法を考案し、国内外の森を取材。自然や生態系の魅力と問題をわかりやすく発信。『新 紅葉ハンドブック』(文一総合出版)、『葉で見わける樹木』(小学館)など著書多数。

取材・文/土井ゆう子
●取材時期:2026年3月下旬

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