「サステナブル」という言葉が日本に定着して久しい。しかし、それを「環境のための我慢」や「機能の制限」と捉えているとしたら、少しもったいないのかもしれない。本当に上質なサステナブルとは、むしろ私たちの知的好奇心を刺激し、五感を解放してくれる、極めてぜいたくな体験のはずだから。今回は、世界4,000軒以上のラグジュアリーホテルが即時予約できる会員制高級ホテル予約サービス「JCB Premium Stay Powered by HoteLux」でも特別な体験を提供している「ホテルインディゴ箱根強羅」でサステナブルの真髄に触れた。
2026.08.05
部屋の壁に隠された、ネイバーフッドな遊び心
都心から車で約2時間。箱根・強羅エリアを流れる早川のせせらぎに包まれた「ホテルインディゴ箱根強羅」は、新しい旅の価値を教えてくれる場所だ。
世界中で展開するこのホテルが掲げるのは、「ネイバーフッド(地域への没入)」というコンセプト。環境に配慮した設備やサービスだけでなく、その土地の歴史や文化、人々の営みそのものを旅の主役に据えている。一歩足を踏み入れた瞬間から、箱根強羅の物語の一部に入り込むような、心地いい滞在が待っている。
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川のほとりに佇む、洗練された外観。箱根強羅の静かな街並みや、周囲の豊かな自然と美しく調和している。
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コンセプトである「自分に戻る安らぎの隠れ家」を体現するため、エントランスはあえて主張を抑えた奥ゆかしい佇まいに。風情ある人力車は、ゲストに人気のフォトスポットになっている。
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ゲストを温かく迎えるレセプション。グローバルな視点とローカルへの深い愛着を持つスタッフらとの何気ない会話も、地域への没入のプロローグだ。
案内された客室のドアを開けると、壁一面に広がる風景アートに目を奪われる。圧倒的な存在感を放つその仕掛けについて、同ホテルのマーケティングコミュニケーションマネージャーの高橋厚子さんが教えてくれた。
「これは絵ではなく写真なんです。強羅駅のすぐ近くで何十年も箱根の姿を記録し続けてきた老舗写真スタジオ『スタジオカフェ・シマ』さんの貴重なアーカイブをお借りして、壁紙にさせていただきました」
実は、この写真には少しだけ遊び心が加えられている。よく見れば、古き良き箱根の街に、江戸時代の旅人の姿が紛れ込んでいる。その上空には、現代のドローンが悠々と飛んでいたりもする。
部屋を見渡せば、ティッシュボックスやゴミ箱にも、この地に伝わる伝統工芸「寄木細工」や「組子細工」のデザインがさりげなく取り入れられている。地域の歴史をそのまま再現するのではなく、現代の洗練されたデザインへと馴染ませるセンスが心地いい。
高級感やスペックの高さを見せつけるのではなく、こうした細やかな大人の仕掛けに触れるうち、日常で強張った心が静かにほぐされていく。
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寒色を差し色にした、落ち着いたムードが漂うリバーサイドの客室。モダンなインテリアの中に、箱根の郷土文化が溶け込んでいる。
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伝統工芸「寄木細工」の意匠を取り入れたティッシュボックス。何気ない小物にも、地域の美意識を感じる。
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大きな窓が圧倒的な開放感をもたらす空間。全客室にプライベートの露天風呂付。すぐそばにはシャワールームも配されている。
食事を通じて、五感で体験する箱根のストーリー
夕方、メインレストランで待っているのは、本物の薪を使ったグリル料理だ。カウンターの向こうでパチパチと薪が爆ぜ、炎が揺らめき、肉や野菜がじっくりと焼き上がっていく。それらすべてが、ひとつのエンターテインメントとして五感を満たしてくれる。そして、このワクワクする時間には、もうひとつ素敵な背景が隠されている。
「ここで使っている薪は、地元や近県などの間伐材を活用しています。山を守るためには、適度に木を間引いて光を入れてあげなければなりません。その間引いた木を私たちはエネルギーとして大切に活用させていただいています」
箱根の豊かな森を守ることが、ディナーを愉しむことにつながっている。そう知ると、目の前の一皿がさらに愛おしく感じられるようだ。食材も、神奈川はもちろん、静岡といった近隣の海や山から届く新鮮なものばかり。シェフの感性が光る料理にも、新しい驚きがあると高橋さんは語る。
「春のメニューでは『ウド』を取り入れた際、お肉の横にウドを添えた一皿を撮影したんです。そうしたらシェフが『ピントはお肉じゃなくていい、ウドに合わせてほしい。これが主役だから』と譲らなくて(笑)」
海外ゲストからも、初めて出合う日本の食材に対する驚きと喜びの声が寄せられる。「これは何?」と聞かれたスタッフが、その背景にあるストーリーを丁寧に伝える。ここにしかない食の物語によって、空間にじんわりと温もりが広がっていく。
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客席からダイレクトに見えるオープンキッチンで、薪を用いたグリル料理が調理される。
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食材にウドを取り入れ、2026年3〜5月に提供したメニュー。五感で愉しむプロローグを経て、目の前に届けられる美しい一皿。
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2026年6〜8月のディナーコース例。この土地の豊かな自然が育んだ旬の恵みを、シェフの独創的なエッセンスを加え、ぜいたくに味わう。
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レストランの天井にも組子細工などがあしらわれている。奥に佇むステンドグラス風の浮世絵アートが、空間に鮮やかなインパクトを与えている。
文化や国境を越えて、心を開くボーダレスな温泉体験
お腹が満たされたら次に向かうのは、やはり温泉だ。このホテルには、ユニークな温泉体験が用意されている。ひとつは、1階にある「サーマルスプリング」。ここは男女共用で、水着を着用して入ることができる。
「海外の方にとっては、人前で裸になる温泉文化に少し抵抗がある場合もあります。誰もが気兼ねなく、日本の素晴らしい温泉を共有できるように、という配慮からこの空間が生まれました」
透明でにおいも少ない宮城野温泉の湯につかりながら、国内外のゲストが同じ空間でリラックスする。その開かれた雰囲気も、どこか新鮮で心地いい。
もうひとつ、全客室に備え付けられたプライベート風呂も外せない。ここで高橋さんが、通な入り方を教えてくれた。
「お湯が80度と非常に熱いので、通常はお水を足して温度を下げます。ただ、そうすると、温泉成分が薄まってしまうんです。おすすめは、まず温泉を張ってから、お食事などで2時間ほど過ごしていただくこと。そうすれば、成分を薄めることなく、自然に冷めたちょうどいい温泉を愉しんでいただけるんです」
すぐ下を流れる川のせせらぎや鳥の声に耳を澄ませながら、温泉に身を委ねる。フロントでもらえる檜の角材をお湯に浮かべれば、極上のアロマが広がる。静かに流れる時間が、日頃のノイズから身も心も解きほぐしてくれる。
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開放感あふれる男女共用のサーマルスプリング。サウナや寝転べるスペース、休憩エリアも備え、思い思いのスタイルでリフレッシュできる。
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深めの水深が新鮮な歩行湯。ただつかるだけではない、温泉の概念をいい意味で裏切るアクティブな仕掛け。
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脱衣所の天井を彩る、様々な「ゆ」の文字。昔ながらの銭湯のロゴからインスパイアされた、遊び心あふれるデザイン。
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早川の水音が心地よく響く、プライベートな露天風呂。眼前に広がる箱根の自然を眺めながら、誰にも邪魔されず悠々とした時間を満喫できる。
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温泉に入れて愉しむ檜の角材。あえて成形せず自然な質感が残るようにカットされている。ありのままの風合いに触れることで、箱根の森の営みがダイレクトに伝わってくる。
観光ではなく「没入」。100年の伝統の汗を共有する
ホテルインディゴ箱根強羅の滞在をより豊かにしてくれるのが、「ネイバーフッドホスト」と呼ばれるスタッフたちの存在だ。彼らの多くが近隣に住み、地域のストーリーを自らの言葉で語ることができる。中には箱根が好きすぎるあまり、自ら「箱根のガイド資格」を取得したスタッフまでいるという。
さらに驚かされるのは、ホテルという企業の枠を超えた、地域活動へのまっすぐなコミットメントだ。強羅で100年以上続く夏の伝統行事「大文字焼」。8月16日の本番に向けて、山肌の「大」の字をきれいに維持するためには、夏の盛りに過酷な草刈りをしなければならない。
「人手が必要な作業なので、観光協会の一員として、私たちも毎年お手伝いに参加しているんです。若いスタッフはもちろん、昨年就任したゼネラルマネージャーも自ら山へ登ります。地元の方々と一緒に汗を流し、地域を守る一員になる。下から眺める大文字焼の美しさは、そうした人々の手によってつながれているんですよね」
地域とのつながりはそれだけにとどまらない。国指定重要無形民俗文化財である「箱根の湯立獅子舞」との連携や、地域の養護施設の子どもたちを定期的に招待して誕生日を祝うなど、地道な取り組みを続けている。地域を愛し、深く入り込む。だからこそ、スタッフの案内にはどこか温かみが宿っているのだろう。
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川の向こう側にそびえる山肌を見上げれば、草刈り前の「大」の文字がうっすらと。夏の伝統行事「大文字焼」の舞台は、ホテルのすぐ目の前にある。
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ホテル内の庭にそっと設置された、小さな鳥の巣箱。地域の人々だけでなく、箱根の森に生きる動物や鳥たちとも心地よく共生する姿がここに象徴されている。
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館内では、箱根の伝統工芸である寄木細工のブランド「るちゑ」の作品を販売。繊細な手仕事に、国内外のゲストからお土産として高い人気を集めている。
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正月に地域の演者が訪れて披露される伝統の獅子舞は、国内外のゲストを魅了。地域の人々にとっても、自らの文化を発信して絆を深める大切な場となっている。
サステナブルとは、想いを絶やさずに継承していくこと
部屋に置かれた必要最小限のアメニティ、プラスチックを減らすために用意された瓶のミネラルウォーター、そして地元のクラフトビール。そのような取り組みも素晴らしいが、このホテルが教えてくれるサステナブルの本質は、もっと人間味にあふれた部分にフォーカスしている。
「サステナブルとは、一言でいえば『地域の関わり』であり、『想いを継承していくこと』だと思います。私たちはグローバルチェーンのホテルですから、当然、人も変わります。ですが、たとえ体制が変わっても、『この地域の守らなきゃいけないものは、みんなで一緒に守っていこう』という想いをつないでいくこと。それこそが、私たちの使命です」
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小さな桶の中に端正に収められた、必要最小限のアメニティ。普段は使い捨てにされがちなヘアゴムひとつも、思わず持ち帰りたくなるようなデザイン。
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箱根の麓、足柄平野の地下から汲み上げた清らかなミネラルウォーター。環境に配慮したリターナブル瓶の涼しげな佇まいが演出する、優しくも上質なひととき。
無駄を削ぎ落とした都市の生活は快適だ。しかし、ときにはその快適さから一歩外へ出て、どこか違う地域のストーリーに身を置いてみる。間伐材の炎に癒され、檜の香りの温泉につかり、100年の伝統に想いを馳せる。
心がしっかりと解き放たれたとき、私たちはきっと気づくはずだ。サステナブルを選ぶということは、何かを我慢することではない。自分の旅や日常を、より豊かで愛おしいものにするための、優しくて素敵な選択なのだ。
JCB Premium Stay Powered by HoteLuxでさらに特別な体験を

世界4,000軒以上のラグジュアリーホテルを、VIP特典付きで予約できる会員制プログラム「JCB Premium Stay Powered by HoteLux」。ホテルインディゴ箱根強羅では、滞在期間に2名様まで朝食無料(大人4,900円、子ども2,300円 ※サービス料別)や、お部屋のアップグレード、アーリーチェックインやレイトチェックアウトの優先案内、100米ドル相当の館内利用券などが用意されています。
取材・文/薮田朋子 写真/野口岳彦 編集/都恋堂(山口美智子)
●取材時期:2026年5月中旬 ※価格は消費税込
※価格など掲載内容は時期や施設、店舗の諸事情により変更となる場合があります。
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