アート、サイエンス、テクノロジー、デザインを融合させたアート集団「チームラボ」が発信する東京・豊洲の「チームラボプラネッツ TOKYO DMM(以下チームラボプラネッツ)」。2025年1月には、面積を約1.5倍に拡張し、“運動”“発見”“共創”をテーマにした新エリア「Forest」が誕生。世界中から来場者が絶えないこの場所は、なぜ人々を惹きつけ続けるのか、その人気の理由を紐解く。
2026.02.05
デジタルが当たり前になった時代に問われる“本当に理解する”とは?
プログラマー、エンジニア、数学者、建築家、アーティストなど、多様な専門家が集まって2001年に創設されたアート集団「チームラボ」。彼らは、光や音、空間を駆使し、人と自然、人と人との境界を越えるような共創的な体験型アートを国内外で生み出してきた。作品を鑑賞するだけでなく、身体ごと没入し、他者との関わりや自然とのつながりを感じるインタラクティブな世界観は非常に独創的で、世界的に注目を集めている。
そんなチームラボが手掛けるミュージアムの一つ、東京・豊洲のチームラボプラネッツのコンセプトは、“身体ごと没入できるミュージアム”。靴を脱ぎ、裸足で水中を歩くという身体的体験が作品と呼応し、アートと一体になれることが特長だ。2024年には“単一アート・グループとして最も来館者数が多い美術館”としてギネス世界記録に認定。東京のホットスポットとなっている。
2025年1月、新エリア「Forest」がオープンし、ますます来場者を増やし続けるチームラボプラネッツ。いったいどんな進化を遂げたのだろうか。チームラボ・メンバーの工藤岳さんがForestのコンセプトについて語ってくれた。
「チームラボプラネッツでは、素足で作品を体験してもらい、より身体的に世界や作品と一体化することが基本的なコンセプトになっています。人とデジタルの関わり方は2通りあると考えていて、1つは、スマホやVRを通して人間側がデジタル側に行く、それが今は主流だと思われます。そしてもう1つは、空間自体をデジタル化すること。Forestの中に入っていただければわかると思いますが、僕たちは主流とは全然違う後者の形で、物理空間自体を拡張したいなと考え、創りました」
創業から20年以上が経つチームラボ。当時からのメンバーたちは年齢を重ね、工藤さんを含めた数人は子どもを持った。それぞれのライフスタイルに変化が起きたこともForestに反映されている。
「僕もスマートフォンをよく見ますし、今の時代はデジタルと関わらないという選択肢はなさそうですが、それによって身体性を失うことが恐いなと感じます。その“身体性を失う”とは、本来は身体を通して得られるはずの感覚や学習の機会が、いつの間にか画面の向こうに置き去りにされてしまうことを指します。幼い頃って、走ったり触れたりしながらいろいろな経験を積んでいくじゃないですか。でも、ある時期から机に向かって情報を得るようになり、身体性と切り離された状態で学ぶようになってしまう。その危機感もあって、身体を使う教育的プロジェクトをForestに加えました。教科書や図鑑で見た知識を身体と結びつけて、きちんと理解するという感じですね」
インターネットやAIが当たり前になった時代だからこそ、身体性を伴った実体験がより大切であることを工藤さんは語る。
「僕は登山が好きなんですけど、きれいな山の写真を見るだけで満足するかっていうと、そんなことはなくて。実際に時間をかけて山頂まで登り、また時間をかけて下りるという体験をして、初めて山を理解できるんじゃないかなと。本来、人間は世界との関係性をそういうふうに理解していたと思うんです。今はインターネットで簡単に情報が手に入り、何でも理解した気になったうえでコミュニケーションが始まりますよね。でも、それって『本当にわかったことになるのかな』と思います。僕自身は、身体性を伴って理解したものでしか、本当にわかったことにはならないと考えています」
「森」を意味するForest。その名前には、他者との関わりや自然とのつながりをテーマに掲げるチームラボの想いが込められている。
「僕が子どもの頃は、近くに森がたくさんあって、昆虫採集とかどんぐり拾いをしていました。つまり自然は平面的ではなく、立体的なものしかない。それをForestで表現したんです。自分で探索して、見つけて、集めて、共有して、ほかの誰かとも一緒に何かを作る。これからは1人じゃなくて“みんなで作ること”がデジタルに必要になると思うので、集団で学べる仕掛けを用意しました。もちろん、大人も楽しめる内容になっています」
3つのテーマで構成されるForestで“身体的アート体験”を
工藤さんのお話をふまえて、実際にForestの世界を体験。まずは、身体を使って世界を立体的に捉える「運動の森」から。跳ねる、滑る、渡る、登るといった動作を通して、その動きが空間に影響を与えることを体感。子どもから大人まで、夢中になって身体を動かしながら、感覚を解き放ち、世界を新たな視点で感じられる。
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球体が床一面に敷き詰められた「あおむしハウスの高速回転跳ね球」では、球体を踏むたびに色や音が変化。足元の不安定さが感覚を研ぎ澄ませる。
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「あおむしハウスの高速回転跳ね球」で生まれた“あおむし”が床と壁を伝って移動し、羽化して蝶になる「あおむしハウスの群蝶」。人が蝶に触ると散る仕掛けが楽しい。
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人が“太陽の光”となって斜面を滑ることで、植物にエネルギーが伝わり、芽が出て花が咲き、果実が実る「すべって育てる!フルーツ畑」。
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宇宙空間を模した「マルチジャンピング宇宙」では、トランポリンの道を跳ねて進みながら星を生み出すことができる。(12歳以下の方のみ体験可能)
続いてのスペースは、共創を楽しむ「学ぶ!未来の遊園地」。ここでは、身体を使って考えたり、感じたりすることで、空間や他者とのつながりを自然に学ぶことができる。正解のない世界で、自分の発想を信じて動くことが、未来を生きる力につながっていく。子どもも大人も感性が刺激され、思考の枠を広げるきっかけになる場所だ。
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飛行機、イルカ、鷹、蝶のなかからフォーマットを1つ選び、自分の好きなデザインを描く「スケッチ環世界」。
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自分で描いた絵が巨大スクリーンに飛び立つ。スマートフォンでアプリを起動し、それぞれの視点で操縦することもできる。
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スケッチ環世界などで描いた絵は、館内にある「スケッチファクトリー」で缶バッジやTシャツなどのグッズにして持ち帰ることができる。
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テーブルの上に手や物を置くことで、可愛らしいこびとが反応し、飛び乗ってくる「こびとが住まうテーブル」。
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「こびとが住まう宇宙の窓」では、専用の光のペンで壁に絵を描くと、こびとたちが反応して動き出す。遊びながら音と動きの関係を体感できる。
Forestエリアの締めくくりは、「つかまえて集める森」。メインとなる「つかまえて集める絶滅の森」は、探索して、発見して、専用アプリで動物を捕まえる。さらに、観察して解き放つという一連の身体的体験を通じて、自発的な学びを促す。
捕まえた動物の情報が見られるコレクション図鑑は、同じ動物でも、捕まえれば捕まえるほど、より詳しい情報が書き込まれていくため、訪れるたびに新しい発見があるのも魅力。自らの興味によって学びを深めていくという、これからの時代に求められる学びの形を体現した作品だ。
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森に住む絶滅動物は多種多様。近づいたり触ったりすると、逃げたり振り向いたりするので、飽きずに追い続けることができる。
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壁や床に現れる絶滅動物たちを見つけたら、スマートフォンの専用アプリを使い、「観察の目」を放って捕獲する。
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周囲の人と協力して「観察のあみ」に絶滅動物を追い込んで捕まえることもできる。他者との関わりが自然に生まれる仕掛けがおもしろい。
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捕まえた絶滅動物はスマートフォンのアプリに入り「自分だけの図鑑」としてコレクション。選択をすると、動物の詳細情報を知ることができる。
訪れるたびに新たな発見がある「Water」エリア&「Garden」エリア
Forestエリアに加えて、“身体ごと没入するアート”を象徴する「Water」エリアにも注目したい。
ここでは、来場者が靴と靴下を脱ぐところから体験が始まり、裸足で水の中へ足を踏み入れることで、日常から非日常へと感覚が切り替わる。水という流動的な物体がさまざまに解釈された作品のなかで、来場者が作品の一部として空間に影響を与える存在なのが印象的だ。さらに床の感触や水温を肌で感じることで、作品との一体感も楽しめる。
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Waterエリアの冒頭に現れる「坂の上にある光の滝」は、日常から非日常へと感覚を切り替える“通過儀礼”のような役割を果たす。坂の上には、流れ落ちる滝に光をあてた幻想的な空間が。
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水面に映し出された鯉が、歩く人の動きに反応して泳ぎ方を変える「人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング」。膝下ほどの深さの水に入って体験する。
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無数の光が空中に浮遊し、触れると弾けて空間に広がる作品「生命は結晶化した儚い光」。
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無数の光の点によって構成された、全方位に広がるインタラクティブな宇宙空間「The Infinite Crystal Universe(無限のクリスタル宇宙)」。点描画のような光の作品は刻々と変化し続ける。
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「The Infinite Crystal Universe」では、スマートフォンを使って自ら選んだエレメントを空間に投げ込むことができる。そのエレメントは立体的な“光の彫刻”として現れる。
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無数の大きな球体が空間を満たし、触れると色と音が変化する「変容する空間、広がる立体的存在 - 平面化する3色と曖昧な9色」。
花と人間が一体化する、体験型の庭園空間「Garden」エリアでは、自分自身が幻想的な景色の一部となるような没入感を味わえる。訪れる時間帯や季節によっても印象は異なり、日中と日が落ちた後ではそれぞれ違った表情に。見る、歩く、感じるというシンプルな行動によって、自然との関係を身体で感じ直すことができる。
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天井から吊るされた1万3,000株以上の蘭の花が上下に動く「Floating Flower Garden:花と我と同根、庭と我と一体」。鏡張りの床に花々が映り込むことで、幻想的な世界へと変容する。
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苔庭に並ぶ卵形のオブジェが、風や人の動きに反応して光と音を放つ「呼応する小宇宙の苔庭 - 固形化された光の色, Dusk to Dawn」。
すべての鑑賞を終え、館内を出たところにある「Open-Air」エリアのレストラン「Vegan Ramen UZU」。ここは京都発のヴィーガンラーメン専門店で、「チームラボプラネッツ」の来場者のみが入店できる。アートの世界から現実に戻るその境目に、あたたかな一杯がそっと寄り添う。
エリア拡大でますます魅力が増し、訪れるたびに新しい発見があるアート空間、チームラボプラネッツ。感性と知性を刺激する非日常のアート空間は、今日も訪れる人に新しい発見と深い感動を届けている。
チームラボプラネッツ TOKYO DMM
東京都江東区豊洲6-1-16 teamLab Planets TOKYO
8:30AM-10:00PM
※最終入館は閉館の1時間前
※入場時に30〜60分ほど待ち時間が発生する場合があります。
〈チケット価格〉
大人(18歳以上):3,800円~
中学生・高校生:2,800円
子ども(4歳〜12歳) :1,500円
3歳以下:無料
障がい者割引:1,900円~
取材・文/依知川亜希子 写真/広川智基 編集/都恋堂(栗林拓司)
●取材時期:2025年10月下旬
※掲載内容は時期や天候、施設の諸事情により変更となる場合があります。